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創作大賞感想

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烏滸がましくも感想文を書かせて頂きました。
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創作大賞感想【骨皮筋衛門&ドシャえもん/はそやm】

創作大賞感想【骨皮筋衛門&ドシャえもん/はそやm】

子供達がゲラゲラ笑い転げる様子が目に浮かぶ。

この場合の子供達というのが、令和の子供達を指すのかはわからないが、少なくとも私の子供時代なら夢中になって回し読みをしてみんなでゲラゲラ笑っているなと思った。

厳密に言えばそれさえも私に子供心が本当に残っているのかどうか怪しい今となっては確かめるすべもない。

しかし、著者であるはそやm(「はそやん」と発音すると認知している)さんは、ひょっとして赤塚

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創作大賞感想【グラニュレーション/さくらゆき】

創作大賞感想【グラニュレーション/さくらゆき】

まるでギャラリーの濃厚で贅沢な静けさに身をゆだねている感覚。

あの独特の空気感が漂う作品だと思った。

水彩画家の荷堂愛佳とギャラリーのスタッフ・真中龍史。どちらも「まなか」という共通点。運命のいたずら。

穏やかな筆致で紡がれるピュアなラブストーリーなのだが、読んでいて呼吸がうまく出来なくなるほど切ない描写もある。二人の抱える深刻な心の傷、闇、あるいはトラウマと言ってもいいだろう。それが大きな

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創作大賞感想【ラプソディ・イン・ブルー/いぬいゆうた】

創作大賞感想【ラプソディ・イン・ブルー/いぬいゆうた】

「カメラを止めるな」

 作中にこんなセリフは出てこない。出てこないのに、読み終えた後、無性にそんなセリフが云いたくなってしまった。
 もちろん作中のセリフも然り。十秒のことを「とうびょう」と言いたくなったし「掛け合いチェックお願いします」や「CMいって」など一人報道番組(作中の架空の番組『なまら早起きワイド』通称『なまはや』)ごっこをしたくなってしまうのである。

 なぜなら本作がニュース番組の

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創作大賞感想【北風のリュート/deko】

創作大賞感想【北風のリュート/deko】

「空を見上げている」

 視線をスマホやPCに向けていながらいつも空を見上げる自分を思い描いている。そんな物語だった。

 見知らぬ土地の見知らぬ空の小さな異変を皮切りに、まるで夏空の入道雲のように、町から県、県から国、国から世界へと恐怖と問題が巨大化していく。

 問題を解決するのは主に、身なりに無頓着で天才肌の気象研究官・流斗、実直な好青年の戦闘機パイロット・迅、そして特別な力を持った内気な女

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創作大賞感想【花畑お悩み相談所/穂音】

創作大賞感想【花畑お悩み相談所/穂音】

「あ、位相がズレた」

 そう思った時からもうこの物語から逃れられない予感がした。
「そこのスイッチ押してきやがったか」というぞくぞくする感覚。 

 第一話、誰もが知っているであろう童話が少し内容を変えられて提示される。実はもうここから位相のズレが始まっている。
 その童話たち(改作童話は複数ある)が主人公のもとへメールとして届くのだ。送り主は意識不明の孫。

 昏睡状態にある孫からの、届くはず

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