騙し、騙され -その12 ケニア・赤道直下編-
前回までのあらすじ
いよいよ宿敵との決戦の地「巌流島」を前にするが、気持ちを落ち着けるために戒光にもらった白い粉(クリープ)に手を出してしまう。甘い香りと恍惚とするあの感覚を忘れられず決戦を忘れ今日もまた手を出す。そんなわんぱく二刀流ペッタちゃんのお話だよ。
-ケニア・赤道直下編-
海外旅行の当初の目的は、とにかくでかい物が見たい、異文化を見たいという欲求。
親せきに譲ってもらった、Nikonの古いマニュアルカメラが旅の相棒。
これで満足していた。
しかし、人間とは欲でできた生き物である。
やがて、良いカメラを買って海外の風景を写真に収めたいと考えるようになる。
そして、何を血迷ったか最新機種、かつ結構ハイスぺな一眼レフなどを買ってしまうのだ。
そうなると、
「どこかに行きたい」
ではなくなる
「これで何かを撮りたい」
目的と手段の逆転である。
カメラを使いたいために旅行に行きたい。
そんな時期の話だ。
私は動物が好きだ。
実家では猫を飼っていたし、今ではタイで鳥を飼っている。
動物園も好きだ。
先日、タイにトラと一緒に写真が撮れるという動物園があるのを知り、触れ合ってきたばかりだ。
日本にいた頃は、上野動物園のサル山の前で時間を忘れて何時間でも過ごすことができた。
そうだ、野生の動物を撮りにいこう。
まるで京都にいくかのような気軽さで思い立ち、たどり着いたのはケニアだ。
たくさんの国立公園、野生動物保護区がある。
動物たちが警戒せずに近寄れるように、大きな水場の周りの木の上にホテルがあったりもする。
昼でも夜でも樹上のテラスから水を飲む動物たちを眺めることができるのだ。
この話をしだすと長くなるので元のテーマに戻ろう。
ケニアのナニュキという街でのことだ。
国立公園が点在しているため、別の公園に向かう途中、ある場所で車が止まる。
地面には線が引かれている。
「Equator」
運転手はそういった。
赤道だ。
動物を撮る事だけに気持ちを奪われてケニアに来たが、ケニアには赤道が通っているのか。
私の地理の知識はこのレベルだ。
いったんそこで車を降りてみる。
車を停めたところには小さな「お土産屋さん」と呼ぶにふさわしいレベルの商店があり、入り口にはカメレオンがいた。
カメレオンを色のついた棒や板の上に置くと、みるみるその色に変わっていく。
こんなに色が変わるとか嘘やん?騙されている?と思ったが、これは本物だった。
道の方から誰かが呼んでいる。
「面白いものをみせてやるよ」
この「お土産屋さん」のスタッフのようだ。
道上に引かれた線、赤道の上に小さな木の枝と水の入ったバケツが置かれている。
水を注ぐも、特に何も起こらない。
赤道をまたいで右の方にバケツを移動する。
「こっちは北半球だ」
水を注ぐと、木の枝が反時計回りに回りだす。
今度は、赤道をまたいで左の方にバケツを移動する。
「こっちは南半球だ」
水を注ぐぐと、今度は木の枝が時計回りに回りだす。
北半球と南半球だから自転の関係で回り方が変わるという。
「おー!すげー!赤道すげー!」
テンションが上がった。
「アフリカすげー!地球丸いー!」
興奮しすぎだ。
横で見ていた同じツアーに参加していた白人男性がぼそっと言った。
「よう坊主、見てみ、これバケツに水を注ぐ時の向きがちゃうから」
じっくり見てみる。
北半球側の時は浮いている枝が反時計回りに回るように端の方から水を注ぎ、
南半球側の時はその反対の端から水を注ぎ、
赤道直下にあるときは真上から水を注いでいる。
そもそも、後になって知った話だが、この赤道の線が引かれている場所、実際の赤道よりもかなりずれているとか。
この時は、まんまと騙されるところだった。
私は、地理と物理が大の苦手だ。
九州には県が9つあると20歳くらいまで信じていたレベルだ。
苦手というより、興味がないことには1ミクロンも興味を持てないのだ。
なので、こんな小学生レベルの実験でも簡単に騙されてしまう。
この白人男性がいなければ、こんなnoteとかに、
「皆さんはご存じだろうか。赤道を少しでも超えたら自転の関係で水が渦を巻く方向まで変わるのですよ」
などと、したり顔で書くイタイ大人になっていたことだろう。
とはいえ、これはお土産屋さんの出し物の一つで、特にお金を要求されるものではなかったので被害はなかった。
カメレオンといい、赤道の存在、北半球・南半球の自転の違いなど、色々と面白く勉強になったのでアトラクション代として、高さ30センチくらいのキリン二頭が首を絡ませている木彫りの人形をこの「お土産屋さん」で買った。
これは、かなり気に入っていて、何度か引っ越しをしたものの捨てられず、今でも実家に置いてある。
まとめ
テンション高いときは騙されやすい
うまい儲け話が転がり込んできてもテンションあげないようにね
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