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『BIG THINGS どデカいことを成し遂げたヤツらはなにをしたのか?』ベント・フリウビヤ

概要

『BIG THINGS どデカいことを成し遂げたヤツらはなにをしたのか?』は、巨大プロジェクトの成功法則を解き明かす一冊です。著者のベント・フリウビヤさんは、オックスフォード大学の教授であり、世界中の予算1000億円以上のビッグプロジェクトを1万6000件以上も研究してきた人物です。本書では、成功率わずか0.5%というビッグプロジェクトの現実に直面し、それを乗り越えるための方法を紹介しています。計画の重要性、前例を活用することの大切さ、経験豊富なチームの組み方など、ビジネスやプロジェクト運営に役立つ具体的なノウハウが詰まっています。

本のジャンル

ビジネス、自己啓発

要約

1. 行動よりも計画が命:大事な仕事ほど慎重に準備せよ

ビッグプロジェクトの成功には「計画が命」です。著者は、多くのビジネス書が推奨する「とにかく行動しよう」というアプローチは、日常の小さなタスクには効果的でも、ビッグプロジェクトには適していないと指摘しています。なぜなら、巨額の予算と時間をかけたプロジェクトでは、小さなミスが致命的な結果をもたらすからです。

シドニーオペラハウスの建設は、計画不足の典型例として紹介されています。設計段階では、建設方法や予算、スケジュールが十分に考慮されておらず、結果的に当初の見積もりを大幅に上回るコストと工期を必要としました。この事例から学ぶべきは、計画段階で問題点を洗い出し、あらゆる可能性に備えておくことが必要だという点です。

一方で、ビルバオのグッゲンハイム美術館は計画の徹底により成功した例です。このプロジェクトでは、建設前にデジタルシミュレーションを用いて設計を何度も検証し、さらに物理的な模型を作り試行錯誤を重ねました。こうした徹底的な準備により、実際の建設はスムーズに進行し、工期も予算も計画通りに収まりました。このように、成功するプロジェクトは、行動を焦ることなく、綿密な計画に多くの時間を割いているのです。

計画を重視することは、マラソンを走る前に十分なトレーニングを積むのと似ています。どんなに強い意志があっても、準備不足で挑めば体を壊すだけでなく、大きな怪我につながる可能性も高まります。ビッグプロジェクトも同様で、いきなり走り出すのではなく、しっかりと計画を練ることが重要です。

2. 唯一無二にこだわらず、前例をうまく活用する

ビジネスの世界で「独自性」や「革新性」が重要視される一方で、ビッグプロジェクトにおいては、過度に「唯一無二」を追求することが失敗の原因となることがあります。著者は、前例をうまく利用することの大切さを強調しています。成功するプロジェクトの多くは、既存のアイデアをうまく応用し、自分たちのプロジェクトに組み込んでいます。

例を挙げると、GoogleはYahoo!の検索エンジンを参考にし、FacebookはMySpaceを模倣することで成長しました。これらの企業は、先行者が成功した要素を取り入れ、さらに自分たちのオリジナリティを加えることで新たな価値を生み出しました。言い換えれば、最初に独自の道を切り開くことにこだわらず、すでにあるものから学び、その上で新しいアイデアを組み合わせることが大事なのです。

たとえば、料理をする際に全く新しいレシピを考案するのではなく、伝統的な料理に新しいスパイスを加えてアレンジするのと同じです。このように既存のものをうまく使いながらも、新たな価値を生み出す方法が、ビッグプロジェクトの成功には欠かせません。

3. チームにベテランと専門家を集める:経験者の力を活用する

ビッグプロジェクトにおいて、「若者、馬鹿者、よそ者」が革新を起こすという考え方は通用しません。著者は、経験豊富なベテランや専門家である「マスタービルダー」の存在が、プロジェクトの成否を左右する重要な要素であると述べています。中世ヨーロッパの大聖堂建設で熟練の職人が指揮を執っていたように、現代のビッグプロジェクトにも豊富な知識とスキルを持つ人物が必要です。

しかし、必ずしもベテランや専門家を雇えるわけではありません。そのような場合でも、チームの一体感を保つことが非常に重要です。プロジェクトが進むにつれて、各メンバーの意見や利益が対立することが多々あります。そこで、チーム全体に共有する明確なインセンティブ設計を行い、プロジェクトの目標達成に向けて一致団結する必要があります。

たとえば、スポーツチームでも個々の選手が自分勝手にプレーしていては勝てません。全員が同じゴールに向かって協力し合うことで初めて勝利をつかむことができます。同じように、プロジェクトでもメンバーが同じ方向を目指し、協力し合うことが求められます。

感想とまとめ

『BIG THINGS どデカいことを成し遂げたヤツらはなにをしたのか?』は、ビッグプロジェクトに挑むビジネスパーソンにとって、必読の一冊です。特に、計画の大切さを説く内容は、多くのビジネスシーンで応用できるでしょう。行動することが良いとされる風潮がある中で、あえて「まずは計画」という姿勢をとることの重要性を教えてくれます。さらに、過去の事例から学ぶことの大切さや、経験豊富なチームの力を活用することで、成功への道がより確実なものになると感じました。

本書を手に取ることで、成功率が極めて低いビッグプロジェクトにおいても、成果を上げるための具体的な方法を学べます。ビジネスだけでなく、日常の大きなチャレンジにも役立つ内容が詰まっており、プロジェクトに取り組む際の視野を広げてくれることでしょう。ぜひ、一度この本の中で紹介されている成功法則を学び、実際のプロジェクトに活かしてみてください。きっと新たな気づきと成果が得られるでしょう。

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