59 鳥の巣指す木漏れ日を来て子も木漏れ日
句集「むずかしい平凡」自解その59。
ちょっとした遊歩道を子どもと一緒に散歩していた時の光景。先を歩いていた息子が木の上のほうを指さす。鳥の巣があるみたいだ。
こちらからはよく見えない。
どこ?
ここ、ここ。
子どもがこちらにやってくる。遊歩道は木漏れ日が揺れていて、その木漏れ日の中をやってくる。
あっ、と思う。子ども自体がもう木漏れ日そのもの。
その木漏れ日が私の手を引っ張り、また指さす。
あそこあそこ。
ほんの一瞬の出来事ですが、なんだか忘れられない瞬間でした。なんなんだろうねえ。
命の尊さ、なんていうと大げさだけれど、いのちを感じたんだろうなあ。
鳥の巣だって命をはぐくむものだし、それを見つけて、父親に伝えようとする子ども。命と命が触れ合う瞬間。その木漏れ日。
子育てって大変ですけれど、ときどきこういう瞬間に恵まれて、救われますね。