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保育所つくった俺
前回までのあらすじ:
修繕費の1/3を補助金申請した俺。
残りの2/3は銀行から借り入れることにした。
相見積もりをとりB銀行から借り入れることに決定。
銀行からの借入れを考えている中、県からの補助金決定通知が届いた。
よっしゃ~。ようやく工事に取りかかれる。
今回工事を頼む町の電気屋ぶつくんに、補助金決定通知が来たことを連絡した。
ぶつくんはマルチな才能で様々な仕事をこなす。だから俺みたいな事業主との付き合いもある。少々いい加減なところもあるが、そこも含めて俺はぶつくんが気に入っている。
なぜって、ぶつくんは俺と似ているんだよなあ。
限界を設けないというか、何でもありっていうところ。
だから、今回も俺の問いかけに応えてくれたんだと思うよ。
ぶつくんから工事の日程表をもらった。
よろしくな。
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ところで、実は、俺はもう一つ別の種類の補助金をもらっていた。
この補助金は毎年申請する運営費補助金というたぐいのやつ。
何の運営費かというと、企業内保育施設だった。
俺の会社は女性社員が多い。
子どもを産むと育児休業を1年間とれる規則になっているんだが、社員がものすごく減ってしまった時があって、それが出産ラッシュと重なっていたんだ。
全員に育児休業を取ってもらいたいが、それをすると会社が回らなくなる。彼女たちは専門職だから、誰でも雇えば良いというわけにはいかない。
俺は、企業内保育所を作ることを考え始めた。
すると、知り合いの保育士が職を探しているという。うちで保育所するなら来るか?と聞いたら、来る、という回答。
次に、一番最初に出産予定の社員に、保育所があれば働くか?って聞いてみた。働きたい、という回答だった。
もうこれはやるしかないよな。
しかし、当時は、過疎地域の小さな会社で保育所をやるなんてばかげている。と思われていただろう。
県に相談したとき、担当課に呼び出され、本当に保育所をやるのかの取り調べを受けた。本当、取り調べだった。
俺は真面目に答えた。やります、と。
保育施設基準が守れるのか?と聞かれた。
確かに、そこは大事なところだ。
親父が作った巨大な社屋は、施設基準もしっかりしていて、保育施設の基準をほぼ満たしていたんだ。多少の工事は必要になるが、空き部屋を改修すれば十分対応可能だった。
正直、企業内保育所の運営は赤字を増やすことになる。
運営費補助金をもらっても、だ。
だから、ばかげている、と思われても仕方がないよな。
でも、俺は、地域へ果たす会社の使命と、子どもを預けてでも働きたいと言った若い社員の気持ちを汲んだ。
親父も、企業内保育所を作ることを喜んでくれた。
赤字が増えたとしても会社として地域への使命を果たす、という気持ちは同じだったということだ。
最終的に、出産ラッシュで生まれた赤ちゃん全員が企業内保育所を利用することになり、さらに、その弟妹達も預かることになった。
つづく