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『夜空に星のあるように』感想
《映画に関する情報》
本作は後に「麦の穂をゆらす風」と「麦の穂をゆらす風」の2作でカンヌ国際映画祭のパルム・ドール(最高賞)を受賞したケン・ローチ監督のデビュー作。
ロンドンに生まれたジョイを中心に当時のイギリスの労働者階級の様子を描いている。ジョイは一度泥棒で生計を立てている男性のトムと結婚して子供を持つが、肉体的にも精神的にもジョイへ苦痛を与えて関係がうまくいかずトムは泥棒で逮捕される。その後同じく泥棒で生計を立てているがジョイへ親切に接するデイヴと付き合うようになり前向きな人生を歩むようになるもデイヴは強盗で逮捕される。
映画公式URL 夜空に星のあるように 2022/2/13 14:00
《評価点》
ジョイの労働者階級、女性という立場から見る資本家や男性といった存在について考えさせられるストーリーとなっている。 また、ジョイのストーリー以外にも節目の場面で様々な市井の人々を映すことで社会全体を見せる映像となっている。
人物や背景の配置、音楽の流し方や使い方などの表現面で工夫を感じる箇所が多かった。中でも引きで景色を見せ、労働者階級を自然に意識付けさせる場面が多いのが印象的。工場を背景に置いて主人公が「喋ると自分の育ちがわかってしまう」と語る場面は特に心に残る。
※該当の場面 映画公式HPから引用
以上、大まかなストーリーや表現部分では少なくとも「ジョイの人生を通して社会的弱者の苦しみや矛盾を見てほしい」という意図は伝わりやすい作りとなっている。
《問題点》
主人公を含めて登場人物には基本的にモラルが欠如しており、人を不快にさせる言動と場面がとにかく多い。人間社会の暗部を描いた映画であり、綺麗でない個所を包み隠さず見せるという意図があったと解釈はできるが感情移入しにくいというのが個人的な感想。
また、ストーリーも細かく見ると必要性を感じにくい展開や場面が多く、終わり方も中途半端な印象を拭えない。例えば終盤の息子を見失うシーンは後に大きな変化もなく映画が終わるので必要性を個人的に感じなかった。
《まとめ》
映像や音楽の細かい拘りからテーマや見せたいものははっきり伝わってきて、その後の監督の活躍にも納得できる出来栄え。その一方で終着点や軸が見えにくく腑に落ちないストーリー、必要性を感じにくい場面や不愉快な場面も多さから人を選ぶ内容に感じた。