見出し画像

クラシック音楽の話(24)

ブラームスの『ドイツ・レクイエム』


 評論家の樋口裕一さんがこのようにおっしゃっています。「CDを聴いているときにはさほど感銘を受けないが、生の演奏を聴くと心の底から感動をする曲があるものだ。私にとって『ドイツ・レクイエム』がそうだ。合唱の演奏効果は凄まじい。ぜひ、生演奏に接する機会があったら、聴いてみることをお薦めする」

 残念ながら私はこの曲を生演奏で聴いたことはありません。しかし、CDを聴いただけでも感動するのが、アーノンクール指揮、ウイーンフィル、シェーンベルク合唱団ほかによるライブ録音です。2010年度のレコード・アカデミー賞を受賞した盤です。ライブ録音というと、かつては客席の気配や時に雑音が混じったりするのがふつうでしたが、近年はそういうのを消す技術があるのでしょうかね。全くの静謐の中で演奏されているような、かといってスタジオ録音とは異なる、実に臨場感と緊張感に満ちた演奏だと感じます。

 『ドイツ・レクイエム』は、1868年、ブラームスが35歳のときに完成させた曲で、構想のきっかけは、彼の恩師だったロベルト・シューマンの死だったといわれています。レクイエムというと、通常はカトリック教会における死者の安息を神に願う典礼音楽であり、ラテン語の祈祷文に従って作曲されるそうですが、ルター派信徒だったブラームスは、ルター聖書のドイツ語版からドイツ語章句を選んで歌詞として使用したんですね。 従って、典礼音楽ではなく演奏会用の作品だということです。ブラームス自身も、「キリストの復活に関わる部分は注意深く除いた」と語っていたとか。

 いずれにしましても、この曲、そしてこの演奏は、単に素晴らしいとか美しいとかいう言葉では言い表せない、何だか、魂が内から震えてきそうなほどの感動を覚えます。CDですらそうなんですから、生演奏を聴いたら失神してしまうかもしれない・・・。
 

音楽史概要

 クラシック音楽は「古典的な音楽」を意味し、具体的には17世紀~20世紀前半までのヨーロッパを中心とした西洋音楽を指します。その歴史はおよそ400年にもおよび、楽器の発達や時代背景の移り変わりによって、クラシック音楽も年代ごとに名称がついて分類されています。

ルネサンス音楽
 14~16世紀の音楽。和音で音が進んでいく「ポリフォニー」が特徴。楽譜は大まかで、宗教的な合唱曲が多い。主な作曲家は、オケゲム、ジョスカン・デ・プレ、パレストリーナなど。

バロック音楽
 16世紀末~18世紀前半の音楽で、絶対王政の時代にほぼ重なる。彫刻や絵画等と同じように速度や強弱、音色などに対比があり、劇的な感情の表出を特徴とした音楽。オペラのジャンルが盛んになる。おもな作曲家は、ヴィヴァルディ、リュリ、ラモー、テレマン、バッハ、ヘンデルなど。

古典派
 18世紀中ごろ~19世紀初頭の音楽。主旋律に伴奏があるというメロディー重視の音楽(モノフォニー)。この時代に、今のような交響曲、協奏曲、四重奏曲、ソナタなどのジャンルが完成。代表的な作曲家は、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン。

ロマン派(前期)
 19世紀全般の音楽である「ロマン派」のうち前半の音楽。古典派の均整美から発展し、作曲家の個性や感情が前面に出てくるようになる。ロマン派の音楽はベートーヴェンによって切り開かれ、ウェーバー、シューベルト、メンデルスゾーン、シューマン、ベルリオーズ、ショパン、リストらによって推し進められる。

ロマン派(後期)
 ロマン派前期からさらに規模が拡大、技法も複雑化する。おもな作曲家は、ブラームス、ワーグナー、ブルックナー、マーラー、リヒャルト・シュトラウス、ヴェルディ、プッチーニ、チャイコフスキー、ドボルザークなど。

近代音楽
 19世紀末から第二次世界大戦までの音楽。ドビュッシー、ラヴェル、シェーンベルク、ストラヴィンスキー、プロコフィエフ、ショスタコーヴィチ、バルトークなど。
 

いいなと思ったら応援しよう!