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『残酷すぎる幸せとお金の経済学』佐藤 一磨

概要

本書は、経済学の観点から「幸せ」と「お金」の関係を探り、私たちの日常生活に潜む厳しい現実を明らかにしています。著者の佐藤一磨さんは、幸福度をお金、仕事、結婚、子ども、年齢といった人生の重要なテーマと結びつけて分析し、従来の「年収1000万円が幸福度の限界」という常識を覆す新たな発見を紹介しています。さらに、出世が個人の幸福に与える影響や、人生のどん底が48.3歳に訪れる理由についても述べています。本書は、経済的側面から幸福を再考する一冊であり、幸せの本質を追求するための手がかりを提供します。

本のジャンル

経済、心理学、自己啓発、ライフスタイル

要約

幸せとお金の関係
著者は、幸せという抽象的な概念を経済学の視点で具体的に分析しています。従来、幸せは哲学や心理学で議論されることが多かったものの、佐藤さんは経済学を用いて、幸せがどのように金銭的な要素と関連しているかを探りました。まず、年収1000万円が幸福度の限界であるという説は、長らく支持されてきましたが、2023年の新しい研究で覆されました。この研究では、年収1400万円を超えると幸福度がさらに上昇することが明らかになり、稼げば稼ぐほど幸せになれるという結論に至りました。これは、幸福度をお金だけでなく、個人のもともとの幸福感によって異なるため、年収が増えることでより高い幸福度を得られる人がいる一方で、そうでない人もいることを示しています。

たとえば、もともと幸福度が高い人は、収入の増加に伴ってさらに幸福度が上がりやすいのです。高収入の人々は、社会的な地位や自己満足感から多くの恩恵を受けやすいという面もあります。一方、もともと幸福度が低い人にとっては、収入が増えても幸せを感じる度合いが限定的であり、他の要素が幸福度に与える影響が大きくなります。これにより、お金が全てではないにしても、経済的な安定が生活の質を向上させる重要な要素であることがわかります。

出世と幸福度
本書はまた、出世と幸福度の関係についても探っています。管理職や高い地位を目指すことは、多くの人にとって大きな目標ですが、その結果、必ずしも幸福度が上がるわけではありません。著者によると、昇進によって仕事量が増え、責任が重くなる一方で、それに見合う報酬や精神的な満足感が得られない場合、メンタルに悪影響を与えることがあります。イギリスの研究によれば、出世後の生活の満足度は期待ほど高くならず、精神的な負担の方が大きいとされています。

ただし、出世を「自分のため」ではなく「家族のため」に行うと、その効果は異なります。家族の幸福度が高まることで、自分の努力が報われる感覚を得やすくなり、結果的に自己の満足度も向上します。たとえば、家族がいることで仕事へのモチベーションが高まり、昇進による責任の増加が「自分のため」でなく家族の幸福のためのものだと感じることで、精神的な安定を保つことができるのです。

人生のどん底は48.3歳
佐藤さんはまた、人生における幸福度の変動についても言及しています。ダートマス大学の研究によると、人生の幸福度はU字型のカーブを描き、48.3歳がその最低点とされています。この時期には、仕事の負担が増し、家族のケアや教育費などの経済的なプレッシャーも重なるため、理想と現実のギャップが広がることが原因です。このような中年期のストレスは、多くの人にとって避けられない現実であり、幸福度の低下を引き起こします。

ただし、このどん底期を過ぎると、幸福度は再び上昇に転じます。50代後半以降、人々はこれまでの自分の人生を受け入れ、将来への期待が現実的になり、精神的な安定を取り戻します。年齢を重ねることで、物質的な欲求が減少し、日常の小さな喜びを見出すことができるようになるのです。これにより、人生の後半にかけて幸福度は徐々に回復します。

幸せを追求するためのポイント
本書が示す最も重要なメッセージは、幸福度は単にお金や地位の問題ではないということです。もちろん、経済的な安定が幸福に大きな影響を与えるのは事実ですが、それだけでは人々の真の満足感を保証することはできません。家庭や人間関係、自己実現といった要素が幸福にとって大切な役割を果たすのです。例えば、家族との時間を大切にすることや、自分の好きなことに没頭する時間を持つことで、経済的な豊かさ以上の満足感を得ることができます。

感想とまとめ

「残酷すぎる幸せとお金の経済学」は、幸せの本質に迫るために、経済学的な視点を提供してくれる一冊です。お金と幸福の関係を見直すことで、人生に対する新たな視点を得ることができるでしょう。本書は、従来の常識を覆す内容が多く、特に「年収1000万円で頭打ち」という通説が変わった点は、多くの人にとって新鮮な驚きです。また、出世の意味や中年期の幸福の低迷に対する対処法についても、具体的な提案がなされています。

日々の生活において、自分の幸福を高めるために何を優先すべきかを再考するきっかけになるでしょう。現実的な視点から幸福を探求したい方にとって、この本は必読です。今すぐ詳細な内容を確認し、あなた自身の幸福を見直す旅を始めてみてください。

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