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『「暗記する」戦略思考』高松智史

概要

『「暗記する」戦略思考 「唱えるだけで」深く、面白い「解」を作り出す破壊的なコンサル思考』は、著者の高松智史さんが、問題解決の鍵として「暗記」を提唱するビジネス書です。従来のビジネス書では「暗記は無駄」や「AI時代には必要ない」とされることが多い中、本書はその逆を唱えます。著者は、問題解決のために覚えておくべき3つの思考法を「リアリティスイッチ」「枝分かれ思考」「そのまま思考」として解説し、暗記を活用することでビジネスにおける思考力を鍛える重要性を強調しています。実際のビジネスシーンで即戦力として使える知識やスキルを、暗記を通じて体得することが目指される内容です。

本のジャンル

ビジネス、自己啓発

要約

はじめに:暗記の価値を再発見する

『「暗記する」戦略思考』は、ビジネスパーソンが即座に有効な判断を下すための思考法を解説する本です。本書の核となるのは、問題解決の際に役立つ3つの思考法を暗記し、それを活用することで思考の質を高めることです。著者は、ボストンコンサルティンググループ(BCG)での経験を基に、実際に効果のあった思考法を体系的に紹介しています。多くの人が「暗記は非効率」と考えがちな中で、著者は暗記こそが迅速で的確な判断を下すための重要な手段であると説いています。

1. リアリティスイッチ:現実感を持たせる

最初の思考法「リアリティスイッチ」は、抽象的な問題に直面したときに、現実感をもたせることで解決策を見つけやすくする方法です。具体的には、問題が抽象的すぎて答えが見つからない場合に、あえてリアルなシチュエーションを想定して問題に取り組むことを意味します。たとえば、大学生が英語の留学先を選ぶ場合、「授業のスケジュール」「バイトとサークルの両立」「留学費用の調達方法」など具体的な条件を考えることで、漠然とした選択肢ではなく現実的な決断ができるようになります。

このアプローチは、ビジネスにおけるプロジェクトの立ち上げ時や新製品の開発時においても有効です。例えば、新製品を市場に投入する際、顧客が実際にその製品をどのように使うかを具体的に想定することで、ニーズに合ったマーケティング戦略を立てることができます。リアリティを感じることで、単なる想像ではなく、実行可能な計画が浮かび上がるのです。

2. 枝分かれ思考:条件を分けて考える

次に紹介されるのが「枝分かれ思考」です。これは、問題を解決する際に一度に全てを考えるのではなく、条件ごとに分けて検討することで、より的確な対応策を導き出す方法です。たとえば、ある会社が「絶対に破れないストッキング」を開発したとします。この製品を販売する戦略を考える際、まずその会社がすでにストッキング市場に参入しているかどうか、さらに既存のストッキング製品が主力事業であるかどうかを確認する必要があります。

もしその会社がすでにストッキングを製造販売している場合、新製品が既存の売り上げに影響を与えるリスクがあります。そのため、新たな市場を開拓するか、既存の顧客に新しい魅力を伝える必要があるでしょう。逆に、まだストッキング市場に参入していない場合、新製品を看板商品として打ち出し、業界に革命を起こすことができるかもしれません。条件を明確に分けて考えることで、どのような戦略を取るべきかが見えてきます。

この思考法は、ビジネスだけでなく日常生活にも応用できます。たとえば、新しい趣味を始めるときに、自分のライフスタイルに合っているかどうかを複数の条件(時間、コスト、興味)に分けて考えれば、最適な選択がしやすくなるでしょう。

3. そのまま思考:直球で考える

最後の思考法「そのまま思考」は、問題を複雑に捉えず、シンプルにそのまま考えることを重視します。多くの人が複雑な解決策を考えようとする一方で、実際には最もシンプルな方法が最も効果的なことが多いのです。たとえば、ディズニーランドの年間パスポートの販売を増やす施策を考える際に、豪華な特典を追加するのではなく、単に「年パスがなぜお得なのか」をシンプルに伝えることで、潜在的な顧客に訴えかけることができます。

このように、「そのまま思考」は問題を必要以上に複雑にしないことで、本質的な解決策に集中できるようにする方法です。ビジネスシーンにおいても、課題に対する改善策を過剰に複雑化せず、簡潔な方法を追求することで、大きな成果を上げることが可能です。

暗記する理由

本書の根底に流れるテーマは、「暗記することの価値を再発見する」ことです。暗記はただの記憶術ではなく、特定の状況において適切な対応を引き出すための重要なツールです。たとえば、スポーツ選手が練習を通じて体で覚える動作のように、ビジネスでも思考法を暗記することで無意識に適切な判断ができるようになります。著者は、これらの思考法を頭に叩き込むことで、ビジネスや日常の様々な場面で応用できる力を身につけることができると説いています。

他の本や見聞との比較

この考え方は、他のビジネス書とは異なる視点を提供しています。たとえば、『思考は現実化する』や『7つの習慣』のような自己啓発書では、目標達成や習慣の力を重視していますが、本書はそれらを支える土台としての「暗記する戦略」を提案している点がユニークです。さらに、マインドフルネスやメンタルトレーニングとも共通する部分があり、意識的に自分の思考パターンを鍛えることで、無意識的な行動を改善できるという考え方が本書を通じて示されています。

感想とまとめ

『「暗記する」戦略思考』は、ビジネスに限らず、日常の様々な場面で役立つ思考法を提案する本です。暗記というと一見古臭いイメージがあるかもしれませんが、著者が示すように、迅速で的確な判断を下すための基礎的なスキルとして捉えると、その重要性が再認識できます。思考法を暗記することで、複雑な問題にも立ち向かえる強さが身につくでしょう。日々の仕事や学習の中で実際に試してみると、その効果を実感できるはずです。

自分の思考パターンを向上させるための「戦略的暗記術」を学びたい方に、この本をぜひ手に取ってみていただきたいです。新しい視点での学びが、あなたの成長を後押ししてくれるかもしれません。

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