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『エルピス』と腸内環境と細胞 -希望-

久々に夢中になったテレビドラマ『エルピス』。最終回から10日が経ちましたが、まだまだ折に触れ思い出します。

時間があっという間に過ぎていくのを防ぐために、数年前からテレビをあんまり見なくなって、1年ちょっと前に思い切ってテレビを捨てました。直後にまさかの白血病で病院送りとなり、看病のために田舎から出てきて一人暮らしの我が家に住んでくれた母の強い要望でテレビを再購入。

退院して半年間というもの、四六時中バラエティ番組ばっかり見てガハハと笑っては免疫細胞を元気づけていたのですが、久々にテレビドラマをがっつりしっかり観たのが『エルピス』でした。自らテレビ局の恥部を曝すようなドラマを放映できるなんて、権力の闇に突っ込んでいけるなんて、テレビもまだまだ捨てたもんじゃないなと思いました。

『エルピス』のドラマ的考察や映像的考察はたくさんの方がしてくださっているし、プロデューサーの佐野亜裕美さんや脚本の渡辺あやさん、監督を務めた大根仁さんのインタビューを読むと『エルピス』の意図や背景が見えてきます。

しかし、私個人的に心に残っているのは腸内環境細胞の件です。腸内環境については上記の佐野さんのインタビューにも出ていたし、最終回で恵那も拓郎に説明していたので、作品的にも大切なメッセージだったのだなぁと今思いました。

善玉菌悪玉菌日和見菌、腸内には大きく分けるとこの3種類の菌たちがいるわけですが、さらに細かく見ていくと、その中には1000種類100〜500兆個の細菌たちが生態系を作っているのです。地球の人口よりはるかに多いです。そんな世界を人はそれぞれお腹に持っているんですねえ。

そして悪玉悪玉と完全に悪党のように呼ばれている悪玉菌も、それがいないと肉のタンパク質を分解することができないのです。体調不良を引き起こしたり、悪さをすることもあるけれど悪玉菌は必要なのです。

大事なのはそのバランス多様性善玉菌20%、悪玉菌10%、日和見菌70%。そのバランスが一番均衡がとれた状態なのです。ついでに言うと善玉菌の中にも怠け者はいるし、悪玉菌や日和見菌の中にも人体にとっていい働きをしてくれる菌もいます。勝手に悪玉とか言わないでほしいです(誰の立場?)。いや、悪玉と言われるより「日和見」と言われる方が嫌かもしれません。自分の信念が無いような響きですから。そして菌の種類の多様性も重要だと言われてます。

腸内の世界って人間の世界みたいで面白い。全てはフラクタルだと言うので、腸内環境と人間世界が同じ構造をしているのはなんの不思議でもないのかもしれません。

もはや自分でも何が言いたいのか分からなくなってきましたが、簡単にまとめてしまうと「善とか悪とか至極曖昧なものを振りかざして生きるのってナンセンスよね」って言いたいのだと思います。

「みんな違ってみんないい」

金子みすずがそう言ったように、多様性を歓迎して、他人を批判したり非難したりすることに時間を浪費せず、自分の人生の幸せに責任を持つことだけ考えてたら、もう手一杯ではないでしょうか(私は手一杯です)。

『エルピス』でもう一つ心に残っているのは、最終回の斎藤さんのセリフで語られた細胞のお話。

君もそうだし俺もまた、この国という体の小さな細胞のひとつなんだ。膨大な全体に対して1人が1日でできることは限られてる。ひとつひとつやっていくしかないんだ。末期がん患者の免疫細胞だって、きっとそう思いながら毎日仕事をしていると思う。
『エルピス -希望、あるいは災い-』最終回

これは、政治的スキャンダルを暴露しようとする恵那を説き伏せるために、斎藤が放ったセリフで、「この腐った国を良くしたいと言う気持ちはわかるけど、1人でできることは小さくて、積み重ねが必要だから、今は早まらないでほしい」と伝えるための比喩なのですが、これ白血病の私には響きました。

細胞がんばってるねーって。ありがとねーって。

免疫細胞が仕事しやすいように、私は今年もバラエティ番組を観てガハハと笑って体内環境を整えたいと思います。

『エルピス』

パンドラが急いで閉めた筐(壺)の底に残ってたそれは、災いはでなくて、希望だったよ。


P.S. ダウ90000が出ているスピンオフドラマ『8人はテレビを見ない』。これもまた本編と並行していて面白いです。スピンオフ全編と本編初回&最終話は、TVerで1月9日まで無料で見れますよ〜。


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