「川のほとりに立つ者は」 寺地はるな
清瀬は店長として働くカフェで我儘な客、困った同僚に振り回されながら、忙しい日々を送っていた。
そんな中、長らく会っていなかった恋人松木が意識不明の重体との連絡が入る。
一方、松木と一緒に倒れていた男性の恋人だという「まお」には、なんだか得体の知れないものを感じていて…。
というストーリーで、主人公の清瀬が恋人のことを知っていく過程で、徐々になぜこんなことが起こったのかが明らかになっていく。
時折、元々松木のもので、清瀬が読んでいる本の文章とリンクしていくのもいい。
読んでいて、「まお」の存在がぞわっとさせる。
だけど、私が一番気になる思うのも彼女だった。
なんだか痛くて、切なくて、一生懸命だ。
誰かのことを理解することは簡単なことではない。
誰かを救うことで、自分が救われようとするのは、相手を傷つけることもあるし、傲慢で恥ずかしいことだろう。
それでも誰かの行動の背景を想像しようとすることは必要なことだ。
自分が何の役にも立てなかったとしても、その人を笑顔にできるのが自分とは別の人であったとしても、その人の明日がよい日になりますようにと祈れる人になりたい。
そう感じるような作品でした。
私はNetGalleryで読みました。
追記:
読んだ後に録画していたNHKの「100分de名著 フェミニズムスペシャル」を見ていたら、「心的外傷と回復」という本の内容と「月のほとりに立つ者は」と共通するところを感じて、登場人物達に思いをはせて、よりしみじみした気持ちになった。暗闇の中にも希望がある。