ポール・マッカートニーが語る「Eleanor Rigby」誕生秘話: 孤独と出会いと音楽
今回の記事は以下マガジンに収録させて頂きました。
Eleanor Rigby - McCartney: A Life in Lyrics | Podcast
下のpodcast「lyricsの人生」より BEATLESの名曲「Eleanor Rigby」を分解・分析させて頂きます。
ポール・マッカートニーが語る「Eleanor Rigby」誕生秘話: 孤独と出会いと音楽
このポッドキャストでは、ポピュラーミュージック史上最も象徴的な人物の一人であるポール・マッカートニーと、彼の作詞について掘り下げた会話をもとに、楽曲の誕生秘話を探ります。今回は「Eleanor Rigby」が取り上げさせて頂きます。
「Eleanor Rigby」はどのようにして生まれたのか?
多くの人は知らないかもしれませんが、実はポール・マッカートニーは若い頃、詩人になることを目指していました。彼は上品な雰囲気を纏い(まとい)、バスの二階席でパイプ煙草を燻らせたいと思っていたそうです。(実生活では)詩人アレン・ギンズバーグとも交流があり、ギンズバーグはマッカートニーの詩の一部を手直しさえしていました。
ギンズバーグといえば、「Howl」で有名なビート・ジェネレーションの旗手の一人です。マッカートニーが「Eleanor Rigby」の原型となる詩を見せると、ギンズバーグはこう言ったそうです。「素晴らしい曲じゃないか」。マッカートニーにとって、ギンズバーグのこの言葉は最高の賛辞だったに違いありません。
孤独な老人たちへの思いが込められた歌詞
「Eleanor Rigby」は様々な解釈ができる奥深い曲ですが、まずは中心人物である Eleanor Rigby について考えてみましょう。マッカートニーは、自分がこれまでに出会ってきた多くの老婆たちを思い浮かべながら、Eleanor Rigbyという人物像を作り上げたと言います。
マッカートニーの父親は、息子であるポールとマイクに思いやりを持つように仕向けました。バスに乗っている年配の女性に席を譲ったり、買い物袋を持つことをすすめるなど、紳士的な振る舞いを教えたのです。
ある日、ボーイスカウトとしてボブという活動に参加した際、マッカートニーは多くの年配の方々と出会いました。ボブとは、年配の方の家のちょっとしたお手伝いをする活動で、当時イギリス全土で盛んに行われていました。
マッカートニーは年配の方々と接するのが好きになり、次第に彼らとも打ち解けることができました。こうした触れ合いが、「Eleanor Rigby」のインスピレーションになったのです。
マッカートニーは曲の中で、教会で掃除をする Eleanor Rigby をイメージしました。掃除をしているということは、彼女がどういう立場にいるのか、そしてそこに少し悲哀が漂っていることを想像させるのに役立ちます。
そして実は、その教会は結婚式が行われる場所でもあるのです。しかしその結婚式は彼女のものではありません。かつては彼女自身の結婚式だったのかもしれません。
マッカートニーの母親はニベアという保湿クリームを愛用
"wearing the face": 直訳だと不自然なのですが、直訳すると、「窓際に立ち、ドアのそばの壺にしまっている顔をつけている。 誰のためにしているのだろう?」という歌詞がありますが、ここでいう「顔」とは保湿用のクリームをつけた顔とのことです。
マッカートニーの母親はニベアという保湿クリームを愛用しており、それが歌詞に登場する「顔」のモデルになったそうです。
Eleanor という名前は、当時女優として活躍しており、ジョン・レノンと短期間交際していた Eleanor Bron からの一部と、ビートルズの映画「ヘルプ!」に出演していた女優 Jane Asher が働いていた Bristol Old Vic 劇場の近くで見かけた Rigby という店名からの一部が合わさって生まれたと言われています。
「Father McCartney」から「Father McKenzie」へ
もう一人の主人公である「Father McKenzie」は、当初は「Father McCartney」として構想されていました。しかし、ジョン・レノンとのセッション中に変更されました。「Father McCartney」だと自分の父親を連想してしまうため、しっくりこなかったのです。
そこで電話帳をめくり、McCartney の次に続く苗字を探したところ、McKenzie が見つかり、しっくりきたため「Father McKenzie」が誕生しました。
孤独な人たちのことを歌う「Eleanor Rigby」
「Eleanor Rigby」は、2人の孤独な人物の物語です。しかし、この曲は決して暗くはありません。むしろ、人生の様々な場面で出会う孤独を受け入れ、そこから立ち上がろうとするメッセージが込められているように感じられます。
【エリナー・リグビーの物語 - 孤独と無関心への痛烈な批判から学ぶ人生の教訓】
BEATLESの「エリナー・リグビー」の更に裏側を詳しく分析し 掘り下げさせて頂きます。
概要
ビートルズの1966年アルバム「リボルバー」に収録された「エリナー・リグビー」は、ロックとポップから実験的なスタジオ作品への転換を象徴する名曲です。ジョージ・マーティンによる弦楽四重奏アレンジと孤独をテーマにした歌詞が特徴で、音楽的にも歌詞的にも当時のポップミュージックの常識を打ち破りました。
楽曲分析
弦楽四重奏による荘厳な雰囲気
印象的なベースライン
マッカートニーの哀愁漂うボーカル
独特なコード進行
歌詞
孤独な女性「エリナー・リグビー」と社会の底辺に生きる人々を描いた物語
宗教的なイメージ
普遍的なテーマ
歴史的背景
ビートルズがロックとポップから実験的な音楽へと舵を切った時期
社会不安と孤独感が高まっていた時代
影響
音楽史に残る名曲として高い評価
その後のロック、ポップミュージックに大きな影響を与えた
映画、テレビドラマなど様々な作品で使用されている。
[プロローグ]
1966年にリリースされたビートルズの名曲「エリナー・リグビー」は、当時の英国社会に横行する孤独と無関心を徹底的に描き出した作品です。ポール・マッカートニーが中心となって作詞・作曲を手がけ、他のメンバーの助言も加わりながら生まれた本作品は、歌詞と音楽性の両面で高い評価を受けただけでなく、社会にも大きな影響を与えました。
[エリナー・リグビーとは?]
エリナー・リグビーという名の老婦人は、この曲の主人公です。彼女は都会の中で孤独に暮らし、人生に意味を見出せずにいました。最期にも家族や友人は誰もおらず、葬式には誰一人参列者がいないのです。一方、父マッケンジと呼ばれる老神父も、信者のいない教会で無為に日々を過ごしています。2人の孤独な人物を通して、現代社会における人々の孤立と無関心が痛烈に訴えられているのが本作品の特徴です。
歌詞の中には「"Wearing a face that she keeps in a jar by the door"」という一節があり、老婦人の孤独や虚しさを象徴的に表現しています。一人暮らしの老人が化粧をしていないということではなく、「顔すら持っていない」という比喩的な表現なのです。人々に見捨てられ、存在すら無視され続けてきた境遇を物語っています。
[音楽性の高さ]
「エリナー・リグビー」は、ビートルズのポップス・ロック作品の中でも際立って異質な作風を見せています。ビートルズのメンバー自身が楽器を演奏することはなく、マッカートニーの想いを込めたボーカルとジョージ・マーティンの編曲による弦楽四重奏のみが使われました。
当時としてはあまりにも実験的で前衛的なこのスタイルは、ロック史に大きな影響を与えました。マーティンの編曲は、アルフレッド・ヒッチコック映画の名作「サイコ」を彷彿とさせる哀しみと緊迫感に満ちたものでした。メロディラインも既存の長調や短調といったスケールを逸脱しており、ききどころ満載の作品に仕上がっています。
[社会的反響]
リリース直後、この作品の暗くて冷たい内容は多くの人を驚かせました。しかし、徐々にその深層に込められた社会への鋭い批判と、人々への深い思いやりの念が評価されるようになりました。次第に文学者や社会学者からも高い賞賛を浴びるようになり、「エリナー・リグビー」は時代を映す鏡のような存在となりました。
リヴァプールのある教会の墓地から、実在の「エリナー・リグビー」の墓が発見されたことも大きな話題を呼びました。マッカートニーはこの一致を偶然の産物だと語っていますが、それでも多くの人々がこの曲と実在の人物の接点を想像するに至りました。後に彼女の人生が判明したことで、曲の持つ現実主義的な側面が改めて浮き彫りになりました。
[まとめ]
「エリナー・リグビー」は、ビートルズの代表作の一つです。ポップ史に燦然と輝く不朽の名曲であり、音楽性の高さと社会的なインパクトの両面で賞賛に値するものです。しかし同時に、この作品が伝えようとしているメッセージの方が重要であると言えるでしょう。
つまり、社会における孤独と無関心は決して看過されるべきではなく、互いに思いやりの心を持ち続けることが肝心なのです。生きる意味を見失い、周りから見捨てられるような哀れな最期を迎えてはならないのです。人生には意義があり、誰もが幸せを手に入れる資格があります。この教訓をしっかりと胸に刻み、人々の痛みに思いを馳せる心の持ち主になれるかが問われています。
Personnel
The Beatles
Paul McCartney – lead and harmony vocals
John Lennon – harmony vocal
George Harrison – harmony vocal
Additional musicians
Tony Gilbert – violin
Sidney Sax – violin
John Sharpe – violin
Juergen Hess – violin
Stephen Shingles – viola
John Underwood – viola
Derek Simpson – cello
Norman Jones – cello
George Martin – string arrangement
日本語翻訳
ああ、孤独な人々を見てごらん
ああ、孤独な人々を見てごらん
エリナー・リグビーは、結婚式が行われた教会で、
床にまかれた米粒を拾っている。
夢見るような生活を送っているけれど、
いつも窓辺で待っている。
扉のそばに置いてある壺の中にしまっている仮面のような顔をして。
その顔は誰のためにしているのだろう?
孤独な人々はどこから来るのだろう?
孤独な人々はどこに行けばいいのだろう?
マッケンジー神父は、誰も聞いてくれない説教の言葉を書き綴っている。
誰も彼の元にやってこない。
夜中、誰もいない静寂の中で靴下を繕っている神父の姿を見てごらん。
彼は一体何を気にかけているのだろうか?
孤独な人々はどこから来るのだろう?
孤独な人々はどこに行けばいいのだろう?
ああ、孤独な人々を 見てごらん
ああ、孤独な人々を 見てごらん
エリナー・リグビーは、教会で亡くなり、長い間名前も知られず埋葬された。
誰も彼女のもとを訪れなかった。
マッケンジー神父は、墓地から歩き去るときに、手についた土を拭った。
救われる人は誰もいなかった。
孤独な人々はどこから来るのだろう?
孤独な人々はどこに行けばいいのだろう?