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日常のステップ#8 川島小鳥
氷漬けしたい日常
洗濯物を干した。
天気がよかったから、というよりは、干さないではいられない天気だった、という方が正しい気がする。
家を出る時間が近づいてきていたので、父に一緒に干してくれるよう頼んだ。
ふたりで並んで、淡々とハンガーにかけていく。靴下をバケツリレーみたいに吊るしていく。
ふと、こうして一緒に洗濯物を干す日常が、実はとてつもなく大事な時間なんじゃないかと思った。(こうして書くと陳腐だけど)
大事な時間は、指をすり抜けていく砂のように過ぎてゆく。
そんな時間を氷漬けしたいところけど、そんなことできないから、
最近は、「幸せだ〜」って思ったら、その空間を体いっぱいに入れるように、大きく深呼吸することにしている。
今日の深呼吸は、新緑の香りがした。
得られなかったもの
洗濯物を干した後、中野に向かった。スタジオ35分で行われている川島小鳥さんの写真展に行くためだ。
中野駅で私が信頼する素敵な感性を持つ友達と待ち合わせ、Kyles Good Findsでキャロットケーキとピーカンパイを買って公園で食べた。
鉄棒にぶら下がりながら、日々の雑感をポツポツと話し、滑り台付きの遊具の鏡の前で、夢を語り、リップを塗った。
小学校から電車通学だった自分にとって、友達と公園で遊んだ記憶は数えるほどしかない。
近所で、そこで会った子と遊ぶ経験もほとんどなかった。
家に人を気軽に呼ぶ習慣もなかったから、大学に入ってから、一人暮らしの人の家に泊まらせてもらったり、寮に忍び込んだりして見えた、人の生活の飾らない温度感は、すごく新鮮だった。
幼い頃に得られなかった、他者との気負いしない等身大の繋がりを、今無意識的に得ようとしている感じがある。
シャボン玉を空に残して、私たちの周りを、鬼ごっこの嵐が過ぎて行った。
川島小鳥写真展
「じゃあ、西日の中を歩きつつ行きますか。」
公園沿いを10分ほど歩き、新井薬師駅近くのスタジオ35分へ。こじんまりとしたガラス張りのギャラリーだ。
光を通した日常の鮮やかさ、と言おうか。
写真には、西日の中の葉っぱの影、鬼のようにタコ足配線したコンセント、椿の木の前で照れながら映る友達、揺れる水面。
写真として切り取られる前のコンテクストまで滲み出ているのが愛おしい。
大事な時間を氷漬けする手段のひとつは、まちがいなくこういう写真なんだろうなと思った。
それにしても、日常を日常のままで、こうして形にできるのは本当にすごい。
いつかやってみたいこと。
- 友達の家に行って、「一日、わたしがいないと思って生活してほしい」とお願いする。友達が、いつも〜の生活を送る様を、写真におさめる。
- 個展。小さなギャラリーで、絵や写真や言葉を展示する。プレイリストもプロデュースしたら、視覚も聴覚も演出できる。
今回の展示では、New Jeansやスピッツ、ユーミンなど幅広い曲が流れていた。店主さんに聞いたら、川島小鳥さんが選んだという。
その中の一曲、スピッツの「プール」はとても耳に残った。
「独りを忘れた世界に 白い花は降りやまず
でこぼこ野原を 静かに日は照らす」
やっぱり草野さんは詩人だ。