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324円の財布

こんにちは、ぼんくら大学生です。

この四月に財布を変えた。変えたと言っても、近所のショッピングモールのレジ前に雑に置かれていた800円の財布だが、見た目は皮張りのように見え(化学繊維なのは重々把握しているが)8000円と言われてもそう疑う人はいないだろう。高級品なんかに触れてこなかった僕は、ブランドの価値なんてものに良さを見出すことができないし、外面が高級そうに見えればそれに越したことはない。

使い始めてから半年近く経ったが、今のところ不便ではないし、なかなかに丈夫で愛着が湧いている。

しかし、レジでジャスミン茶を買うとき、財布に目をやると、ふと前の財布を思い出すことがある。

前の財布をいつ買ったかは正確に覚えていない。ただ、買った場所そして値段は正確に覚えている。友達と出かけたドンキホーテでこれまたレジ前のかごの中に山のように置かれていた。値段は324円。消費税が8%の時代ということはわかるだろう。

この財布は今までに見たことも、ましてや触ったことのないような素材だった。スベスベで肌触りは良いがある程度の硬さはあり、頑丈だった。あの財布以外でこんな素材が使われているのを僕は見たことがない。表面には黒、裏には青という財布にしてはあまりにも斬新な色づかいが、当時の僕にはよっぽど新鮮だったのだろう。ガンバ大阪のグッズならともかく、大阪とは縁もゆかりもない所だった。

高校にもなると、周りの友達は洒落た革張りの財布を持っていた。デートの時に会計でCOACHの財布を見せればイチコロだという根も葉もない噂は置いとくにしても、財布という金銭力の象徴として、男としての評価基準に少なからず入っていたのだろう。

そこで僕の324円の財布だ。お世辞にも高級感は感じられない。ごく稀に、友達から財布のビビッドな色使いについて褒められることもあったが、使っている僕自身その言葉を素直に受け入れることは出来なかった。

しかし、不思議なもので長く使っていると324円の財布でも愛着は湧いてくるものである。少し糸がほつれても、味があると自分に言い聞かせて使っていた。正しい使い方は革張り財布の色落ちのことなどを言うのだろうが、僕にとってはこれが「味」なのだ。

今使っている財布もあと数年したら買い替える時期が来るだろう。そして、その時僕はまた324円の財布を思い出す。今後数万円する財布を買っても、僕の頭には324円の財布が浮かんでいるだろう。


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