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ピグルウィグルおばさん

さて。ここからしばらく思い入れの深い海外児童文学を1作ずつ取り上げてみたいと思います。
最初はどれにするか迷ったのですが、再読回数No.1、今でも時々読むこの作品。
『ピグルウィグルおばさん』(新しい世界の童話シリーズ)。

↑は復刻版です。私が持っているのは見出し画像の表紙の方ですが、挿絵が変わらず赤坂三好さんなのが嬉しい!
とある町に住むこの変わった名前の女性。ピグルウィグルさんは子供たちから慕われ、そのお母さんたちからも信頼されています。なにより困った性質の子供を持つ悩めるお母さんの大きな味方。ピグルウィグルさんに電話して相談すれば、どんな困ったちゃんも素敵ないい子になるのです。
ピグルウィグルおばさんは時に魔法を使ったり秘薬を使ったりしますが、基本的には子供本人にとことんまで好きなようにやらせるという方法で子供たちを改心させていくんですが、それがまぁやりすぎ感満載で面白い!
例えば、遊び食べをして度が過ぎた少食になっている男の子のお母さんには、本人がちまちま食べるのが好きなんだから、と、どんどん小さくなる食器セットを使わせます。最終的にはドールハウスサイズのセットになりますが本人はご満悦。日に日に青白くなる息子に気が気でないお母さんですが、そこはピグルウィグルおばさんの腕の見せ所。男の子がしっかりご飯を食べたくなるような最後の一押しをしかけます。
お風呂がきらいな女の子には笑っちゃうぐらいの荒療治。お母さんにお風呂に入りなさい注意するのを一切やめさせ、汚いまま過ごさせます。いい具合に汚れてきた女の子が寝ている間に、女の子にカイワレの種をまいて……。
もうこれだけで笑っちゃいますよね。
散らかしやの男の子には部屋から出られなくなるまで散らかし放題にさせたり、けちんぼの男の子は持ち物全部に男の子の名前と触るな!という警告を書かせたり、夜更かし兄弟も毎日好きなだけ夜更かしさせたり。

ここまで書くと大人の皆さまにはもうピグルウィグルさんの手の内がお分かりになったと思います。
楽しいことにしか目がいかず、親の小言を聞き流す子供たちに失敗させることで反省させるという至極真っ当なやり方なんですが、ピグルウィグルさんは行きつくところまでとことんやらせる、という親にはちょっとやりにくい方法をお母さん方に指南するのです。
親でなくても分別のある大人なら、そんな風にやらせたら子供がどんな窮状に陥るかわかるからその手前でやめさせようとするものですよね。でも子供はそんなのどこ吹く風で、やってみなきゃわかんないじゃーん、ぼくだったらきっと平気だよー、なんて能天気なものです。やったー、自由だー!てなもんです。
私は子供はいませんが、雑に育った昭和の元子供として断言します。
“今”楽しければ後がどうなるかなんて確実に考えてないし、やるなと言われたことは大体やるし、危ないことはむしろ率先してやるし、子供だけでコソコソしているときは大抵ろくな事はしていません!!
痛い思いをしたり本当に困ったり、死ぬほどド叱られるまで止めません!
身に沁みないと大したことじゃないと思って改めないのが子供ってものです。こうしたらああなるって想像して行動を決められるようになったのはいつごろからでしょうねぇ。性格もあると思いますが、取り合えずやっちゃえ精神で生きていた気がします。で、なんかやらかしては、やべー、叱られる、です。
そんな子供でしたからこのピグルウィグルおばさんに出てくる子供たちに親近感を覚えまくりです。ひゃーここまでやるか!と思いながらも面白くて笑いながら読んだこの本。

再読率No.1なのは、この子供たちの身に覚えのあるやらかし具合がたまらなく可愛くて面白いからです。
続編の『ピグルウィグルおばさんの農場』も面白いですが、こちらはファンタジー要素強めなので私は1作目の『ピグルウィグルおばさん』の方が好きです。

連作短編集ですので読み聞かせにもおすすめな1冊です!


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