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上出来な毎日
ハム太郎の飼い主・ロコちゃんは、毎晩日記をつけてから、ハム太郎にこう話しかける。
今日はとっても楽しかったね、明日はもーっと楽しくなるよね、ハム太郎!
小さい頃に何気なく見ていたアニメの台詞には、大切なものが隠されていたようで。
私は定期的に、この台詞を真似して、自分に語りかけている。
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中学生の頃、階段の窓から、校外の道を歩く大人の姿をよく眺めていた。
平日の昼間に、学校の外に居られるなんて、羨ましいなあ。
そう思いながら、階段で上履きを飛ばして遊んでいたら、窓の外まで飛んでいってしまったこともあった。
大人になったら、自由で楽しくって、かっこよく働いて、飛んでいった上履きよりもずっとずっと遠くまで、自分の足で行けるようになる。
そんな風に思い描いていた大人の生活は、想像よりも遥かに日常的だった。
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仕事をしてみれば、上手くいかないことに憤りを感じる。
家事をしてみれば、なぜこんなに時間がかかるのかと腹を立てる。
休日だって、何かしらやるべきことは常にあって、かつて「自由」という言葉から想像していたものは、ない。
やがて私は、毎晩のように「今日も何もできなかった」という一言のもと、眠りにつくようになった。
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何もできない自分と対峙し、どうしたものかとあれこれ頭を悩ませていた頃、かつてバイト先の塾生に向かって私自身がアドバイスしていたことを思い出した。
寝る前に、今日あった良いことを3つ挙げてから寝てみよう。
どんなに小さいことでもいいよ。
きっとたくさん頑張ったことがあるはずだから。
受験期の学生は心が荒むもので、毎年秋以降になると、この言葉を習慣化させてほしい子が現れるものだった。
数年を経て、そのアドバイスは特大ブーメランとして私のもとに帰ってきた。
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今日の良かったこと。
どんなに些細なことでもいい。
無理があってもいい。
良いこと探しの夜を続けていくと、思い描いた理想とは違った日常のなかにも、良いことはたくさんあるんだと気づいた。
私は毎日、上出来だった。
上出来な自分に気づくと、自然とご機嫌な自分が増えていく。
ご機嫌な私は、明日の上出来も想像できるようになる。
繰り返せば繰り返すほど、毎日は上出来になるばかりだ。
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厳密に考えてしまえば、毎日の中には不出来なことも溢れている。
けれど、不出来な自分が不機嫌な自分を作り出すのであれば、そんな真実からは目を背けてしまえばいい。
せめて、一日の終わりくらいは、上出来な自分と、上出来な未来に、思いを馳せて。
ご機嫌なまま、眠りにつこう。
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