我が身の事は自分が承知
〔解説〕
あまり知られてはいないが、昔からあることわざに「我が身の事は人に問え」というものがある。「自分で自分のことを客観的に評価するのはなかなかむずかしいから、第三者に訊くのがいい」という教えだ。
また、「自分の欠点や短所などは自分ではわからないことが多いから、自分以外の人に訊くほうがいい」という意味もある。
(注/ここまではパロディーではなく事実。〔さらに解説〕以降は嘘です)
〔さらに解説〕
現代は軽薄な性格やお調子者、嘘つき、利己主義などがまかり通り、「我が身の事は人に問え」などと言ってはいられない。
たとえば、短気でまがままな課長が部下に「おれの人格をどう思う?」などと訊けば、部下は立場の都合上正直に答えることができず、「課長は決断が速くて、意思をまげない実直な人だと思います」などと答えざるを得ないだろう。本心をさらけだして「こんな短気なエゴイストがよく課長になれたものだとあきれています」などとは言えない。
本辞典の発行人は、音楽関連の会社の女性社長から「何歳に見えます?」と問われたことがある。実際の年齢より若く見えることを期待しているのが手に取るようにわかる。
私は安全を期してかなり若く見積もり、「そうですねえ、40歳というところでしょうかねえ」と答えた。それが、なんとずばり的中だった。双方でかなり気まずい思いをしたのであった。
(注/このエピソードは事実)
このようなことから、自分のことを他人に訊いてみるのも何かと問題があることがわかる。他人に訊いてもお世辞を盛り込まれたりして無駄であるということだ。やはり、もっともよくわかっているのは自分なのだ。
そこで、ことわざも現実に合わせたほうがいいということになり、「我が身の事は自分が承知」が新たに登録された。
街頭で「あなたは自分の性格や人格を自身でわかっていますか、他人に訊ねたことがありますか」とインタビューしてみた。
24歳(男)会社員
「自分のことですか? いや~あまり自信ないですよ。高校のときなんか〝人畜無害〟っていうニックネームだったくらいですから。
人に訊いてみたことですか? ありますよ。ええ、よく〝やさしそう〟とか言われますけどね。この間同じ課の女子に〝いっしょにいても安全そう〟なんて言われましたけど、どういう意味なんですかね」
28歳(女)パート
「自分のこと? もちろんよくわかってますよ。あたし、自他ともに認める肉食系なんです。けっこう積極的なんですよ。なんでもガンガン攻めちゃうタイプなんです。
ところで、あなたちょっとイケメンね。どこの出版社? え、リサーチ会社なの? ま、会社なんかどうでもいいけど、ちょっと場所を変えて、あたしの全身、すみずみまでリサーチしてみない? えっ? OKですって!? うそ、うそうそっ!? マジっ!? うおおおお、やった~!!」