読書:意外に多かった、両者の一致点
『ザ・議論』 井上達夫・小林よしのり 2016年11月刊、毎日新聞出版(株)
『リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムのことは嫌いにならないでください』の井上達夫氏と、『ゴーマニズム宣言』の小林よしのり氏が対論に臨んだ。読了後の印象は、「この2人、論敵同士ではなかったのか?」というくらいに一致点が多かった。
対論は「天皇制」から始まり、過日の「お気持ち」発言、昭和天皇の戦争責任、従軍慰安婦の問題、近隣諸国との関係、沖縄の基地問題等々、広範囲に及んでいる。
白眉は、アメリカとの関係と共に論ぜられた、井上氏から提示のあった憲法第9条「削除」論であろう。条文の削除、装備は憲法ではなくて法律で拘束する、そして、「徴兵制」を施行するなど、多くの論点を提供してくれている。
樋口陽一氏も、「第9条の精神を完徹するなら、徴兵制は避けて通れない」と延べているが、この2人の論は交わることはないだろう。
「保守」「リベラル」ともに存立基盤がグダグダになってしまい、お互いをディスっているのが現状であるが、こうした「開かれた対話」にこそ希望をつなぎたい。
最後に井上氏の一言から。「私が考えるリベラリズムの基本は、他者に対するフェアネス(公正さ)です」。
サイト「読書メーター」にUpしたのは、以下のとおりです。
知名度においては、圧倒的な優位を誇る「ゴー宣」よしりんと、「リベリベ」井上達夫が禁断の激突!と思いきや、意外に一致点が多かった。結局、「保守」も「リベラル」も、寄って立つ基盤がグダグダになっており、井上の言っていた「私が考えるリベラリズムの基本は、他者に対する(フェアネス)です」が、ほとんど唯一の言明であったように思う。扱った問題は多岐に亘る。「保守」「サヨク」のレッテル貼りによる互いの貶めが、いかにくだらないことかがわかった。
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