ブロッコリーの出世までしばしお待ちを
春もたけなわ、というか、初夏を目前にして周りの景色も精気に満ちてきたようだ。拙宅の菜園のニラやホウレンソウは毎日のように食卓にのぼっているし、ニンニクやタマネギなども、人間の側から勝手に言えば夏の収穫に向かって活気づいている。
農林水産省が、ブロッコリーを指定野菜に追加すると発表した。その報道があったのは、正月気分も抜けた今年1月22日だった。私はこの報道に接するまで、指定野菜というものの存在を知らなかった。
私はブロッコリーもカリフラワーも栽培するが、ブロッコリーとよく似たカリフラワーは指定されない。どこがどう違うのか知らないが、なんだか気の毒に思ったりする。
それはさておき、指定野菜の正体がわからないので調べてみた。何をもって指定野菜とするのかというと、「消費量が多いことや、今後多くなることが見込まれる野菜」なのだそうで、「野菜の値段を安定させて、みんながいつでも野菜を食べられるように指定している」のだという。
これは「野菜生産出荷安定法」に基づいて農林水産省が定めた、国民生活上特に重要な野菜のことだそうだ。
ところで、報道されたのは1月だったのに、実際に指定野菜としての地位が得られるのは2026年度からだ。なぜそんなにのんびりしているのだろうと思っていたが、農水省の告示が毎年10月に行なわれることや、実効はさらに翌年度という決まりがあることに関係するらしい。指定野菜の椅子に座るまでしばしお待ちをといったところだ。
ほかの野菜とは一線を画し、指定野菜として出世できるのは「特に消費量が多い」ことや「国民生活にとって貴重な野菜」という条件をクリアしなければならない。
なぜブロッコリー? という疑問がわいてくる人も少なくないと思うが、消費量が増加していることのほかに、栄養価が高いことも重要なポイントになっている。
食用部分はつぼみと茎。そこに、強い抗酸化力を持つβ-カロテンや、免疫力を高めたり、肌を美しくととのえる効果を持つビタミンCが豊富に含まれている。ほかにも、血圧を下げる効果のあるカリウムや、貧血防止に役立つ鉄も含んでいる。
ヘルシーな食材としてイメージがよく、人気が上昇しているというのもうなずける。
ちなみに、農水省のホームページには指定野菜の品目が掲載されている。掲載順に、キャベツ、キュウリ、サトイモ、ダイコン、タマネギ、トマト、ナス、ニンジン、ハクサイ、ピーマン、レタス、ジャガイモ、ホウレンソウと、現在はここまでになっている。
これらに、新たに指定されるブロッコリーを加えて15品目となる。
ところで、どうでもいいことだが、農水省はこれらの野菜名を表示するのに平仮名を使ったり片仮名を使ったりしている。当然ながらきちんとした理由があるはずだが、私はあえてすべて片仮名になおした。
ほんとうのところをいえばできるだけ漢字にしたいのだが、一般的な使われかたや読みやすさを考慮して漢字はやめた。
指定野菜のメリットも記しておこう。
まずは「価格が安定しやすい」ことがある。指定野菜になると、価格が下落した場合、農家に公的資金が使われる制度があることから、価格の乱高下を防ぐことができる。これで消費者は安定的に購入することができる。
次に「全国各地で栽培されている」こと。指定野菜は全国各地で栽培されているため、天候不順などによる凶作の影響を受けにくく、安定的に供給することができる。
三番目として「品質が高い」こと。指定野菜は、厳しい品質基準を満たしたものが選ばれることから、必然的にそうなる。
それにしても、ブロッコリーのほかにも優れた野菜はたくさんあると思うが、新たにブロッコリーが加わってもたったの15種類だ。もっとあってもいいような気がするのだが。