凛々しく・かわいい弥生人の顔
弥生時代を生きた人たちはどんな顔をしていたのだろうー。出土した人骨を基に復元した弥生人のそっくりさんを決めるコンテストが最近鳥取市で開かれ話題となったが、では実際の装飾や表情はどんな風だったのか? 下関市立考古博物館(山口県下関市)では「発掘された山口ー山口県埋蔵文化財センター巡回展」に合わせた展示で、2人の「弥生人の顔」を紹介している。
1人目は、考古博物館周辺の綾羅木郷台地遺跡から1988年に出土した「人面土製品」(県指定文化財)。全長9㌢、直径4㌢、重さ270㌘の棒状で、上端部に人の頭と顔の造形がある。注目すべきは両頬に見られる弧状の線刻で、これはイレズミを表現しているらしい。
中国の「魏志倭人伝」にも、「倭人の男子は皆イレズミをしている」との記述があり、当時そうした風習があったようだ。人面土製品の男性の凛々しい表情からは、ムラの暮らしを守り抜く気概のようなものが伝わってくる。
もう1人は、田布施町の明地遺跡から1993年に出土した「分銅形土製品」(同)。江戸時代のはかりに使った分銅の形に似ていることから名付けられた。長さ22㌢、幅16㌢、厚さ3㌢、重さ870㌘の板状で、細い粘土紐を貼り付けて眉や鼻を作っている。
一番の特徴は笑っていることで、この土製品は出産にかかわる護符かケガレや災いをはらう形代のようなものらしい。こちらの顔はイレズミ表現がないことから女性か子どもとみられ、ニッコリとした表情がとてもかわいらしい。
この「お二人」に出会って、遠い存在に感じていた弥生人が確かに私たちの祖先であること、現代人と同じように豊かな表情で暮らしていたことを実感し、親しみが湧いてきた。
同行した小学生の子どもは、笑っている分銅形土製品を見て「わぁかわいい! これはきっと子どもだね」と、目を輝かせながら自分なりに解釈していた。
専門用語ばかりの文章ではとっつきにくい日本史の学習も、今回のような展示は自然に「歴史」が伝わってくる。2千年の時を超えて現れた「二人の弥生人」。いにしえの世界に誘うナビゲーター役のように思えた。
※「発掘された山口ー山口県埋蔵文化財センター巡回展」は、下関市立考古博物館(同市綾羅木)で7月3日まで。入館無料。