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クラシック音楽の話(41)
シューベルトの交響曲第7番『未完成』
シューベルトの交響曲第7番『未完成』が、なぜ2楽章のまま未完成になってしまったのか。この謎については諸説あり、① 不治の病に冒されて作曲を続けられなくなったという説、② 本人が2楽章のみで完成とみなしたという説、③ 途中で他の曲を書き始めたという説、④ 第2楽章の出来があまりに素晴らしすぎてそれ以上の着想が湧かなかったという説、などです。1番目の説にある「不治の病」というのは梅毒のことで、この時代は、死に至る場合もある恐ろしい病気でした。
シューベルトが医者から病気の告知を受けたのは、『未完成』を書き始めて1ヵ月後、第3楽章を書き始めたところだったそうで、それはまさに死の宣告。直後はひどくショックを受け、とても作曲どころの精神状態でなくなったのは想像に難くありません。数年かかって何とか体力は回復できたものの、その後も『未完成』は放置され、次に書き始めた交響曲は、第8番『グレイト』だったんですね。
なぜ『未完成』の続きを書かなかったのか。諸説があるなか、私が思いますに、シューベルトにとって、きっとこの曲は、滅茶滅茶けったくそ悪い曲だったに違いありません。書いているさなかに重い病気を宣告されたわけですからね。縁起が悪いというか、悪夢がよみがえるようで、手も触れたくなかったのではないでしょうか。それに、シューベルトは生涯で14の交響曲を作曲しましたが、『未完成』以外にも5曲の未完の作品があるといいますから、途中でやめてしまうのは決して珍しくはなかった。元々気まぐれでもあったのでしょうか。
しかしながら、作品自体は実に魅力的で、第1楽章の静かに始まるチェロとコントラバス、それに続く、オーボエによる素敵な音色。さすがにメロディーメーカーのシューベルトらしく、何の和音もなく1本の旋律だけで奏でられていくのであります。他の作曲家の交響曲にはなかなか見られない。そして傑作とされる第2楽章は、宇野功芳さんの言葉を借りれば、「クラリネットが、次いでオーボエがうたってゆく第2主題は、途中で何度となく転調を繰り返し、まるで夢の国にさまよう想いがある」。
ただですねー、『未完成』は、やはり所詮は未完成だと感じます。演奏する人たちもおそらくそうだと思いますが、聴くほうも、中途半端に終わる物足りなさといいますか、何だか寸止め?にさらされたようでして、十分な満足感を得られません。ただ単に美しい音楽を2つ聴いたなという感じ。全体像が分からない。とても残念です。