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62 ぽつんと菫除染三年目のある日

 句集「むずかしい平凡」自解その62。

 しばらくお休みしていました自句自解。ぼちぼち再開します。

 この句は、句集第一章「むずかしい平凡」の最後の一句。この章には、震災関係の句を入れるつもりはなかったのですが、つい入ってしまいました。次の章「春の牛」が震災句を中心にするつもりだったので、その雰囲気を出したかったのか、自分でも定かじゃないのですが、なんとなくこの句を置きたかったんですね、要するに。

 自宅周辺の除染が終わって、なんだかそっけない風景になってしまった。雑草やら草木やらが根こそぎはぎとられ、その上に白っぽい土がかぶせられ、壁やら屋根やら、洗浄され、それらのものを掘った穴に閉じ込めて、除染完了。なんともしらけた気持ちになったものです。命が薄らぐような思い。しばらくはそんな気持ちで生活していました。

 そんな春のある日、ぽつんと菫が咲いていたんですね。いつの間に戻っていたんだ?思わずそんな声をかけたくなりました。

 そういえば、あの震災も春の日だったなあ、と思いつつ。

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