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『スペンサー ダイアナの決意』感想

トップ画像は公式HPから

■映画情報

・基本情報

2021年製作/117分/G/ドイツ・イギリス合作
原題:Spencer
配給:STAR CHANNEL MOVIES

映画.com:スペンサー ダイアナの決意

・ストーリー

1991年、クリスマス。英国ロイヤルファミリーの人々は、いつものようにエリザベス女王の私邸サンドリンガム・ハウスに集まったが、例年とは全く違う空気が流れていた。ダイアナ妃とチャールズ皇太子の仲が冷え切り、不倫や離婚の噂が飛び交う中、世界中がプリンセスの動向に注目していたのだ。ダイアナにとって、二人の息子たちと過ごすひと時だけが、本来の自分らしくいられる時間だった。息がつまるような王室のしきたりと、スキャンダルを避けるための厳しい監視体制の中、身も心も追い詰められてゆくダイアナは、幸せな子供時代を過ごした故郷でもあるこの地で、人生を劇的に変える一大決心をする

映画公式HP:Story

■高く評価できる点

◆演技

 ダイアナを演じるクリステン・スチュワートは本年度アカデミー賞受賞作にノミネートされており、公式HPや映画館で配布されているポスターでも強調されている。

 映画内では喜怒哀楽の全てを表現する必要があったが、いずれも自然でその評価も納得の演技をしていた。"怒"や"哀"が目立つ映画ではあるが、だからこそ時折息子たちや仲の良いマギーに見せる"喜"や"楽"が良いアクセントになっていた。

 私自身はダイアナについて勉強不足だが、公式パンフレットにも『クリステン・スチュワート(P'12~15)』『ダイアナ役のキャスティング(P'28)』など多くのページに配役やダイアナの再現に対する拘りが記載されていることから注目のポイントだと感じる。

 他の出演者も実績が豊富な方々であり、いずれも作中の役割に合った演技を行なえている。個人的にはグレゴリー少佐を演じたティモシー・スポールが経験と年齢を活きていて印象的だった。

◆衣装

ファッションアイコンとして今なおリスペクトされているダイアナのセンスを華麗に表現するために、本作ではCHANELが衣装を制作している。

映画公式HP:Introduction

 上記の文章からわかるように本作は衣装についてかなり力を入れており、「自立を求める女性ダイアナ」というテーマをストーリーと見た目の両方でわかりやすく反映させていた。

 衣装担当のデュランが以下のような分析を述べている。

ダイアナは常に彼女の周りを囲むものよ一段明るい色を身に纏っています。(中略)常に周りより一段明るい色を選び、彼女なりに自己主張しているのです。」とデュランは分析する。

公式パンフレット :CREATING DIANA「ダイアナを作っていく~衣装&ヘアメイク~」: P'29

 作中でダイアナの衣装は周りと比較して目につきやすく、映画の主役として感情の変化や伝統による束縛に対する思いがわかりやすくなっている。後述するストーリーのわかりにくさを衣装によってなんとか感覚的に捉えられるものにしたという印象を受ける。

■評価できる点

◆音楽

 個人的に場面に合った音楽を使用しており、特に緊迫感を強めいたい場面は非常にわかりやすく効果的だったと思う。劇場で見て正解だったと感じるポイントの1つ。

■評価が難しい点

◆ストーリーと演出、表現

 作品内の冒頭でも表示されるが今作はあくまでも別居前のクリスマス3日間にに焦点を当てた「事実に基づいた寓話」であり、人生を追ったドキュメンタリー作品ではない。

 表現や演出については特殊な状況と鮮やかな色使いを使用して印象には残りやすいが理解が難しいものになっている。精神的な不安をそのまま表現したシーンや過去と現在と混ぜ合わせたシーンなどが多用される。

 ストーリーと演出・表現ともにダイアナの不明な部分を完全に想像で補っているので、王室のファンにとっては「勝手な妄想」と感じる人もいるのではないかと思う。逆に私はイギリス王室とダイアナの離婚について単純な起承転結しか理解していないので、前述のストーリーや演出・表現についてピンと来なかった。

 ここは人によって好き嫌いが明確に分かれる箇所ではないかと思う。

・演出、表現についての補足

 ラライン監督自身も以下のように述べている。

 (前略)彼女のミステリアスな面と脆い面をバランス良く捉えた、彼女の内面的な世界を作ろうと心がけました。彼女が持つこのふたつの性質は、超自然的な要素が入ったシーンでとても明確に描かれています。超常的だったり合理的な方向に持っていくことが狙いだったのではなく、心理的な面から見た人生を反映させることが目的でした。

公式パンフレット :DIRECTOR'S STATEMENT「監督 パブロ・ラライン」: P'5

 太字で示した箇所を見てもわかる通り、監督自身もストーリーや表現と演出の不自然さについては認めている。

 また、監督は今作を作ろうとした理由について以下のように答えている。

(前略)そして彼女の物語がとても魅力的なのはそこにミステリアスな要素も組み合わさっているからです。

映画.com:
「英国王室に起きていることは普遍的な物語の世界と同じ」
パブロ・ラライン監督がクリステン・スチュワートと作り上げた「スペンサー ダイアナの決意」

2022年10月14日 16:00

 「ミステリアスな面」というのは公式パンフレットにも記載されており拘りを持った要素と思われる。演出や表現について簡単に飲み込むのは難しいかもしれないが、どのようにして「ミステリアスな面」を表現しようとしたのかを考えるとより楽しめるかもしれない。

※引用元情報

・引用日時

映画公式URL 2022/10/31 21:50

映画.com作品情報記事 2022/10/31/22:30

映画.comインタビュー記事 2022/10/31/22:00

・パンフレット情報

発行日:2022年10月14日
発行者:太田圭二
発行権者:株式会社東北新社 東京都港区赤坂 4-8-10

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