ベストセラー『任せるコツ』タイトル徹底分析! タイトルに必要なのは、分析
「10万部突破」の金の丸い箔押しに目が行き即購入してしまったビジネス書
『任せるコツ』(山本渉著)。
著者は山本渉さんという方で、現在は国内最大手マーケティング会社の統括ディレクターを務めています。本書は現役バリバリの方が書いた、マネジャー向けの本です。
仕事をどんどん部下にふり、部下の成長を促し、マネジャーは空いた時間で
新規事業のアイデアや、プロジェクトの効率をどう上げるかなどを考え、
チームを強くするといい、ということが本書に書かれています。
キーワードは「正しい丸投げ」。
今の時代、「丸投は悪」と捉えられることがよくありますが、「正しい丸投げ」をすれば、部下の成長も、チームの効率もアップしますよ、というのが本書です。
本の要約はほかのサイトがやっているし、これ以上書いてしまうとネタバレにもつながるので、内容についてはこのあたりにしたいと思います。
とても勉強になる本ですので、ぜひ気になった方は書店さんでご覧ください。
今回はこの本のタイトルを分析してみたいと思います。
①『任せるコツ』は覚えやすい
5文字でカバーのど真ん中に置かれているタイトルが非常に目を引きます。
短いタイトルなので、覚えやすくもあります。
以前書店でアルバイトしていた時、お客様から
「ブランチみた? 紹介されてた本ちょうだい」
と言われたことがあります。
心の中で
(いや、今働いているんだから、テレビみれないの、わかってくださいよ)
と思いながら、
「タイトルはわかりますか?」と質問したところ、「いやー長すぎて覚えてない、またくるわ」と言われました。
そうなんです。ちょっと文字数が多いともう、覚えてもらえないんですよ。
そういう意味でタイトルが短いというのは一つの武器です。
⓶「任せる」というワードのパンチ力をチェック!
「任せる」はAmazonで9点しか出ていない!
Amazonで「任せる」で検索すると、ヒットするタイトル(ビジネス書)はここ10年で9銘柄。「話し方」とか「営業術」などで検索するよりもずっと少ないです(これらのワードで検索すると恐ろしい数の類書がヒットします)。
マネジャーに重要なスキルの「任せる」というスキル。
ただし、本としては、1on1、マネジメント、会議、チームなどのテーマが先行しており、このワードを使った本は、少ないようです。
類書が少ないということで、かんがえられる可能性は2つあります。
ジャンルにニーズがないか、タイトルワードにパンチがないか、です。
しかし、本当に「任せる」という言葉にパンチはないのでしょうか?
「任せる」という言葉がついたタイトルは2018年くらいから、ちょこちょこでており、おそらく時代が「優しいマネジメント」にシフトしてきたので、部下を信頼してまかせる、裁量をもたせるということがトレンドになりだしたのだと推定できます。
また類書をみると、
『任せるリーダーが実践している 1on1の技術』
『管理しない校長が、すごい学校組織をつくる! 「任せる」マネジメント』
『任せる社長ほど会社はうまくいく 忙しい経営者は社長失格』
『社員に任せるから会社は進化する 日本版「ティール組織」で黒字になる経営の仕組み』
とあり、少し長いタイトルのものが多い印象です。
デザイン上「任せる」にフォーカスできないのかな、と思います。
類書を見ただけでは、「任せる」にパワーがあるのか、ないのかは判然としません。
③定量調査からみる「任せる」の強さ
ワールドワイドに展開している人材サービスのグローバルカンパニー・マンパワーグループの調査では、部下を持つ20代~50代の管理職の男女400名を対象に、部下の指導方法に関する悩みや心がけていることについての調査を実施※。
(出典:「管理職の9割超が「部下に仕事を任せられない」と感じた経験あり。実践している部下の指導方法とは?」URL:https://www.manpowergroup.jp/client/jinji/210816.html)
※調査時期:2021年6月 有効回答:20~59歳の部下を持つ会社員または団体職員 400人
この調査では回答者の9割が、「部下に仕事を任せられない」と感じた経験ありとでています。
上位の理由は、
・報告・連絡・相談をしない時 37.3%
・期日を守らないなど責任感がないと感じる時 31.3%
・仕事への意欲を感じられない時 23.3%
となっています。
こういうシーンは私もよく見てきた光景ですし、マネジャーにとっては死活問題なんだということがよくわかります。
類書は少ないかもしれないけれど、「任せる」というテーマにニーズは確実にあるのが見て取れます。
そして、シンプルでパンチのある言葉であるとともに、定量調査からもニーズがあることが判明しているので、本タイトルは「任せる」という言葉に大きくフォーカスしたのではないかと考えられます。
また、マネジャーやリーダー向けの本にはさきほど紹介した、1on1、マネジメント、会議、チームなどのキーワードがちりばめられることが多いですが、本書にはそういったワードがついていません。
上記のワードは「どんなことが書いてあるか想像できる」ワードではありますが、どことなく、小難しい雰囲気もあります。
そういった単語を使わず、シンプルなワードで固めているところに本書の強さがあるのかなと思いました。
④帯の大きいキャッチはインサイトワード
「自分でやったほうが早い」というワードは「」でくくられていることから
「マネジャーが共感するワードなのかな?」と思いました。
ちなみにこのキャッチでぐぐってみると、一番最初に、ダイヤモンドオンライン
「「自分がやったほうが早い」と思ったとき、超優秀なリーダーなら何をする?」というタイトルの記事がヒットしました。
▼記事はこちら
大手メディアの記事タイトルになるものなので、おそらく多くのマネジャーが考えている悩み事なのかと推察できます。
このキャッチがタイトルよりも大きいサイズでふされていることからも
読者の心につよく訴えようとしていることがわかります。
普段マネジャーは口にすることは少ないかもしれませんが、心の奥底にあるインサイトをえぐっているキャッチです。
⑤タイトルに感じる分析力
このタイトルは分析力により作られたものなのかもしれないと思いました。
つまり、マーケットイン。
任せるというワードは類書は少ないけれど、シンプルで強いワード。
そして、ニーズもある。
また、帯のキャッチは定性・定量データなどは出てこないものの、各WEBメディアのタイトルになっている言葉であることがわかります。
タイトルになるということは、アテンションを集めるワードであるということの証。その帯のワードにインパクトを与え、タイトルよりも訴求されることで、より読者に迫ってきます。
よくタイトルは編集者の才能だと思われることがあります。
確かにタイトル力をもった天才はいます。
ただ、私のような凡人の場合は、分析力と努力がないとくっていけません。
私のような凡人でもヒットを出すには、ベストセラーに隠された成功の秘密を分析することをしなくてはならないのです(合ってることも間違っていることもありますが)。
いつもベストセラーを見たときに①から④の観点を調べています。
もしお役にたてるようであれば、うれしいです。