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「泣くな、はらちゃん」シナリオブックとドラマを比べてみた

こんにちは、とんです。

私が人生で観てきた中で一番好きなドラマであるところの「泣くな、はらちゃん」がついにTVer, Huluで配信され始めました。これまでAmazon Prime Videoでも配信がなかったので、今ネットで観ようと思ったらここだけなんじゃないかと思います。めっちゃ嬉しいです。12月24日からの配信ということで、最高のクリスマスプレゼントだと思いました。

TVerはこちら
Huluはこちら

このnoteでは軽く「泣くな、はらちゃん」というドラマの紹介をし、
また懐かしのドラマをシナリオブックと並べて鑑賞してみたことでわかった、脚本に関する考察を述べたいと思います。

個人的な話なんですが現在脚本家という仕事に興味があり、卒論が忙しくなる前に少しだけ勉強をしたり実際に書いたりしていました。一番好きな脚本家さんが、この「泣くな、はらちゃん」の岡田惠和(よしかず)さんです。岡田さんは他にも「ひよっこ」「ビーチボーイズ」などの有名な作品や、私が小学生の頃ハマっていた「無理な恋愛」、最近だと「姉ちゃんの恋人」なども担当なさっています。全部好き。まじで。(「無理な恋愛」めっちゃ好きだったのに、最近懐かしくて調べたら視聴率がクール最低だった…)
そういう脚本的な勉強も兼ねて以前シナリオブックを買ったのですが、ドラマと重ねて読む機会がありませんでした。それが今回叶ったので、是非比較検討してみたいと思っています。シナリオブックだけでももちろん映像が思い出されるくらい面白いのですが、違うところも見えてきたかなと思っています。

よかったら最後までお読みいただけると嬉しいです。

「泣くな、はらちゃん」とは?


はらちゃんは、越前さんが仕事の鬱憤を晴らすために描いているマンガの主人公で、最近マンガ世界が荒れており暗くなっていることを心配していました。マンガ世界の住人のひとり・ユキ姉に、「世界がなんだか暗く重たいのは、我々の神様が機嫌が悪いからだ」と教えられたはらちゃんは、世界を明るくするために神様の世界(=現実世界)に行って、神様を幸せにしようとする、というお話です。

主人公はらちゃんを演じるのはTOKIOの長瀬智也さん、ヒロイン越前さんを演じるのは麻生久美子さんです。他にもマンガ世界の住人には賀来賢人さん、清水優さん、奥貫薫さん、甲本雅裕さん、越前さんの同僚には光石研さん、丸山隆平さん、忽那汐里さん、薬師丸ひろ子さんなどが登場します。

個人的な話になりますが、「泣くな、はらちゃん」をきっかけにTOKIOのCD「リリック」を初めて購入し、また麻生久美子さんのファンにもなりました。
当時は菅田将暉くんとか賀来賢人くんとか全く知らなくて、最近好きになってから改めて「泣くな、はらちゃん」に出ていたことに驚いています。「姉ちゃんの恋人」に叔父さん役で出ていた光石研さんも出てきます。今思えば豪華すぎるキャストです。

公式サイトはこちら

シナリオブックとは?

ドラマの脚本だけをまとめたものを「シナリオブック」と言います。
ドラマの脚本は普通公開はされず、読もうとしても途中の1話だけが『月刊シナリオ』といった専門雑誌に載る程度なのですが、人気のあったドラマは全話まとめてシナリオブックとして刊行されることがあります。
最近だと徳尾浩司さんの「おっさんずラブ」や、野木亜紀子さんの「アンナチュラル」「逃げるは恥だが役に立つ」などもシナリオブックとして発売されているかと思います。もうすぐ「MIU404」も発売します。そろそろ家に届く予定です。

正直、脚本好きなニッチな人しか買わないものという認識も多く、私もちょっと興味があった頃ですらこういうものが出ることがあるとは知りませんでした。全ドラマで刊行されるわけではないというのが残念ですが、もし好きなドラマがあったら一度検索してみてください。

「泣くな、はらちゃん」もその人気からシナリオブックが発売されています。Amazonはこちらですが、中古しかないようです。私もメルカリで中古で購入しました。ニッチであるがために、発行部数自体が多くないと認識なさっていた方がいいかもしれません。

この「泣くな、はらちゃん」のシナリオブックでは、岡田さんのシナリオだけでなく劇中で登場するビブオさんのマンガも完全収録されています。ドラマが観られずともこの一冊だけで懐かしい気持ちになれます。シナリオ教室では、「ト書きは丸太棒のように無機質に」「誰にでも伝わるようにわかりやすく」「セリフはできるだけ短く」など基礎を習ったのですが、同じシナリオスクール出身とは思えない岡田さんの情緒豊かな脚本が面白いです。熟練してスタッフさんとの十分なコミュニケーションが取れるようになるとこんな脚本が書けるのかなあと感じています。憧れます。

シナリオブックと比較してみた

現在TVerで配信されているのは第1、2話です。ここでは第1話をシナリオブックとともに観た感想や考察を述べていきたいなと思っています。第1、2話が見られるのは1月2日いっぱいまでなので、ぜひ年末年始に観てみてください。

劇中で越前さんのマンガが書き進められるシーンでは場面にマンガのコマが出てきて、登場人物たちそれぞれの声が充てられています。しかしシナリオではそこにはマンガだけで、途中で挟まれる越前さんの横顔なども指定されていません。このあたりは演出や編集の方のお仕事なのかなあと推察します。

岡田さんの脚本では、「・・・」が多用されます。以下のように

ユキ姉「・・・・・・・・・・・・・・・」
マキヒロ「・・・・・・・・・・・・・・」
あっくん「・・・・・・・・・・・・・・」
笑いおじさん「・・・・・・・・・・・・・」(p61)

と、反応に困っているキャラクターを表しているシーンもあります。が、ドラマではここは一瞬で通り過ぎてしまっていました。尺の問題でしょうか。

基本的にドラマは脚本に忠実に進んで行きますが、岡田さんが描く情緒深いト書きもかなり生かされています。

はらちゃんが初めて世界の裂け目に入ったシーンは、脚本では

はらちゃん「・・・・別の世界・・・・・・」
   その異質な世界に、恐れを抱くが・・・・。
はらちゃん「・・・・・・・・・・・・・・・」
(中略)
はらちゃん「・・・・・・・・・・・・・・・」
   ギターを見る、はらちゃん。
   目を閉じる。そして気持ちを固めて・・
   そして、裂け目に、叫びながら飛び込んだ!(p36-37)

とあります。2行目、「その異質な世界に、恐れを抱く」というのは、あまりにも抽象的というか演技任せというか、ここでかなり演出さんは仕事をしたんじゃないかと思います。この1行では表しきれないような演出がドラマでは施されています。またドラマでは、飛び込むときはらちゃんがちょっと下がって助走をつけていたのですが、その描写がありません。脚本で描かれる以上の俳優さんの演技や映像演出が集結して、ドラマというのができているんだなあと感じました。

最後のシーンは

#90 居酒屋(漫画世界B)
   光さす世界。
   そして世界には、音楽という『色どり』が加わった。
   幸せそうな登場人物たち。
   力強く、幸せを噛みしめるように歌うはらちゃんで。
   だが、歌詞は、かなり後ろ向きで。(p74)

のように描かれています。ドラマを観ていると、世界に歌が入ってきて、楽しそうに歌うマンガ世界の住人たちに対して幸せそうだなあという印象を受けるんですが、最後の一文「だが、歌詞は、かなり後ろ向きで」とあるように、その歌詞は後ろ向きです。越前さんの歌詞が後ろ向きということに気がつかず、歌を得ただけで幸せに歌うマンガ世界の住人の気楽さを象徴しているのかもしれません。

小説原作の映画で、小説を読んで改めて納得できる部分があるように、脚本とドラマを比較してもそういう部分がいくつかあります。
現実世界に行くとき、落ちてくる梁にくぐるというシーンが必要なんですが、その梁について

   ハリが折れ、空から四角いハリが降ってくる。
   それはまるで漫画のコマのようで・・・・・。(p35)

というト書きになっています。この四角い梁がマンガのコマを象徴しているということに気付いていなかったので、脚本を読んで「なるほどー!」と思いました。マンガのコマをくぐり抜けてこっちの世界に来ているんだなあ。


今回は第1話のみの比較でしたが、以上のようにいろいろ違いが見受けられて面白かったです。もしご興味を持たれた方は、シナリオブックの購入、配信の鑑賞をなさってみてください。

ちなみに好きなシーン

このドラマのテーマは「あなたが笑えば世界は輝く」だと思っています。マンガの登場人物とその著者という設定にすることで、そのセリフがごく自然で全くクサくありません。めちゃくちゃクサイセリフなのに、はらちゃんが言うとずしっと真面目なものとして伝わってくるような感じがします。

全体的に重たいメッセージを伝えようとしているのに、その描き方がコミカルなおかげで素直にそれを受け止められるのがこのドラマの凄いところだと思っています。改めて観て、一番印象的だったシーンを紹介します。


1話で最初に登場するはらちゃんは、ギターを持っています。が、その弦は3本しかありません。弾いても変な音。はらちゃんは歌っているつもりでも、実際にギターは弾けないし歌も歌えません。しかし、歌を知らないはらちゃんやマンガ世界の住人はそれに違和感を持っていませんでした。
現実世界に行くことができ、神様(=越前さん)に「あなたが笑えば世界は輝く!」と伝えたはらちゃんは、なぜか神様を怒らせてしまったようで、マンガの続きはかなり荒れてしまいました。

はらちゃん「冗談じゃねえぞ お前のミスだろうが
      いい加減にしろよ 何、人に押し付けてんだよ あ?」
     「それに何だ? 昨日の変態男は
      何が あなたが笑えば世界は輝く だよ」
     「一人が幸せになろうが何だろうが、世界は変わらないんだよ」(p57)

そういって、はらちゃんは銃を持ち、マンガ世界を破壊し尽くします。


あんなに歌が好きだった、ギターを持っていたはらちゃんの手にあるのはギターではなく銃です。平和の象徴である音楽が、戦争の象徴である銃に取って替わってしまう。この様子が、人の心がパッと変わっただけで戦争が起きてしまうような現実世界をオマージュしているかのように感じて、心臓がきゅっとしました。

こんな風に、めちゃくちゃ重たいはずのメッセージをすんなり、重たくなく描いているお話でもあります。はじめはこんなこと考えずにコメディとして観てみてください。でも、観直した時になにか心の底に大きなメッセージが残るかもしれません。

紹介漫画を描いてみた

現在パルミーさんで「#推しマンガ」というキャンペーンが行われています。

マンガを描く仕事が欲しいというのもあり、卒論が終わったらこれをきっかけにマンガポートフォリオを増やそうと思っていたのですが、「泣くな、はらちゃん」の配信開始ということでいてもたってもいられず描いてしまいました。
それがこちらです。

ドラマにも登場するビブオさんのマンガテイストを参考に描いてみました。制作時間は2時間弱です。マンガって構成を考えたりセリフを絞ったり絵も描かなきゃいけなくて、めっちゃ大変ですね。漫画家さんの労力がすごいんだと改めて実感しました。

(私の宣伝になって恐縮ですが、こちらのツイートも拡散したり反応してくださると励みになります。)(24日夜の時点でかなり伸びてて、みんなはらちゃん好きなんだなって嬉しく思っています!!)

卒論が落ち着いたらもっと推しマンガを描きたいし、それに準じたnoteも展開していきたいと思っています。よろしくお願いします。


以上、「泣くな、はらちゃん」の紹介でした。
Huluでは一挙配信らしいんですが、TVerでは10日毎に観られる話が変わってしまうみたいです。ぜひお早めにご覧ください!!

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とん
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