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未来へのお願い
こんにちは。未来小学校6年1組の秋葉原ススムです。これからぼくの考える「こんな学校あったらいいな」の発表をおこないます。
まず、皆さんに言いたいことがあります。
皆さんはぼくらが「学校に行けなくてつまらない」「友達と遊べなくてさみしい」と考えていると本気で思っていますか? 確かにそういう生徒もいるでしょう。でもぼくやぼくの友達は違います。一言で子どもといっても大人と同じくいろいろな性格の子がいます。皆さんの目に好ましく映るタイプばかりではありません。ぼくのクラスメイトにはケーキの苦手な子がいます。外で遊びたくない子がいます。遠足よりも算数の方が楽しいという子やチョコレートよりも納豆を食べたいという子もいます。桃やメロンよりもピーマンやめざしが好きな子や花や動物に興味ゼロの子もいます。だったら友達に会えなくても気にしない子がいても不思議じゃないですよね。
そう、ぼくらはそんなことこれっぽっちも気にしていません。オンラインで遊べるからです。いつでも格ゲーで対戦できますし将棋だって指せます。お菓子を食べながら楽しく話すことも可能です。子どもにはSkypeやZoomなんて無理だと思っていますか? 馬鹿にしないでください。できないと思っている子どもたち、もっと自分を信じてください。大人だけができるとされていることのほとんどは、実はぼくらにもできるのです。ふたりで話すときはSkype、大勢ならZoomと使い分けています。友達のお父さんがZoomの有料会員で録画録音をできるのがありがたいですね。こういう環境だから、わざわざ学校へ行って顔を合わせる必要などないのです。
勉強に関しても同様です。学校から無料で配布してもらったノートパソコンでオンライン授業を受けています。体育の時間は配信された動画を見ながらトレーニングやダンスの練習をします。音楽の時間はリコーダーを吹き、歌を歌います。Zoomを使えば教室でやるのと変わりません。むしろみんなの目が気にならないので、恥ずかしがらずに歌えます。算数や国語もオンラインの方が楽だし便利です。聞き逃したところがあっても、後で動画を再生してチェックできますからね(まあぼくやぼくの友達は優秀だから学校の授業はほぼスルーして、こっそりと他の勉強をしているのですが)。あとぼくはいちおう学級委員だから学級会もZoomで進行しています。教室でやるよりもみんなの発言が多いですね。
そんなわけで、ぼくらは学校に行けなくても毎日を楽しくすごしています。制服に着替えなくていいしバスに乗らなくていい。限られた時間を前よりもずっと効率よく使えています。ワクチンができた後もこのやり方をずっと続けて欲しいと思っています。
数年前、二学期の始業式で体育館にずっと整列したまま校長先生の長いお話を聞き、気持ち悪くなって吐いてしまったことがあります。本当に苦しかったし恥ずかしかったです。一生記憶に残ると思います(お話の内容は忘れましたが、ぼくに全校生徒の前でゲロを吐かせた大人の名前は絶対に忘れません)。なぜ涼しい部屋に座ってスクリーンでライブ配信を見る形にしてくれないのですか? 動画を家で見て感想を担任の先生へ送るのではだめですか? 昔はこうだったから、という理由で続けているのなら、洗濯板で服を洗ってください。和服を着てふんどしを締めてください。ちょんまげを結ってください。
こういうことを言うと、皆さんは必ず「子どものくせに生意気だ」「いいから黙って大人の言うことを聞け」と返しますよね。答えになっていません。ひどいときはいきなり頭を叩かれます。根性が足りないとか苦しいことに耐えてこそ人は成長するとか、余計なお世話です。ぼくらは毎日勉強を頑張っています。塾も利用しています。夜遅くまで復習をしています。苦しいけど必死に続けているのです。一流の進学塾はさすがに教え方が上手ですし、オンライン授業のやり方も進んでいます。学校で一生懸命教えてくださっている先生方には申し訳ないですけど、塾だけでもいいぐらいです。だって、ぼくらが勉強をするのはいい大学に入るためでしょう。違いますか? そう考えると、少なくともいまの小学校の授業はぼくやぼくの友達には必要ありません。いい大学に入るための役に立ちません。時間の無駄です。それだけの学力をぼくらはもう身につけているのです。だからどうか塾に頼らなくてもいいようなハイレベルでエキサイティングな授業をオンラインで受けさせてください。それがぼくらの望みです。
ただオンライン学級に問題がないわけではありません。いま両親の話をしましたが、ウチは共働きです。父は郊外の小さな洋食レストランでコックさんをしています。母は朝の九時から夕方の五時までスーパーの中にある本屋さんで働いています。どちらもテレワークのできない仕事です。車がないので電車で通っています。つまりぼくが授業を受けている間、家には他に誰もいないのです。食事は自分でどうにかしていますが、それをできる子どもばかりでもないでしょう。お父さんかお母さんがテレワークか専業主婦(あるいは主夫)の場合でも、毎日子どもの昼ごはんを作るのは大変だと思います。だからぜひウーバーイーツなどを使って給食を家まで宅配してもらいたいのです。授業が完全にオンライン化することで給食がなくなってしまうのは困ります。こういう生活面のサポートとか悩みを聞いてもらう、などの役割を学校に果たしてもらえるとありがたいなとぼくは考えています。
最後にぼくの夢をお話しします。
ぼくの夢は友達と一緒に会社を作ることです。遅くても大学を卒業する前には始めます。ぼくらがやりたいのは面白いゲームを作ることです。いまからプログラミングの勉強をしています。アイデアが浮かんだら、忘れないうちにスマートフォンにメモします。友達がどこまで本気かはわかりませんが、ぼくは真剣です。ゲームクリエイターになりたいとかYOUTUBERになりたいという子は多いけど、会社を起こしたいという声がクラスにほとんどないのは残念ですね。自分で起こすよりも有名な大企業に入る方が間違いないということでしょう。気持ちはわかります。ぼくも最初はそのつもりでした。でもぼくには会社員は無理です。どうして同じ服装で同じ時間に同じ電車に乗らないといけないのでしょうか? 革靴で歩くと無駄に疲れます。仕事を始める前にわざわざ疲れさせる意味がわかりません。ネクタイというのも謎です。あれを締めたりゆるめたり外したりする時間がもったいないと思うのはぼくだけですか? テレワークのできるゲーム会社に入ればいいんでしょうけど、どうせそこには違う種類の謎ルールがあるのでしょう。ぼくは自分の生きるルールはなるべく自分で決めたいのです。
ところで「嫌なことから逃げるな」「仕事というのは嫌なことに耐えてお金をもらうものだ」と皆さんはよく言いますよね。ぼくはその言葉を信じていません。なぜなら、好きなことを仕事にして生きている人がぼくの周りにちゃんといるから。母方のおじさんです。父はぼくら家族を養うために雇われコックを続けていますが、おじさんは独身で実家に住み続けています。小説を書いています。たくさん本を持っていて、遊びに行くといつでも貸してくれます。元々は母が働いている書店でアルバイトをしながら書いていて、新人賞を獲ってデビューして本が売れるようになってから作家業に専念するようになりました。父は家に帰るとお客さんの悪口や仕事の愚痴しか言いませんが、おじさんは会うといつもニコニコしています。「小説を書くのは趣味の延長。少しも苦にならない。だからいまは毎日が楽しいよ」と目をキラキラさせて話してくれます。あれこそがぼくの目指す生き方なのです。
何が言いたいかというと、学校に「仕事とはこういうもの」「お金を稼ぐとはこういうこと」「好きなことで生きていくにはどうしたらいいか?」という実践的な授業をもっと取り入れて欲しいのです。先生方にできなければ、実際に起業した経営者やフリーランスで成功している人を講師にお招きしてください。あと英語教育を小学校から始めるのはいいと思いますが、投資や起業の入門講座もぜひお願いします。それからぼくらの間で最も人気の高い職業はYOUTUBERですが、だったら動画編集の基本的なスキルぐらいは学校で教えてくれてもいいのではないですか? 小学生にはもっと他に学ぶべきことがあるというのなら、ぼくらみたいに小学校のいまのカリキュラムで教わることは何もないというエリート限定でかまいません。これは決して勉強のできない子への差別ではありません。できる子の成長するスピードをできない子に合わせてゆるめてしまうことの問題についてお話ししているのです。「子どもはそんなことするな」「みんなと一緒におとなしく授業を受けろ」という方が、ぼくらからしたら差別です。優秀な子ども、みんなとは違う子どもへの差別なのです。
以上でぼくの発表を終わります。いろいろと生意気なことを申し上げましたが、一部を除いてほぼ全てぼくの想像です。切実な願望です。オンライン学級なんてぼくの通う小学校には存在しません。ZoomやSkypeで話せる友達もいません。それが悔しいしさみしいから、「こんな学校あったらいいな」と本気で考えてこの小説を書きました。ぼくは皆さんの考える子どもとは違います。こんなやつの意見などごく少数派で参考にならないとお思いでしょう。でもぼくだって人間です。生きています。もっと楽しく生きたいです。みんなと違う人間だって幸せな人生を望んでいいはずです。ぼくは誰よりもこの国の明るい未来を信じています。その実現のために全力で生きるつもりです。ありがとうございました。
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