
『第50回全国高校野球選手権大会 青春』感想
《映画の内容》
公開 1968年
配給 日活
監督 市川崑
キャスト 1968年全国の高校野球球児、および関係諸氏
第50回全国高校野球選手権大会を通じて日本人がどのように夏の甲子園に関わって熱中しているのかを描いたドキュメンタリー作品。
《映画の特徴》
第50回大会だけではなくそこにたどり着くまでの練習や予選、それまで行われてきた大会の歴史についても触れられている。また、選手や監督だけではなく他の一般生徒や市民の姿も多数映されており、「野球部の大会」ではなく「日本人の夏の象徴」として描かれている。
《全体の感想》
96分と決して長くない時間の中で第50回大会の開会式から閉会式まで映した上でその背景もしっかりと映しており、単なる記録映画ではなく「なぜ甲子園に人々が熱中するか」が伝わってくる内容となっている。市川監督の独特の編集手法や今と当時の野球の違いもあり、映画を見終えたあとの充実感は大きかった。
以下、映画で映された内容の具体的な部分について触れます。「当時の高校野球について先入観を全く持たずに映画を見たい」という方は見ないことをお勧めします。
《今と当時の高校野球の違い》
50年以上前の大会ということでもちろん現代の野球と様々な部分が異なる。例えばバットは金属製ではなく木製を使用しており、応援にブラスバンドの姿はなくアカペラで行っている。
1番衝撃を受けたのは女子マネージャーについて「最近増えた」と紹介しており、当時はベンチにも入れなかったと説明していたこと。今では当たり前の存在となっているが、その歴史が意外と最近であると感じた。
練習環境についても屋内グラウンドや練習場などは存在しておらず、山を登るなど自然を活かした練習や校舎内での練習など今ではなかなか見られないだろうという光景が見られた。ティーやトスバッティング用のネットなど練習用の道具などはなく、筋力トレーニングについてもダンベルやベンチブレスといったものは使用していない。室内で様々な道具を使って鍛えることができるスポーツ全体の進化を感じる。
また今の時代では漢字のユニフォームの学校も非常に多いが、映画内の甲子園出場校のユニフォームは確認できる範囲では全てローマ字だった。個人的に歴史のある名門や古豪はローマ字のユニフォームが多いという印象あるため納得した。
《編集・構成》
映画内ではインタビューが一切入っておらず、解説についても最低限に留めていたので試合の様子などについて難しいことを考えずすんなりと見る事ができた。特に試合のシーンに関しては余計な情報を与えないことで、当時の盛り上がりや緊張感をそのままに近い形で伝える事ができたと思う。
編集で1番印象的だったのは1つの画面を分割して複数の映像を同時に流す手法。調べたところ『犬神家の一族』など他の市川作品にも用いられている手法らしいが、テンポが良く映画を進めながら予選から本選まで1つ1つの試合の熱狂をしっかりと伝える意図を感じた。
トップ画像・上記情報 引用:製品紹介HP 2022.8.6.土 15:15