ご報告・28歳、潰瘍性大腸炎になって見えた世界 『食べることと出すこと』(頭木弘樹)(後編)
こんにちは、BOOK CLUBのミウラです。
今回紹介したのは、「潰瘍性大腸炎」患者である頭木さんの闘病エッセー。
Podcast・BOOK CLUB、今回の配信はこちらから。
収録中でお話ししたように、私、ミウラは1月に「潰瘍性大腸炎」の診断を受けました。
発症してから療養に入ってからの症状が重く、そこからなかなか更新ボタンが押せず、1ヶ月経ってしまいました。
更新を楽しみにしてくださった皆様、申し訳ありませんでした。
今回は前回の記事に引き続いて、鳥取と東京を股にかけた私の闘病記(スタート編)をお送りします。
どなたかの役に立ちますように。
2月、東京で気分転換できるはず…?
まさかの症状悪化
東京の実家でリラックスしながら、治療していけば寛解導入されるはず。
久しぶりに演劇を観たり、友達に会ったり、本屋に出かけたりしながら、過ごしていました。
(と言ってもよっぽど心残りがあったのか、2週間くらい職場で働く夢を見続けました。)
が、次第にトイレの回数が1日5,6回以上に増え、腹痛も強くなっていく一方。
下痢や血の混じった便も日常茶飯事。
そこで改めて東京で病院に行くと
と言われます。
治療のために使っているはずの薬のせいで症状が悪化?
本末転倒のようですが、きちんと副作用に明記されています。
そこで提案されたのは、3日間の休薬をして、新しい薬の可能性を探ること。
すると、腹痛は治り、やはりリアルダの影響だったとわかりました。
原因がわかったところで希望が少し見えました。
レクタブルを使い始めるが…
そこから、レクタブルという注腸剤を使い始めます。
スプレーでフォームをお尻から入れるんですが、この写真を見た時爆笑。
しかし、立ちながら薬を入れられるのは、すごい楽なんです。
寝ながら、液体を入れる座薬もあるなかで、泡で出てくるレクタブルは超優秀。
慣れてくるとサッとできるようになりました。
が、症状は完全に落ち着いたわけでもなく、微妙な状態。
改めて病院に行くと
と告げられます。
寛解の導入に5ASA製剤が効果を発揮しなかった場合、その次に取られるのが免疫を調整するステロイドになるのです。一回、ステロイドを投与すると、人によってはすぐ症状が落ち着くことも。
ですが、経口のステロイドにはさまざまな副作用があり、脱薬も2,3ヶ月くらいの期間を使って徐々に行われることになります。
と、ステロイドについての説明を資料を使いながら丁寧にし始めた先生が、手を止めて私にこう言いました。
と告げられたのは、2月の半ば。
先週抱いた希望が消えた瞬間でした。
ステロイド投薬に向けて、必死に鳥取便に乗る
と言いつつ、友人と会う約束をしていたりで、なんとなく帰りづらかった私はそこから1週間レクタブルで粘ることになってしまいます。
中国に行く前のシャンシャンを見に行ったり(急な展開)したのですが、並んでいる間もお腹の調子は絶妙。とりあえずトイレがどこにあるか探すような状態になっていて、これは東京滞在も楽しめない体になっていました。
(それでもパンダはかわいい!!!!すごい!)
ただ、薬の治療を考えたり、住民票のある場所で難病申請をする必要があることなど、丁寧な説明を受けた私は、周りの東京の友人が「東京にいれば?」というのを振り切って、帰る決意は固めました。
そして、2月の最後の週末に鳥取便に再び乗りました。
その頃には、腹痛は当たり前。今思えばお腹からずっと出血してるような状態。
レクタブルのフォームが効いている間は耐えられても、そのあとはトイレに駆け込み続けるような状態でした。(と言ってトイレに行ってもすぐに便が出るとも限らないくらいにはひどくなっていました。)
飛行機も普段なら窓側の席に座る私も、さすがに通路側の座席。
にしたにも関わらず、結局トイレを占有するのが申し訳なさすぎて、駆け込めず、鳥取の家に帰った瞬間に駆け込む羽目になりました。
3月、ただいま鳥取。一人暮らし療養中。
帰ってすぐに病院へ。
ステロイドを飲み始めました。まず最初は、1日あたり30gです。
こんなに小さな錠剤なのに、飲んですぐ腹痛が落ち着きました。そこから段々と便の調子も落ち着いて来ています。
と思ったら、少し下痢っぽくなったり、腹痛に襲われたりすることもあります。
段々と幅は小さくなっていますが、波があるのです。
あと、副作用のおかげなのか、全く花粉症の症状が出ません。
嬉しい反面、「それだけ効いてるのか」と免疫が抑制されていることを実感。一人、コロナ禍のごとき感染症対策をとっています。
その上、「膵臓の炎症の数値が高いですね。潰瘍性大腸炎の影響かもしれません。」と宣告されるなど新たな不安もやってきます。
不安のジェットコースター。
風邪とかとは違うんだ。私は一生これと付き合うんだ。
今の私の心境です。
きちんと休めばどうにかなる、ではない世界。
いろいろな可能性を潰していって、治療法を探す。
病気との向き合い方を考える。
病気と共にある人生を受け入れて進むしかありません。
お腹は思考につながっている
お腹がぐるぐるじゃ、考えられなかったこと
ステロイドを飲んでしばらく経った時、その日はあまりお腹も痛くなく、ゴロゴロいうこともなく、調子がまずまず良い日でした。
そうやってぼーっとしているうちに、それまで靄がかかっていたことが急に考えられるようになった日がありました。
「腸は第二の脳」なのかもしれない。
私はずっとお腹の中に抱えていたモヤモヤに、身体的にも精神的にも向き合っていたのです。
2022年は私にとってずっと靄がかかっていた1年でした。
将来どうするの?
そのやり方でいいの?
本当にやりたい学びは?
などとずっと自問自答していました。
周りの人にも、そのぐるぐるした思考が伝わって、やきもきさせました。
と言われても、もう進むだけの体力も気力もなかったわけです。
それがお腹が少し落ち着いた瞬間に、まだ人生に希望はあるかもしれないと将来を考え始めました。
そんな風に少しずつ頭が回り出した時、「これ、症状落ち着いてきたんじゃない?」とやっと思えました。
これからの私
もし無事にステロイドで寛解導入できた場合には、私は「寛解維持」をするための常備薬を探すことになります。
リアルダ以外の5ASA製剤になるのか、免疫調整剤になるのかわかりません。
また副作用が出て合う薬が見つかるまで苦労する羽目になるかもしれません。
薬では解決ができず、別の治療になるかもしれません。
それでも、ただ休むだけでなく、少しずつ社会に戻っていく段階に行こうと思います。
完治する病気でないからこそ、うまく病気と付き合うしかないからです。
健康な人は少し理不尽かもしれません。
周りの人からは、「治るまで休んでください」とも言われます。
でもそれが完治しない病気ならどうでしょうか?
一緒に生きざるを得ません。付き合い方を模索する必要があります。
他の人からしたら、病気で諦めたり、逆に無理したりしているように見えることもあるかもしれません。
でも、何より、体のことに本当の意味で向き合えるのは、この世界にたった一人私だけ。
ゆっくり休むだけでなく、お腹の調子をそこそこにキープして、私は私の身体に宿っている魂のまま、幸せになってやろう。
だから、結局身の丈にあった健康、幸せ、ライフスタイルを目指すことが1番大事だと思っています。
杖になるような本と出会ったのは
頭木さんの本を読んで良かったことは「病気になって良かったなんてことはない」ということが言えたこと。
病気にならなかった人生の方をやっぱり考えてしまう。
それでいいと先輩が思わせてくれる一冊です。
最新作で、著者・頭木さん、有言実行の『うんこ文学』アンソロジーも出されておりますので、ぜひ読んでみてください。
この『食べることと出すこと』を手に取ったのは、内視鏡検査を終えた週末に寄ったとある鳥取の本屋さん。
隼Labにあるポトラという新しい本屋です。
母親と2人で、「これ探してたよね」とこの本を手に取りました。
「白いゴリラがトイレでリンゴを食べている」というインパクトのある表紙のおかげで、この本が「潰瘍性大腸炎」に関わる本だと覚えていたからです。
この本のおかげで、少し私はひとりでないと思えました。
自分の病気との向き合い方を先輩に教えてもらったような。
本を読むことは、困難に立ち向かう時の支えになる杖になるような瞬間があります。
私も、皆さんの杖になるような本をこれからも紹介していこうと思います。
それが顔も知らない、ただすれ違うだけのあなただったとしても。
追伸:皆さん、お腹の調子をバカにせず、整えて生きていってください。頭がスッキリするはずです。
ちなみに、潰瘍性大腸炎の漢字を手書きで何も見ずに書けるようになるまで、3ヶ月かかりました。
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