明日はあたしの風が吹く
〔解説〕
本辞典としては珍しく前向きな意味をもつことわざである。いったいどうした風の吹き回しであろうか。
このことわざは、「今日、何か失敗したりいやなことがあったりしても、明日は自分に対して有利な動きが生じ、いい方向へ向いて行く」という意味の例えである。
言うまでもなく、「あたしの風」は自分に対しての追い風を表していて、いい方向へ導くための、なんらかの根拠や運のことであると解釈できる。
類語に「明日は明日の風が吹く」がある。この意味は「明日には明日の展開がある。どうなろうと成り行きにまかせるしかない」という教訓だ。「明日はあたしの風が吹く」とは異なり、やや投げやりともとれる。
〔さらに解説〕
人代名詞を用いたことわざは皆無に等しく、その意味では珍しいと言えるが、日本格言制定協会は、古くからある「明日は明日の風が吹く」が、何かの間違いで誤って解釈され、そのまま一人歩きして定着したのではないかと指摘している。
類語とも対語ともとれる珍妙なことわざもある。
その一つに「昨日はあたしの風が吹いたのに」がある。「のに」という、反対や否定につながる言い方をしていることからわかるように、全体の意味としては「昨日は自分に追い風が吹いた。しかし、今日(以降)は逆風だ」という状況を言っている。楽観的な「明日はあたしの風が吹く」とは反対に、悲壮観や失望という雰囲気が漂っている。
また、「明日から先は向かい風」などという、もはや悲壮感どころか絶望感しかないようなことわざもある。
ほかに、先が読めないことを揶揄した「明日吹く風どんな風」や「明日の風は誰に吹く」がある。また、いかにもごもっともといった感じの「明日の風は今日吹かぬ」などがある。