平野啓一郎『ある男』読んだ

昨日のサウジアラビアのアルゼンチンに対する戦い素晴らしかったね。勇気を持ってディフェンスライン上げて、裏を狙ってくるアルゼンチンには体を張って対抗した。結果、大金星をあげることになり、アルゼンチン一強と思われたこの組も俄然おもしろくなってきた。

こうも目を離せない試合が目白押しだと読書のペースも落ちざるをえない。

というわけでこないだ読んだ本の感想でも。

平野啓一郎氏は大学生のときに『日蝕』で芥川賞を受賞され、たまたま私も同じ大学で学生をしていたので、読んでみたのだがなにが面白いのかよくわからず悲しかった。

そういう事情もあり、また氏のSNSにおける政治的発言にはついていけないところがあったため、読むことはなかった。また私自身がフィクションを避けるようになったのもある。

2018年発表の『ある男』は映画化されたて話題となり、私も今年になってフィクションを積極的に読むようになったこともあって、手にとってみたのである。

とある女性の夫が亡くなり、ほぼ絶縁状態の親族がお焼香をあげにきたところ、赤の他人であることが判明した。主人公の弁護士は身元調査、法的処理を依頼されるのだが、、、というストーリー。

謎解きの部分も面白いのだが、愛する人の過去が偽物だとわかってなお愛することができるのかなどということで主人公があれこれ考えるのがいい。誰かが自分の過去について語るとき、それが嘘か真かは究極的には他者には判断できない。自分でも歴史修正しちゃっててわからなくなってることもあるだろう。

主人公は著者と同い年なので、私とも歳が近く感情移入しやすかった。徐々に性欲が減退していく年齢でもあり、それについて煩悶するのが興味深いのであるが、チン騎士くさいのが玉に瑕。

また著者の政治的スタンスがかなり前面にでているのは蛇足感がある。しかし登場人物の一人がマイケル・シェンカーを崇拝しているという、著者の好み丸出しの設定には好感がもてるので良いことにしよう。

それと生体肝移植にまつわる妙に生々しいエピソードも、あの時代にあの大学にいた者としては感慨深かった。

というわけでこりゃ映画化したくなるよなあと感じるくらいには面白かったのである。ワールドカップ終わったら『マチネの終わりに』も読んでみようかな。

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