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漢詩を読む

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漢詩のお勉強をしています。「詠む」のではなく「読む」お勉強です。
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漢詩を読む ~『代悲白頭翁』

原文 洛陽城東桃李花 飛来飛去落誰家 洛陽女児好顏色 行逢落花長嘆息 今年花落顔色改 明年花開復誰在 已見松柏摧為薪 更聞桑田変成海 古人無復洛城東 今人還対落花風 年年歳歳花相似 歳歳年年人不同 寄言全盛紅顔子 応憐半死白頭翁 此翁白頭真可憐 伊昔紅顔美少年 公子王孫芳樹下 清歌妙舞落花前 光禄池台開錦繍 将軍樓閣画神仙 一朝臥病無人識 三春行楽在誰辺 宛転蛾眉能幾時 須臾鶴髮乱如糸 但看古来歌舞地 惟有黄昏鳥雀悲 書き下し文 洛陽(らくよう)城東(じょうとう) 桃李

漢詩を読む ~『責子』

原文 白髮被兩鬢 肌膚不復実 雖有五男児 総不好紙筆 阿舒已二八 懶惰故無匹 阿宣行志学 而不好文術 雍端年十三 不識六与七 通子垂九齡 但覓梨与栗 天運苟如此 且進杯中物 書き下し文 白髮(はくはつ)は兩鬢(りょうびん)を被(おお)い 肌膚(きふ)復(ま)た実(ゆたか)ならず 五男児(ごだんじ)有りと雖(いえど)も 総(す)べて紙筆(しひつ)を好まず 阿舒(あじょ)は已(すで)に二八(にはち)なるに、 懶惰(らんだ)なること故(もと)より匹(たぐい)無し 阿宣(あせん

漢詩を読む ~『去る者は日に以て疎し』

原文 去者日以疎 来者日以親 出郭門直視 但見丘與墳 古墓犁為田 松柏摧為薪 白楊多悲風 蕭蕭愁殺人 思還故里閭 欲帰道無因 書き下し文 去る者は日(ひび)に以(もっ)て疎(うと)まれ 来(きた)る者は日(ひび)に以(もっ)て親(した)しまる 郭門(かくもん)を出(い)でて直視(ちょくし)すれば 但(ただ)丘(きゅう)と墳(ふん)とを見るのみ 古墓(こぼ)は犁(す)かれて田(た)と為(な)り 松柏(しょうはく)は摧(くだ)かれて薪(たきぎ)と為(な)る 白楊(はくよう)

漢詩を読む ~『和孔密州五絶東欄梨花』

原文 梨花淡白柳深靑 柳絮飛時花滿城 惆悵東欄一株雪 人生看得幾淸明 書き下し文 梨花(りか)は淡白(たんぱく)にして柳(やなぎ)は深青(しんせい)なり 柳絮(りゅうじょ)の飛(と)ぶ時(とき)花(はな)は城(しろ)に満(み)つ 惆悵(ちゅうちょう)す東欄(とうらん)一株(いっしゅ)の雪(ゆき) 人生(じんせい)幾(いく)たびの清明(せいめい)をか看得(みえ)ん 訳  梨(なし)の花は淡い白さであり、柳は深い濃い緑色をしている。柳絮(りゅうじょ)が飛び交うころには、

漢詩を読む ~『長干行』

原文 妾髪初覆額 折花門前劇 郎騎竹馬來 遶牀弄青梅 同居長干里 兩小無嫌猜 十四為君婦 羞顏未嘗開 低頭向暗壁 千喚不一回 十五始展眉 願同塵與灰 常存抱柱信 豈上望夫台 十六君遠行 瞿塘艶澦堆 五月不可觸 猿聲天上哀 門前遲行跡 一一生綠苔 苔深不能掃 落葉秋風早 八月胡蝶來 雙飛西園草 感此傷妾心 坐愁紅顏老 早晚下三巴 預將書報家 相迎不道遠 直至長風沙 書き下し文 妾(しょう)が髪(かみ)初(はじ)めて額(ひたい)を覆(おお)うとき 花(はな)を折(お)って門

漢詩を読む ~『初春宴に侍す』

原文 寛政情既遠 迪古道惟新 穆々四門客 済々三徳人 梅雪乱残岸 煙霞接早春 共遊聖主澤 同賀撃壌仁 書き下し文 寛政(かんせい)の情(こころ)既(すで)に遠く 迪古(てきこ)道(みち)惟(こ)れ新(あらた)し 穆々(ぼくぼく)四門の客(まらひと) 済々(せいせい)たる三徳の人 梅雪(ばいせつ)残岸に乱れ 煙霞(えんか)早春に接(つらら)く 共に遊ぶ聖主の澤(たく) 同じく賀(ほ)く撃壌(げきじょう)の仁(じん) 訳  寛大にされた天皇の恵みの情はすでに遠い昔から続

漢詩を読む ~『遊子吟』

原文 慈母手中線 遊子身上衣 臨行密密縫 意恐遅遅帰 誰言寸草心 報得三春暉 書き下し文 慈母(じぼ)手中(しゅちゅう)の線(せん) 遊子(ゆうし)身上(しんじょう)の衣(い) 行(こう)に臨(のぞ)んで密密(みつみつ)に縫(ぬ)う 意(い)は恐(おそ)る遅遅(ちち)として帰らんことを 誰(たれ)か言う 寸草(すんそう)の心(こころ) 三春(さんしゅん)の暉(ひかり)に報(むく)い得(え)んと 訳  慈悲深い母は、旅立つ息子のために糸を手にして着物を縫ってくれた。出

漢詩を読む ~『静女(邶風 )』

原文 靜女其姝 俟我於城隅 愛而不見 搔首踟躕 靜女其孌 貽我彤管 彤管有煒 説懌女美 自牧帰荑 洵美且異 匪女之為美 美人之貽 書き下し文 静女(せいじょ)其(そ)れ妹(うるわ)し 我(われ)を城隅(じょうぐう)に俟(ま)つ 愛(あい)として見えず 首(あたま)を掻(か)きて踟躕(ちちゅう)す 静女(せいじょ)其(そ)れ孌(うつく)し 我(われ)に彤管(とうかん)を貽(おく)る 彤管(とうかん)は煒(い)たり 女(じょ)の美を説懌(えつえき)す 牧(ぼく)より荑(てい

漢詩を読む~『春夜喜雨』

原文 好雨知時節 当春乃発生 随風潜入夜 潤物細無声 野径雲倶黒 江船火獨明 暁看紅湿處 花重錦官城 書き下し文 好雨(こうう)時節(じせつ)を知り 春に当(あた)って乃(すなわ)ち発生(はっせい)す 風に随(したが)いて潜(ひそや)かに夜に入(い)り 物を潤(うるお)して細(こまや)かにして声(こえ)無し 野径(やけい)雲(くも)は倶(とも)に黒く 江船(こうせん)火は独(ひと)り明らかなり 暁(あかつき)に紅(くれない)の湿(しめ)れる処(ところ)を看(み)れば 花

漢詩を読む ~『桃夭(周南 )』

原文 桃之夭夭 灼灼其華 之子于帰 宜其室家 桃之夭夭 有蕡其実 之子于帰 宜其家室 桃之夭夭 其葉蓁蓁 之子于帰 宜其家人 書き下し文 桃(もも)の夭夭(ようよう)たる 灼灼(しゃくしゃく)たる其(そ)の華(はな) 之(こ)の子(こ)于(ゆ)き帰(とつ)がば 其(そ)の室家(しっか)に宜(よろ)しからん 桃(もも)の夭夭(ようよう)たる 有蕡(ゆうふん)たる其(そ)の実(み) 之(こ)の子(こ)于(ゆ)き帰(とつ)がば 其(そ)の家室(かしつ)に宜(よろ)しからん 桃

漢詩を読む ~『峨眉山月歌』

原文 峨眉山月半輪秋 影入平羌江水流 夜発清溪向三峡 思君不見下渝州 書き下し文 峨眉山月(がびさんげつ)半輪(はんりん)の秋 影(かげ)は平羌江(へいきょうこう)の水に入(い)って流る 夜(よる)清溪(せいけい)を発して 三峡(さんきょう)に向かう 君を思えども見えず 渝州(ゆしゅう)に下る 訳  秋の峨眉山に半円の月がかかっている。その光は平羌江の水面を照らし、川は輝きながら流れて行く。  この夜、私は清渓から舟出して三峡へと向かう。もう一度君を見たいと思っても

漢詩を読む ~『王昭君』

原文 滿面胡沙滿鬢風 眉銷残黛臉銷紅 愁苦辛勤顦顇盡 如今卻似畫圖中 書き下し文 面(おもて)に満(み)つる胡沙(こさ)鬢(びん)に満(み)つる風(かぜ) 眉(まゆ)は残黛(ざんたい)銷(き)え臉(かお)は紅(べに)銷(き)ゆ 愁苦(しゅうく)辛勤(しんぎん)して顦顇(しょうすい)し尽(つ)くれば 如今(いま)ぞ却(かえ)って画図(がと)の(うち)に似(に)たり 訳  漢を離れてはるばる胡(えびす)の地に来て、顔は砂漠の砂にまみれ、ほつれた髪が異国の風に翻る。眉を描

漢詩を読む ~『行行重行行』

原文 行行重行行 与君生別離 相去万余里 各在天一涯 道路阻且長 会面安可知 胡馬依北風 越鳥巣南枝 相去日已遠 衣帯日已緩 浮雲蔽白日 游子不顧返 思君令人老 歳月忽已晩 棄捐勿復道 努力加餐飯 書き下し文 行(ゆ)き行(ゆ)き重ねて行き行く 君と生きながら別離(べつり)す 相去(あいさ)ること万余里(ばんより) 各(おのおの)天の一涯(いちがい)に在(あ)り 道路(どうろ)阻(けわ)しく且(か)つ長(なが)し 会面(かいめん)安(いづ)くんぞ知るべけんや 胡馬(こば

漢詩を読む ~『辛夷塢』

原文 木末芙蓉花 山中発紅萼 澗戸寂無人 紛紛開且落 書き下し文 木末(ぼくまつ)芙蓉(ふよう)の花 山中(さんちゅう)紅萼(こうがく)を発(ひら)く 澗戸(かんこ)寂(せき)として人無く 紛紛(ふんぷん)として開き且(か)つ落(お)つ 訳  木末(こずえ)に咲いた蓮の花のように、コブシが山の中で赤い花をつけた。谷川に沿った家は静まり返っていて、人の気配はない。コブシの花は、人知れず、しきりに咲いては散っていく。 説明  盛唐の詩人、王維(おうい)の作。題の「辛