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スリ ロベールブレッソン 極私的批評

お久しぶりですね皆さん。内臓じゃばじゃば洗いたいとか思ってないですか?私は行動が大切だと思うので洗い始めましたよ先週から。「は?意味わかんないわ」でお馴染みのおふたろう極私的批評の時間がやってまいりました。ネタバレ無しですが、まともな映画批評とかあたすには出来ませんので、気になるあなたはGO back to 地元 で、爪噛んでてください。意外と美味いよねTUME。行こうぜピッチパッチ吾亦紅!


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スリ ロベールブレッソン監督作 


1959年公開(同年日本公開・ルイマル 恋人たち ワイダ 灰とダイヤモンド ルメット 12人の怒れる男 ヒッチコック 北北西に進路をとれ ホークス リオブラボー 喜八 独立愚連隊)


映画をもっと知りたいと思い始めた頃。古典を探ろうと思って掘り下げ始めた監督を一人挙げるとしたらアルフレッドヒッチコックだ。子供のくせにイキってヒッチコック見てるのもなんか優越感があったけど、それより純粋に物語がおもしれーのよ。「どうなるの!?」って胸にざわざわを起こしてくれるサービス精神満点な作りは、モノクロやトーキーなんかの古い映画を積極的に見るきっかけになったと思う。

このへんが好きになるきっかけだった
ヒッチコックは監督自体の見た目もジェニックだ


話は変わりますが、何のジャンルにしても、ある程度認知され、いわゆる「売れた」という基準をクリアしてその後も制作を続ける表現者の作品に触れるのが好きです。その先に「売れなくなった」としても一度は大衆に受け入れられたという事は、時代を捉える、あるいは時代に思ってもみない形で捕らえられた!という現象があるという事が面白いと思うから。

ヒッチコックを筆頭とした所謂ハリウッド黄金期の古典はあらゆる意味で過剰だと思う。謎を表すシーンには、デカデカとストリングスが鳴り響く中、ズームで観客を煽るし、悲しい宿命を呪いながらひとり酒を飲むといったシチュエーションは、悲しさのエッセンスを凝縮したようなあざといカメラの動きと表情、そして音楽でトゥーマッチに彩られる。カサブランカも第三の男もめちゃくちゃ過剰に思える。(それが悪いってんじゃないの、大好きだよ)家屋の中のシーンは大抵何故か無駄に横に長く、今見るとばりっばりセットじゃんとも思うけど「こういうもんなんだな。古い映画って」と思いながらぼさっと見続けていた。

7/16に札幌のシアターキノでロベールブレッソンの「湖のランスロ」と「たぶん悪魔が」がリバイバル上映される。エリックロメールといい、フライヤーのビジュアルがばちばち趣味に刺さる。「これは予習しておこう」と思い、在庫の積読?積未視聴?DVDを鑑賞して見ることにした。


これがまぁ衝撃。カルチャーショックドゥーフューチャー。カメラが捕らえる場所も表情も、見せ場の切り取り方も今まで見てきた古典と全然違う。音楽は全然鳴らないし、セット感が無く、そこら辺でリアルに撮りましたよ、ってな質感がぶっきらぼうなんだけど子憎たらしく無いのが不思議。激しい演出が無くても要所要所で、ダイナミックな動きの連続で息を呑むカットを差し込んでくるから話はシンプルなのに構造的にめちゃくちゃ面白かったです。そんで題材も雰囲気もめちゃくちゃ暗い。どんよりしている。でも最後少しだけ明かりが灯る。この感じとても好みだ。

「スリ」ってタイトルだけあって主人公が、見ず知らずの人物が鮮やかな手口で犯行を行う瞬間を目撃した事から、スリに目覚めてしまい、模倣して様々なドラマが起こっていくという物語なんだけど、犯行の瞬間の緊迫感としなやかな手の動きが生み出す妙な色気に冒頭から大興奮。これまで自分が愛好してきた古典と言われる作品で見た事がない演出やカメラワークの連続で「映画の世界広いなー」と実感しました。昨日サツゲキで見たパゾリーニの「王女メディア」でも強く感じたなぁ。既存の「売れた映画」の文脈と異なって独自の世界観を築いて作品を作っている監督の撮るものは唯一無二だなーと感じました。パゾリーニはとっきにくいし、ブレッソンは暗いし、とても万人には薦められないけどね。

手の動き セクシーでたまらない

ドストエフスキーの罪と罰にインスピレーションを受けてブレッソン自身初のオリジナル脚本な本作。主人公が語る「自分は人と違うから、場合によっては悪徳も許される」(意訳)の恐ろしさよ。自意識は人を蝕む。「他者に触れる努力を怠らず、自己と他者の間を揺蕩いながら、傷つけ合わずに確信を掴むことを諦めない」でなければ、自己満足な選民意識は、人生をおかしな方向に向かわせてしまうと思う。

後半は鮮やかなチームプレーも楽しめます

誤った道を選んでしまった魂が何処に帰着するのかは76分間の旅の果てにあります。

三浦哲哉さんの解説と深田晃司さんのエッセイが嬉しい

個人的には終始めちゃくちゃぶち上がり。
良い映画体験でした。



それでは!また!天国飯で会おう!

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