【本119】『むかえびと』
著者:藤岡陽子 出版社:実業之日本社文庫
主人公の助産師・美歩が命に向かって奮闘する物語。飛び込み出産、産婦の緊急搬送、出生前検査の悩みなど、いろんなケースを前にしてベテラン看護師や佐野医師たちと一生懸命頑張る姿に心が打たれます。経営陣には全く恵まれないし、後輩看護師の妊娠・流産事件に翻弄されるけれど、美歩は命を一番最初に迎える「むかえびと」として成長をしていきます。
「母親の中に生涯残るものを、子供は必ず置いていく。命を宿すということは、そういうことだとおれは思う。(略)一度母親になった人には何かが与えられるんだ。」
命が生まれても生まれなくても、育っても育たなくても...きっと、リアルな助産師の現場でも、命の決断に直面する日々なんだと思います。選ばれる命、そうではない命、生を続ける命、途絶える命。「むかえびと」としての尊い仕事に心からエールを送りたくなる小説です。