『税金を払わずに生きてゆく逃税術』大村大次郎
概要
『税金を払わずに生きてゆく逃税術』は、日本の高い税負担と、それが生まれた背景にある社会問題について、元国税調査官の著者が鋭い視点で解説した一冊です。タイトルからは過激な印象を受けますが、著者の狙いは「納税は国民の義務」という考え方を再考させることにあります。特に1990年代に行われた公共事業の乱発が、今も続く財政赤字や国民の税負担の大きな原因だと指摘しています。本書では、日本のサラリーマンが抱える厳しい税制度や、その中でできる節税法、さらには税負担を軽減するための生き方の選択肢についても幅広く紹介しています。経済的な重圧に悩む現代の日本人にとって、「税金とどう向き合うか」を見直すきっかけとなる一冊です。
本のジャンル
経済、ライフスタイル、自己啓発
詳細
1. 日本における税負担の現状
著者は、日本人の多くが感じている「税金が高い」という不満の根本原因に目を向けます。著者の主張は、現在の重い税負担は単に高齢化に伴う社会保障費の増加だけでなく、1990年代に実施された公共事業の過剰な支出が原因だという点です。バブル崩壊後、景気を回復させるために日本政府は約630兆円もの資金を公共事業に投じましたが、ほとんどのプロジェクトが経済効果を生まず、国家財政を圧迫する結果に終わりました。この無駄な支出が長期的な財政赤字の原因となり、その負担が国民の税金に反映されています。
2. 財政赤字の本質
著者は、政府が宣伝している「高齢化社会が財政圧迫の主な原因」という主張には裏があると指摘します。実際、社会保障費の負担増加は避けられない現実ですが、それだけが原因ではありません。日本の財政赤字の最大の要因は、過去の政治的な決定による無駄遣いであり、特に地方の選挙基盤を支えるための箱モノ建設や不要なインフラ整備に大量の税金が使われたことが、現在の状況を招いています。このため、著者は現状の税制がただ無批判に国民から集金するだけのシステムに成り下がっていると述べ、改善の必要性を訴えています。
3. サラリーマンの「重税感」
本書の中でも、特にサラリーマンが感じる重い税負担について詳しく取り上げています。サラリーマンの収入はすべて会社から報告され、収入隠しが難しいため、所得のほぼすべてが課税対象となります。一方で、経費計上が難しいため、自営業者に比べると控除される部分が少なく、結果として手取りの収入が減少する傾向にあります。著者は、サラリーマンの税負担は江戸時代の農民の年貢よりも重いと指摘し、この状況を「現代の年貢制」と表現しています。さらに、社会保険料も大きな負担となり、サラリーマンの可処分所得が大幅に削減されている現実が浮き彫りにされています。
4. 節税のための副業
次に、著者が提案する節税法の一つとして「サラリーマン副業節税」があります。サラリーマンが副業を通じて収入を得ることで、その収入を事業所得として計上し、経費を認められる形にするという方法です。たとえば、自宅の一部を仕事スペースと見なして家賃の一部を経費に計上したり、パソコンやインターネット代、書籍代などを必要経費として認めることで、実質的に節税効果を得られるのです。これにより、働き方に柔軟性が生まれ、会社に依存せずに税金を抑えることが可能になります。
例え話としては、「小さなビジネスのオーナーになる感覚」で副業を展開することで、会社からの収入だけでなく、自己責任で収益を生み出すことの楽しさも味わえるという点が挙げられます。
5. 会社内独立という選択肢
著者がもう一つ提案するのが「会社内独立」という方法です。これは、社員として会社に属するのではなく、業務委託という形で会社と契約し、事業者として働く方法です。こうすることで、自身が事業者と見なされ、経費として認められる範囲が広がり、税金や社会保険料を大幅に抑えることができます。さらに、会社内独立であれば、同じ仕事内容であっても収入の仕組みが異なるため、実質的な収入が増える可能性が高まります。この方法は一部の外資系企業などでも採用されており、労働者にとってもメリットのある働き方の一つです。
具体的には、例えば「IT業界でフリーランスとして活躍している人々」の働き方に似ており、労働者としての安定性と、事業者としての自由な働き方を兼ね備えています。このスキームにより、サラリーマンから一歩進んで収益の確保と節税を同時に実現できる方法です。
6. 物価の安い海外移住
さらに、本書では「物価の安い国への移住」という選択肢についても言及しています。著者は、日本の物価の高さや税金の負担が生活の質を低下させていることを指摘し、生活費が安く、税金も低い海外での生活が豊かな暮らしを実現するための選択肢になると述べています。特に、東南アジアの国々(タイ、フィリピンなど)は日本と比べて物価が大幅に低く、収入を効率的に使うことで、同じ収入でも豊かな暮らしを享受できるといいます。
例として、フィリピンでは1か月10万円以下で快適な暮らしが可能で、老後に向けた移住先としても注目されています。著者は、日本で得た資産をもとに、物価の低い国で第二の人生を楽しむスタイルを提案しており、読者にとっても魅力的な選択肢となるでしょう。
7. 税制への視点と「税金逃れ」の哲学
著者は単に節税を推奨するだけでなく、「税金を払わない」という行為を哲学的に捉えています。著者は、「税金を無批判に納め続けることが、政府や政治の機能不全を助長している」と述べています。つまり、国民が税に関して意識を持ち、政府の無駄遣いを批判的に見ることで、社会の健全性を保つ役割も担うべきだと主張しています。これは、税金逃れが単なる自己利益の追求だけでなく、政府に対する「チェック機能」としての意義があると述べている点が印象的です。
この視点に基づけば、納税は国民の義務であると同時に、必要な場合は「支出の見直しを政府に求める」行為としての脱税も一種の国民の責任であると言えるでしょう。
まとめと感想
『税金を払わずに生きてゆく逃税術』は、日本の税制度に対する鋭い問題提起と、現代の生活に密着した実用的な節税方法を紹介した一冊です。特に、サラリーマンの負担が大きい現状や、1990年代の公共事業の浪費がもたらした財政赤字の影響について、著者は国税調査官としての視点から説得力を持って解説しています。多くの人が「税金は義務だから仕方ない」と思いがちですが、著者はその思考を根本から見直すべきだと警鐘を鳴らしています。
読者にとっては、「節税のための副業」や「会社内独立」という選択肢があることで、収入を増やしながらも税負担を軽減できることを知るきっかけになります。また、東南アジアなど物価が低く税負担も軽い国への移住というアイデアは、特にリタイア世代や将来の生活設計に悩む人にとって魅力的でしょう。
本書は、ネット上でも高評価を得ており、「税金と生活のバランス」を考えたい方にとって最適なガイドブックとなるでしょう。もし、さらに詳しく知りたい方は、本書のリンク先の口コミや評価を確認し、手に取ってみるのもおすすめです。
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