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「伝わる」をあきらめない! 〜コミック『カメレオンはてのひらに恋をする』
オタクと腐女子の聖地・池袋に凛とそびえる「アニメイト本店」
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今年3月にリニューアルオープンしてからは、ますますたくさんの人、人、人、、。日本の文化・アニメを目当てに集まる外国人観光客の姿も。目の前の中池袋公園は戦利品を手に語り合う人たちの憩いの場になってます。
旧店舗時代から末っ子に付き合って行ってましたこの場所に、最近は、娘のお供なのか、娘が私のガイドとしてなのか、分からん頻度で出かけているのですが、新刊コミックに「アニメイト限定」の小冊子が付く時は、それをゲットするために近所の本屋ではなく必ずアニメイトへ!
今回の狙いは『カメレオンはてのひらに恋をする』(以下『カメ恋』)
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新刊平積みからしっかり見つけ出してゲット!
この作品、たまたま広告で流れてきて知ったのですが、先天性難聴の大学生と売れない大学生俳優のBLコミック。
「聞こえない」「BL」というと、先日、『ひだまりが聴こえる』シリーズを大人買いし、読んだところですが、絵の雰囲気も、そして登場人物のタイプも全く違います。(当たり前ですが)
この『カメ恋』は、日本手話話者であるケイトと役者である聞こえる藤永(フジナガ)のお話なので、元々それぞれの言語が違うがゆえ、コミニュケーション(やりとり)がとても丁寧になり、それによって「伝える」ということにとてもウエイトを置いて描かれているように思えました。
難聴ゆえに言葉をうまく「伝えられない」「伝えてもらえない」ケイト。
役者として、自分の思いを演技を通して伝えたいのに、それが空回りするかのように「伝わらない」フジナガ。
それでも「伝えること」を諦められない2人が引き寄せられるのは当たり前なのかもしれません。
ケイト「フジナガの伝えたい気持ちが伝わった。「伝える」才能あると思う。伝えたい気持ち、伝わる幸せ、知ってる」
フジナガ「俺が、何年も聴きたかった言葉を、出会ったばかりのお前から目で聴く日がくるなんて」
フジナガはケイトとの出会いで「情景や状態を体で表現する」ことで「伝わる」ことの嬉しさを改めて感じたのだと思います。
生まれてからずっと
違う景色見てきた俺たちが
伝え合うことで
新しい景色が見えたりすることだってある
出会えてよかった。
そしてケイト。
ケイト「俺が何度聞き返しても、藤永は絶対に「伝わる」まで話してくれる。それが嬉しい。だって俺は今まで諦められてきたから。こんなに”目”で聴こえたの初めて。」
私はこの言葉にグッときてしまいました。
だって、私もそうだから。
聞き取れなくて、唇読み取れなくて、「なんて言ったの?」と聞き返すと「もういいや」「大したことじゃないから」と言われてしまう。
確かに大したことじゃないのかもしれないけど、でも聞こえていれば聞いていた言葉なのだから、やはり知りたいと思ってしまう。
でも大したことないことを改めて聞き返されるのって、話す側からすれば面倒だったり、気まずかったりするのでしょう。
だから私たちはつい分かったふりをしたり、気にしてないふりをしてしまうのです。
でも、、寂しいのよね。なんだか置いていかれた感じで。
たぶんケイトは発話も少し難しいのだと思うから、自分の言いたいことを伝える時にも、相手に諦められてしまうことがあるのだと思う。
だからこそ、コミニュケーションを諦めないフジナガが嬉しかったんだと思うのです。
普通に(という言い方はあまり好きでないですが)話し、普通にそれを聞いて、普通に声で返す。
そういうことが当たり前の、前提になってる中で、言葉がうまく出せない、正しい発音ができない、あるいはそれらを聞くことができない、理解しづらい、という「伝わりにくさ」をどう伝えるか。
このコミックでもある工夫がされています。
それは、活字を傾けたりして、読みづらくしていること。
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分かりますかね?
スルッと読めず、「?」と目をつっかえさせる感じを意図しているのだと思います。
初めて、『ゆびさきと恋々』でも見た時は「誤植?」って思ったのですが、『恋々』では、難聴のヒロインの聞き取り(読み取り)の不確かな部分で活字を傾けたり、文字を薄くしたりして表現してました。
だから、この『カメレオン』でも、ケイトの発話の不明瞭な感じとかを活字を傾けて、わざと「読みづらく」してるだと。
読んでる人にもそんな「滞り」を体験させる、、、これって「!」って感じですね。
それと、私は紙版でしか、読んでないのですが、第2話と第3話の扉裏に、ちょっとしたコラムがフジナガとケイトの会話調で載ってるのも良き良き。
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この作品では「日本手話」とか「CL」とか、これまでの聞こえない人が出てくるコミックでもあまり深く描かれていなかったことまで描いているのも大きな特徴。
なんも知らんフジナガにケイトがいろいろ説明することで、読んでる人にも知ってもらえるし、そういう意味でも今までの「聞こえない人が主人公」のマンガとちょっと違うかもしれません。
これからもきっと「日本手話」「ろう文化」が描かれると思うので、私も世界が広がりそうで楽しみです。
最後に、、
これはれっきとしたBLでもあり、ジャンルとしては「大型ワンコ攻めxほだされ年上黒髪受け」。
BLの奥深さを感じつつ、第1巻最後のフジナガのモノローグがさらに深い!!
この照れくさいやりとりを見た通りすがりの人たちが
当たり前に冷やかしたり
祝福してくれる世の中になったら
君は喜んでくれる?
男と男
手話でのやりとり
今はまだ「異質」に見えて、通りすがりの人は「見て見ぬふり」をするかもしれない。
でも、それも当たり前に受け入れられる世の中になったら、、、。
そういうことだよね。
多様性への理解啓発とか、またSNSの広がりなどで、今まで「異質」と思われ、まるでいないかのようにされていた存在が、実は「身近に」「普通」に存在していることが少しずつ知れてきているように思えます。障害者しかり、LGBTQしかり。
でもまだまだそこに向けられる視線は冷たかったり厳しかったり。
「いろいろな人がいる」という当たり前のことが、当たり前に考えられる時代がいつか来る!
そこに向けて、こういうコミックやドラマや映画なども一つの役割を果たすんじゃないかなーと思うのです。
ということで、また近いうちに、アニメイト行ってきます!
私の「オタ活」「推し活」も多様性理解への寄与だ!ってことで(笑)
本棚、漫画とBlu-rayでいっぱい!
整理しないと、もう入りきらないなぁ。
作品名:カメレオンはてのひらに恋をする。
著者:厘てく
媒体:漫画(コミック)
出版社:スクウェア・エニックス
レーベル:ガンガン BLiss
電子発売日:2023/01/01~
作者インタビュー:https://www.chil-chil.net/compNewsDetail/k/801authors108/no/35279/
読んでいただき、ありがとうございます。
観ること、読むことが大好きで、それを語ることも大好きな私です。
ぜひまたお越しください!
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