植田文也『エコロジカル・アプローチ「教える」と「学ぶ」の価値観が劇的に変わる新しい運動学習の理論と実践』読んだ
Footballistaなどの意識高い系のサッカー雑誌にエコロジカルアプローチという言葉がよく登場するが、SDG的なものとは関係ない。
周囲の環境とのインタラクションから選手が自発的にスキルを習得するのがエコロジカルアプローチである。
本書は、Footballistaによく寄稿している植田文也氏による解説である。
エコロジカルアプローチから導き出されるトレーニング方法として制約主導トレーニングがある。
自発的にスキルを身につけるのになんで制約なの?ってなるが、練習環境の制約を操作することで、試合で実際に役立つスキルへと選手を誘導するためである。
エコロジカルアプローチの反対なのが、動作を要素に分解して反復練習させるやり方である。一見合理的だがそうではない。スポーツというか、現実環境は複雑すぎて要素に分解しても、完全に再現することは不可能だからである。
例えばバスケットボールのフリースローなど毎回同じなのだから、トッププレイヤーは毎回完璧に同じ動作をしていると思ったら、全くそんなことはなくて、かなりバラツキがあるらしい。毎回同じに見えても常に微妙に状況は違っているから、多大なるファインチューニングが必要なのである。
であればバスケットボールのインプレーの複雑さたるや、、、という話だ。
言語化が大事だと様々な分野で言われるが、全てを言語化することは不可能であり、言葉でなにもかも教えようとすると弊害が大きくなる。
だから環境を操作して自発的に習得することを促すのである。ここでも知覚は運動に影響し、運動は知覚に影響するといういつもの話になるのが面白い。
制約の操作の具体例は本書でたくさんあげられている。例えばテニスでフォアハンドばかり使う選手にバックハンドを習得させるのには、センターラインの位置をずらすのが有効らしい。
こういう考え方はお勉強などにも応用できそうだなあと思ったのであった。