知ってるつもり、でした……
まずは(たぶん)簡単な問題を考えてみよう。
私の下着が青なら、靴下は間違いなく緑である。
いま、私の靴下は緑である。
ゆえに、私の下着は青である。
これは正しいだろうか。あるいは間違っているだろうか。間違いだとしたら、どこがおかしいと説明できるだろうか。
この問題の下着や靴下の色を、シャワーと下水道に置き換えてみよう。
下水道に落ちたら、シャワーを浴びる必要がある。
いま、私はシャワーを浴びた。
ゆえに、私は下水道に落ちた。
こうすると、明らかにおかしいと気づくはずだ。
面白い問題をあと3つ(正解は最後に書いておく)。
1.ジュースとアメで合計110円。ジュースはアメより100円高い。アメはいくらだろうか?
2.湖にスイレンの葉が並んでいる。成長の早いスイレンで、その面積は毎日2倍になる。48日で湖全体がスイレンの葉で覆われるとすると、湖の半分が覆われるのは何日目か。
3.5台の機械を5分間動かすと、製品が5つできる。では、100台の機械で100個の製品を作るのには何分かかるか。
1の答えは10円、ではない。
2の答えは24日、ではない。
3の答えは100分、ではない。
本書は無知と錯覚に焦点をあてた素晴らしいノンフィクションで、上記のような面白いクイズや、公衆衛生、政治、経済といった分野を題材にして分かりやすく解説してある。
面白いのは、無知や錯覚の短所だけでなく、長所(そう、長所もあるのだ!)についても語られているところ。たとえば、無知や錯覚は誤った選択の原因になるが、大胆な決断を後押しもしてくれる、という具合に。
とても分かりやすくて読みやすい本である、と思うが、実はこれもまた「私が分かりやすくて読みやすいと感じる本は、みんなも読みやすいはずだ」という錯覚かもしれない。その錯覚のおかげで、こうして大胆に強くお勧めできるわけだ!!(いやいや、実際にかなり分かりやすいのだが)。
さて、3つの問題の正解。
1は5円(計算してみよう)。
2は湖の半分が覆われるのは47日。これが翌日には倍になって全体が覆われる。
3は5分。1台の機械が5分で1つ製品を作る。100台の機械が5分動けば、100個の製品を作れる。