【読了:2】阿部謹也著『自分のなかに歴史をよむ』(ちくま文庫)
1)手にした動機
もともと再読するつもりで文庫本を買っていたのだが、積ん読のままだった。先日、Twitterで、「この本を読んだ感想を聞かせてほしい」というDMをいただいたのを機に再読した次第です。
2)簡単なデータ
・初出:1988年、ちくまプリマーブックスとして。
・文庫化:2007年、ちくま文庫として。
・著者:阿部謹也(1935年~2006年)
3)読書メーターへの投稿
初出は「ちくまプリマーブックス」という中高生向けのシリーズ。それ以来の再読であるが、読めてよかった。「内なる小宇宙」と「外なる大宇宙」との分別が、キリスト教化によって一元化されていく過程で「賤視」が発生したという。また、歴史を理解するには、自分のなかの共通点を見出すことであり、自分が変わることであることを強調されている。社会史「ブーム」は去ってしまったようだが、今も読まれる価値があるのではないか。
4)主な内容
①ヨーロッパ、特に中世ドイツを主たる研究フィールドしている筆者の、基本的な研究姿勢と理念とが明らかにされている著作で、これが中高生向けのシリーズであるとは、筑摩書房さんもずいぶんと「攻めて」いたんだなあと思います(その志しは、ちくまプリマー新書に流れ込んでいるわけですが)。
②基本的には、日本と中世ドイツ、文化と文明等を軸として、自分のなかに堆積している「歴史」をていねいに解きほぐし、それを理解することを通じて、自分自身を「変える」ことをめざして研究されていたんだなあち感じました。
5)気になったフレーズ
①「それでいったい何がわかったというのですか」。
②ただ私は自分が知りたいことを自分で知ろうとしたにすぎないのです。
③ヨーロッパの何がどのように明らかになったときに、私たちはヨーロッパを理解したことになるのか(略)。
④日本とヨーロッパの歴史の違いの根源には、人間と人間の関係の結び方の違いがあるらしい(略)。
⑤ひとつの社会における人間と人間の関係のあり方の原点と、その変化が明らかになったなったときに、その社会が分かったことになるのではないか(略)。
⑥日本は文化としては十分に成熟した国ですが、文明としての特質はいまだきわめて不十分な形でしかもっていないのです。
⑦自分にとって歴史は自分の内面に対応する何かであって、自分の内奥と呼応しない歴史を私は理解することができないからです。
6)どんな効用があったか
・自分の中の「違和感」が、学問の萌芽となることが示唆されている。
・ヨーロッパと日本という、2つの異なった文化・文明間において、相互の理解は困難であるが、可能であること、また、その可能性が示されている。
7)どんな人にオススメしたいか
・歴史は「暗記科目」だと思っている人たち、かな。
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今回は以上とさせていただきます。お読みくださり、ありがとうございました。ではまた!
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