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ノーザン・バレエ『Three Short Ballets』【バレエレビュー】
1月末、ロンドンのロイヤル・オペラ・ハウスのリンブリーシアターで行われたノーザン・バレエ『Three Short Ballets』を観てきました。
20世紀のバレエから、最新のコンテンポラリーバレエまで、多様な演目が揃ったトリプル・ビルです。
感想
Four Last Songs
シュトラウスの同名曲に、オランダの振付家・ルディ・ヴァン・ダンツィヒ(Rudi van Dantzig)が振り付けた作品。
「愛と喪失、人生と人間が経験すること」をテーマにした抽象バレエです。
シュトラウスが死の間際に作った曲ということで、女性の声楽と合わせて、静謐で神秘的な雰囲気が終始漂います。
4つのカップルのパ・ド・ドゥで構成されています。
どの踊りも、前半はダイナミックなリフトや流れるような踊りで、愛の喜びを表現しているように感じます。しかし徐々に陰りが見え、天使役のダンサーが登場すると、時には天使が女性を連れ去ってしまったり、時には女性ダンサーが力尽きたり、とまさに「愛と喪失」がそれぞれの曲の中で描かれていきます。
3曲目の女性・岩永茉友子さん、力強さと空中に漂うような柔らかさのバランスが絶妙で、特に美しかったです。
Victory Dance
ロイヤル・バレエ団のプリンシパル・キャラクター・アーティストのクリスティン・マクナリーが振り付けた世界初演作品。
車椅子ダンサーのジョー・パウエル・メインをゲストに、男性ダンサー2人と、3人で踊る作品です。
音楽は、イギリスのジャズバンドEzra Collectiveの同名曲。スポットライトに3人が照らされて登場、少しラテンっぽい?アップテンポな曲で、一気に会場が明るくなりました。
ジョーの踊りを初めて観たのですが、車椅子の動きがとにかくスムーズ。
大きくロン・ド・ジャンプをするように車椅子を回転させたり、アイススケートかのように舞台全体を大きく滑り、とにかく爽快でした。
今回のトリプルビルで1番お気に入りです!
車椅子を、男性ダンサー2人が押す場面もたまにはあるのですが、サポートというよりむしろ、車椅子に乗ったり、車椅子のジョーを支えに跳躍したり。車椅子をダンサーの体の一部として使っており、全く違和感を感じません。
「車椅子のダンサーって見ていて悲しくなるのでは…?」という心配をしていたのが本当に恥ずかしいです。
車椅子ダンサー ジョー・パウエル・メインとは?
ジョー・パウエル・メイン、元々ロイヤル・バレエ・スクールの生徒だったからなんですね。怪我と事故と不幸が重なり、車椅子での生活になったそうですが、鍛え上げられた上半身の動きは本当に美しかったです。
なんでこんなに他のバレエダンサーの動きと馴染むのかな、と思ったら、本人のインスタグラムでこんな動画を発見しました!
ダンサーたちに混じってクラスレッスン!
回転時の首の付け方やアームスの持っていき方など、他のダンサーと全く同じ!
才能あるダンサーだったからこそ、怪我・事故当時のお気持ちは想像するのも苦しいですが、時間をかけてこの形を見つけられたんですね。
今後も彼のパフォーマンスは積極的に見にいきたいです。
Fools
オリヴィエ賞を受賞し、注目を集める南アフリカ出身の振付家・ムトゥツェリ・ノーベンバー(Mthuthuzeli November)の世界初演作。
村同士の争いを描く小説『Hill of Fools』と、『ロミオとジュリエット』にインスパイアされて作った作品とのこと。
なので、話の大筋は『ロミオとジュリエット』。ただ、荒廃する村の感じは、ウエスト・サイド・ストーリーの方がイメージに近かったです。
村同士が戦い、最後には主人公の男が死んでしまう部分では、太鼓のバチのようなものを使い、地面に叩きつけるような動きが多く、少しピナ・バウシュの『春の祭典』を思い出しました。
舞台のイメージはこんな感じです。
まとめ
ロイヤル・バレエの元プリンシパル・フェデリコ・ボネッリが芸術監督になったということで、名前だけ知っていたノーザン・バレエ。今回初めて見ましたが、ロイヤルのダンサーともコラボしつつ、世界のいろんな作品も取り入れている、面白いバレエ団だと思いました。
本拠地がリーズなので少し遠いですが、ロンドンにも回ってきてくれるみたいなので、これからいろんな公演を見にいこうと思います!