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出会えて良かった、きっと何度も読み返す 辻村深月『かがみの孤城』

 私は読書が好きだ。かといって、1ヶ月に何十冊も本を読むとか、有名な作品は全て読んでいるとか、ではない。そんな私だが、20数年生きてきて、何度も読み返すだろうと思う本は何冊かある。

 本屋大賞を受賞した辻村深月さんの『かがみの孤城』を、つい最近読んだ。読んでいる途中で、この本は、その何冊かに入る本だと直感した。

久しぶりに素晴らしい読書体験ができた。

 『かがみの孤城』は、私にとって、まれにみる面白い本だということを最初に述べておきたい。また、内容にも触れていくと思うので、まだ読んだことのない方は注意してほしい。

簡単なあらすじとしては、何らかの理由で学校に行けていない子どもたちが、鏡の中の世界で交流を深めながら、成長していくお話である。

 主人公のこころは中学生で、同級生から恋愛に関係したいじめを受けて、不登校になる。こころの心情がとても丁寧に描写されていて、自分の中学生時代を思い出した。確かに中学生の頃、恋愛は話題の中心で、誰と誰が付き合った、別れた、と噂になっていたものだ。余談だが、かくいう私にも3年間、片思いの相手がいたが、結局何もせず、終わってしまった。

いじめは、された側は覚えていても、した側は覚えていないという話はよくある。こころがとある事情で学校に行ったとき、いじめの主犯格の子が謝罪の手紙を送る。その自己中心的な内容にこころは唖然とするが、本当にそんなものだと思う。

 子どもの頃の記憶で、はっきりと思い出すことのできるシーンがいくつかある。嬉しかったことよりも、辛かったことの方が、なぜか鮮明である。幼少期に悪夢のような出来事があった。小学校に上がる前だろうか。同級生数人に無理矢理、お医者さんごっこと称して葉っぱを食べさせられたことがある。あのときの恐怖と葉っぱの固さ、青臭さを今でも思いだすことができる。相手はそのことを覚えているだろうか。そこから、その同級生のことは徹底的に避けて過ごしていたこともあり、常態化するということはなかったが。

 そういう事情もあり、私は7人の子どもたちの中で、主人公のこころに一番共感することができた。しかし、他の6人の子どもたちもそれぞれに問題を抱えていて、それぞれに魅力的である。7人が集められた背景や、7人の正体など、謎解きの要素もある。ミステリーとファンタジーと少年少女の成長物語とてんこ盛りでありながらも、すごくまとまりのあるストーリーである。

 特にクライマックスは手に汗握る展開で、頭の中で映像が浮かび、世界観に没入した。確かに、ストーリーとしては予想のつくところもあるのだが、それ以上に、心理描写と子どもたちの成長が胸を打つのだ。

こんなにも面白い本を、なぜ、放置していたのか。読み終えたとき、もっと早く手に取っていればと思った。でも、出会えて良かった。

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