震災から13年──読書、知ること、考えること
『日米地位協定入門』前泊博盛他著、『戦後史の正体』孫崎享著(いずれも創元社)を再読した。
講和条約がアメなら日米安保と地位協定はムチだろう。
戦後、地位協定を結んだ国は、ドイツ、イタリア、韓国、イラク戦争後のイラクなどあるが、日本以外は、主権国家として、自国の憲法や法のもとに、協定があり、改定してきた。
しかしながら、日本だけが、 日米安保、日米地位協定>日本国憲法という図式があり、日本がいまだに植民地であることを知らないのは日本人だけかもしれない。
『日米地位協定入門』前泊博盛編/著によれば、主権国家どうしが結んだ条約というよりも、太平洋戦争の勝利により生じた米軍の巨大な権益についての取り決めでしかない。
米国が最も重視した二点
①日本の全土基地化
②在日米軍基地の自由使用
東京上空の航空機の優先度は米軍ヘリの方が自衛隊より高く、普天間のヘリ墜落事故のコピーのような福島原発事故の調査報告規制(現場封鎖、隠蔽からまじめな再発防止がなされているか疑問)。
挙げればキリがないが、現在に至るまで、日本は主権国家であるとは言い難いことがわかる。
原発事故での隠蔽体質もそこに準ずる。2018年に加盟した TPPは、地位協定の経済版であり、これも良いことばかりを言って本質が報じられていない。
本書と、『戦後史の正体』孫崎享著は、社会の教科書副読本にして欲しい程わかりやすい解説となっている。
吉田にはじまり中曽根あたりまで反知性的教育を完成させ、現在に至るまで自民党がそれらを着実に継承してきたように思えてならない──従順な羊の量産に成功したかのような現在の日本。
自立を目指したリーダーたちも過去にはいたが、みな退陣を迫られた。
政権交代が叶ったと思われた鳩山内閣では、鳩山由紀夫が日米地位協定の見直しに言及した途端に激しく糾弾され、退陣、その後わずか二年半で民主党は内部分裂──それでも、当時、菅直人内閣は震災直後からかなり動いていたように高校生ながら思っていた──あっけなくまた自民党に政権が戻った。
東日本大震災、福島原発事故から十三年、能登半島地震から二ヶ月強。そのような中、先日、伊方原発運転停止を求める市民の声を大分地裁が退けた。
珠洲原発がもしも建設着工されていたら?
能登への支援は震災直後、政府は、どうであったか?
国民それぞれ個々の自由と尊厳が守られているかどうか、今一度、近現代史に立ち戻って考えなければならない。
ところで、SNSでは、#新大学生に勧めたい10冊 というハッシュタグをちらほらと見かける。
古典〜現代に至るまでの小説が列挙されていることが多い。無論、それらも読み大いに感受性を育むのも良いだろう。
そうした小説と合わせて、政治宗教などイデオロギーによらず、現実の社会がなぜ今に至るのか、目を向けて歴史の裏側を知ることも大事な学びである。
中高生からでも読める本書二冊をぜひ、新学期、新生活を迎える前に、手に取ってみて欲しい。
参考文献
『日米地位協定入門』前泊博盛他著 創元社
『戦後史の正体』孫崎享著 創元社
『原発事故は終わっていない』小出裕章 毎日新聞出版