小説家はアンドロイドの夢を見るか?(読書記録14)
■牧場で見て来た羊は電気羊じゃないか
今回の読書記録は『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(フィリップ・K・ディック著)です。
この本を読んでいるときに、牧場へ行く機会がありまして、「おお、電気羊だ!(電気羊じゃない)」となりました。
子どもが餌をあげたいというので餌を買ったら、「やっぱり怖い」となったので、私が手ずからあげました。後で周りをよく見たらみんなスコップを使ってあげてました……。気づいたのは手が羊の涎まみれになった後。
ちなみに慣れたのか、子どもも無事餌をあげました。スコップで。
小説の主人公のリックが現実の牧場に来たら卒倒するんだろうなあ、とか思いながら羊を愛でていました。後は電気羊の精度ってどれくらい現実の羊に近いのかなとか。
最近私が書くものにも、アンドロイドやそれに似た設定の小説が多かったのもこの小説の影響だったりします。
■登場人物
リック・デッカード 主人公。警察に所属する賞金稼ぎ(バウンティハンター)。上司に命じられて、前任のデイヴ・ホールデンが取り逃がしたアンドロイド6人を狩ることになる。自宅で電気羊を飼っているが、本物の動物を懸賞金で購入しようと考える。物語の後半でアンドロイドを殺すことに迷いを生じることになる。
レイチェル・ローゼン 最新型アンドロイド、ネクサス6型を開発したローゼン協会の一員。リックのネクサス6型討伐の助力を申し出る。彼女の存在がリックの精神に大きな揺さぶりをかけることになる。
ジョン・イジドア 国連が課したテストに合格できなかった人類・遺伝上の落伍者”特殊(スペシャル)”である一人。知能が低く、作中しばしばピンボケと呼ばれるが、リックのアンドロイド討伐に、イジドアの存在が関わっていくことになる。
プリス・ストラットン イジドアの住む廃墟に住み着くようになった謎多き美女。初対面でイジドアに自分はレイチェル・ローゼンだと名乗るが……?
ウィルバー・マーサー マーサー教という地球で信じられている宗教の中心になる人物。共感ボックスで山を登る老人の姿として認識される。マーサーの存在がリックの後半の心の在り方に大きく影響していく。
バスター・フレンドリー テレビのコメディアン。24時間365日、新しい話題を視聴者に提供し続ける男。物語後半でウィルバー・マーサーを否定し、マーサー教を根底から揺るがす。
■ストーリー
賞金稼ぎ(バウンティハンター)のリック・デッカードは電気羊ではなく、本物の動物を手に入れるため、前任のデイヴ・ホールデンがしくじった6人のアンドロイドを始末することになる。
アンドロイドの見分け方に使用しているカンプフ検査法が最新型のネクサス6型に通用するか確認するため、開発元であるローゼン協会を訪れる。
一方のイジドアは新たな住人プリス・ストラットンに惹かれていくことになるが、本物の猫を電気動物だと勘違いして死なせるという仕事上のミスを犯す。
リックは逃げ回るだけでなく自分に向かってくるネクサス6型を相手にし、その中で同じバウンティハンターのフィル・レッシュと出会い、彼やレイチェル・ローゼンとの交流がリックのアンドロイドへの意識を変えていくことになる。
ウィルバー・マーサーの教えは真実なのか、それともバスター・フレンドリーが暴いたように偽りなのか。リックやイジドアは精神を揺さぶられる。
6人のアンドロイドを斃した後、リックに待ち受ける運命は――。
■小説家はアンドロイドの夢を見るか?
この作品で最も魅せられた登場人物はレイチェル・ローゼンでした。彼女の助力なくしてネクサス6型を狩ることはできない、とリックが考えを改めたように、レイチェルとの交流が中途半端なものであったなら、リックはある1体のアンドロイドを倒すことができずに死んでいたかもしれません。
レイチェルのような魅力的な登場人物が書けるようになりたいものです。
電気動物、という設定が関わってくる塩梅も絶妙です。物語の柱はアンドロイド狩りにあるように見せつつ、リックの精神の柱には本物の生物への渇望がある。それが満たされるのかは、ぜひご一読して確かめていただければ。
きっと私はまたアンドロイドなどが登場する小説を書くでしょう。夢にも見るかもしれません。
ですが、アンドロイドや電気羊は架空のものだと思いますか?
あなたの隣にいる人が、ひょっとしたらアンドロイドだったり、愛犬が電気動物だったりするかもしれません。
そうでない保証など、どこにもないのです。
それは私の夢でしょうか。それとも、近い未来の現実でしょうか?
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