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スーザン・ピンカー「なぜ女は昇進を拒むのか――進化心理学が解く性差のパラドクス」読書メモ

著者はカナダの著名な心理学者スティーブン・ピンカーの実の妹であり、自身も高名な心理学者である。内容はおおむねタイトルのとおりである。

男は発達障害が多い、無茶な行動をしがち、女性はワーク・ライフ・バランスを重視し、競争よりも人との関わりを好むなどなどまあ知ってたということがえんえんと書いてある。しかしこの本が出たのは10年以上前のことで、さらにもとになるデータはそのもっと前で、大昔からわかってることでいまだに大騒ぎしている昨今のSNSってなんなんだろうねと言わざるを得ない。

しかし男が書いたら怒られそうな内容であり、実際これと似たようなことを言ったGoogleのエンジニアがクビになるという事件が2年前にあった。

著者はキャリアを諦めた複数の女性にインタビューしている。申し分ない実績のある女性たちが昇進よりも家庭であったり、より人と寄り添う仕事を選ぶのだが、興味深いことに彼女らのほとんどが女性差別などなかったというのだ。私も働いていて女性が差別されるという場面はほぼ見たことがない。余裕のない職場だと性別よりも実力が重視されるからだ。そのへんの事情は業界によって全く違うのか、あるいは実力が低いから評価が高くないのを女性だから差別されていると勘違いしているのかはわからない。

もうひとつ面白かったのはインポスター症候群のことだ。これは自分を詐欺師のように感じてしまうこと心理的傾向のことで、成功した女性がしばしば「自分は本当はたいしたことはない、みんなを騙している」と感じているという。この恐怖心のようなものが悪い方向に作用すれば昇進から身を引いてしまうし、良い方向に働けば十分な準備をしてからことを構えることになろう。優秀なキャリアウーマンに後者のタイプが多いように感じられる。

なんだかんだ言って本当にキャリアを追求したいのは女性の20%くらいだろうというイギリスの女性社会学者のインタビューも面白かった。どんな人かと調べてみたらエロティック・キャピタルの著者だった。。。なるほど身も蓋もないことを書く女性はこういう人なのねと思ったのである。

まとめると、某界隈のみなさんには常識的なことばかりだが、どこまでデータの裏付けがあるか確認するために読むのは大変よいと思われるのであった。

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はむっち@ケンブリッジ英検
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