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日本産ゲームの大躍進の時代。ここ最近のゲーム業界を自分なりに解釈してみた。

今回は、ここ数年のゲーム業界について、日本産ゲームの大躍進と絡めながら考えてみた。私の主観的な意見を元にゲーム業界を語るため、そこは注意していただきたい。


ゲーム史の中の日本

ゲームの歴史を語るうえで「日本」という国の存在は欠かせないであろう。ファミリーコンピュータを発売することでゲームが大衆的に受け入れられる地盤を築いた任天堂、自社の強みである音響や映像表現とゲームを組み合わせることで、ゲーム体験をリッチなものに押し上げたSONY、そして新たなゲームジャンルや表現手法を生み出してゲーム史を築き上げてきたソフトメーカーたち(コナミ、カプコン、スクウェアエニックス、セガ、フロムソフトウェア…)、日本のゲーム会社は間違いなく世界を席巻してきたと言っても過言ではないだろう。

しかしながら「日本のゲームはオワコン、時代遅れ、中国やアメリカに抜かれてしまう」といった声もよく聞く。実際、PS3~PS4初期辺りまでは、日本のゲーム会社は非常に苦戦していたと思う。コールオブデューティーやグラセフのような海外産のFPSやオープンワールドゲームが台頭してきたことと、長年続く日本の有名シリーズのマンネリ化や開発の難航が重なり、日本産ゲームの存在感が徐々に薄まってしまっていた。任天堂のWiiUが大失敗したことも要因として大きいだろう。

だが2017年辺りから流れは変わった。不評が続いていたり、海外での人気が乏しかったIPたちの躍進やリブートが続々起こり、世界的に好評を得るタイトルが沢山出てきた。ゼルダの伝説bow、バイオハザード、モンスターハンター、ペルソナ5、ダークソウルなど挙げだしたらキリがない。まさに「日本産ゲームの大躍進の時代」とも言えるだろう。ここ数年のゲームオブザイヤーのノミネート作品を見てみると、その半分が日本産ゲームであることが多く、日本産ゲームが優勝することも珍しくない。IPが持つ本来の魅力に立ち返り、それを海外にも受け入れられるような形に作り上げる絶え間ない努力があるからこそ、昨今の日本産ゲームの成功があるのだと私は思う。

2017~2020年 日本産ゲームの大躍進の時代が到来

2017年辺りから始まった、日本産ゲームの大躍進の流れを作ってきたパイオニアとして何処のメーカーを挙げられるか考えてみた。

・Switchという最強のプラットフォームを築き上げ、幅広いターゲット層に向けて独創的なゲームを展開する任天堂
・世界的な人気を誇るバイオハザードシリーズを再始動させて記録的な成功を収めつつ、その裏で海外人気の弱かったモンスターハンターを世界的なIPまで躍進させたカプコン
・"試練を乗り越える楽しさ"というゲーム本来の面白さを追求し、高クオリティのゲームを連発するフロムソフトウェア
・ペルソナ5を通してJRPGのポテンシャルを極限まで磨き上げることに成功したアトラス

日本産ゲームの大躍進の象徴であるゲームたち

代表としてはこんなところだろうか。
当時は、大規模の予算を投入し、映画のような演出と長く遊べるオープンワールドを大量に放出していた欧米の大作ゲーム(ウィッチャー3、スパイダーマン、アサシンクリード…)が存在感を放っていた。そしてそれを模倣するかのように、高グラフィックでオープンワールドを実現しようとした日本のメーカーも少なくなかった。しかし、かけられる予算の違いなどから、海外のゲームのような成功を収める日本のメーカーは少なかった。
しかし、上で挙げた4つのメーカーたちは、海外のゲームと同じ土俵で真っ向から対決するのではなく、独自の路線を追求した。何でもかんでもオープンワールドにすることがゲームを面白くするわけではない、リアルなグラフィックでなくても見せ方次第で魅力的な映像を実現できる、海外とは別の強みで日本のゲームはまだまだ戦える、ということを世界に知らしめたと私は考えている。その後、オープンワールドゲームが乱発され過ぎたことによる「オープンワールド疲れ」という流れが生まれたため、差別化という意味でも日本産ゲームに対する再注目の流れが始まったと考える。
ここまでの流れが2017年~2020年辺りで起こったことだ。


2020~2021年 コロナ渦により一回落ち着く

オープンワールド疲れの流れが始まりだした辺りに一気に力をつけてきたのが、海外産の競技性の高いシューターゲームだと考える。オーバーウォッチのようなオープンワールド疲れが始まる前から存在していたゲームは大量にあるのだが、そのゲームを追従するかのようにApex、フォートナイト、VAROLANTのようなゲームが台頭してきた。丁度その頃は2020年~2021年、コロナのパンデミックがあったこともあり爆発的な人気を博した。

その一方、2020~2021年はシングルプレイのゲームは日本、海外に関わらず、おとなしめの時期だった。厳密に言うと、2020年はコロナ前に作られた大作ゲーム(サイバーパンク2077、FF7Remake…)が大量に発売されたが、それを皮切りに静かになった。これはPS5が2020年に発売されたというハードの境目の時期という理由もあるが、何よりも一番の原因はコロナによる業務への多大な影響であろう。欧米のゲームスタジオを中心に、開発スケジュールの頓挫が報告されていたことは記憶に新しい。


2022~2025年 日本産ゲームの大躍進第2フェーズに突入&外部環境の変化

コロナ渦を乗り越え、大量のシングルプレイのゲームが戻ってきた時期が2022年の春辺りだ。ここから現在にかけて「ゲーム黄金期」と言ってもいいような豊作な時期が続いている。エルデンリング、ゴッドオブウォー、ゼルダの伝説tok、スパイダーマン2、バルダーズゲート3、FF7Rebirth、龍が如く8、ライズオブローニン、メタファー、挙げだしたらキリがないほどのゲームが日本、欧米問わず発売された。一見2017~2020年のような時期が戻ってきたかのように見える。だが大きな違いが3つある。

①日本のメーカーの進化具合

1点目の違いは、日本のメーカーの進化具合だ。コロナ渦を経て、日本のメーカーが世界最高峰のオープンワールドゲームをバンバン排出するようになっている。それも今までオープンワールドゲームを作ることを苦手としていたメーカーも含めてだ。その最たる例がスクウェアエニックスのFF7Rebirthとコーエーテクモのライズオブローニンだ。

自社がこれまで強みとしてきた部分とオープンワールドを融合させることで、欧米のものとは全く違う独特なオープンワールドゲームを構築することに成功している。他にもエルデンリングやゼルダの伝説tokのような世界を代表するオープンワールドゲームが日本から生まれている。
ここにきて「日本産ゲームの大躍進 第2フェーズ」が始まったと私は考える。

②欧米のビッグメーカーの不安定さ

2点目の違いは、欧米メーカーの元気の無さだ。
・コロナ渦後の大規模レイオフ→それに伴って発生するプロジェクトの破綻
・社内のパワハラやセクハラ問題が大量に発覚
・ポリコレ推進による悪評判&売り上げ低迷
これらの理由により、元気や人気を無くしてしまった欧米のメーカーが多いと思う。Activision Blizzard や UBI soft は最たる例だ。それ以外でも、あのベセスダが発売したStarfieldが売れたには売れたけど思ったより盛り上がらなかったり、Electronic Artsのバトルフィールドが評判最悪だったりと、割とカオスなことになっている。
念のために言っておくが、もちろん欧米メーカーでもヒット作は大量に生まれている。バルダーズゲート3や It takes two などは歴史に残るような名作だ。しかし、2017~2020年辺りと比べると、ポリコレやら何やらで一筋縄ではいかないゲームが非常に増えたというのが私の所感だ。

③中国・韓国産ゲームの大躍進

3点目の違いは、中国・韓国産のゲームの大躍進だ。黒神話 悟空、崩壊スターレイル、ステラーブレイド、Lies of P など、世界的ヒット作が続々と台頭している。紅の砂漠、ファントムブレードなど、これから発売予定の注目作も目白押しだ。恐ろしいことに、これらのゲームは、元々はオンラインゲームやモバイルゲームを手掛けていたメーカーによって生み出されている。新しい試みであるにも関わらず、ここまで美麗なグラフィックの大作を作れてしまう柔軟性とポテンシャルの高さには驚かされるし、間違いなく日本のメーカーたちのライバルとなっていくと考える。


日本産ゲームの大躍進第2フェーズのカギとなる企業:コーエーテクモとセガ

任天堂、カプコン、フロムソフトウェアに続き、日本産ゲームの大躍進を更に引っ張っていくメーカーについて考えてみた。それはコーエーテクモとセガだと考える。一社ずつ深堀する。

・コーエーテクモ

ここ最近、コーエーテクモの勢いは留まることを知らない。この会社の強みは、強い自社IPを持ちながらも、他社ゲームのフォロワーもできるし、新規IPも作れてしまうことだ。つまり何でもできるのだ。

無双シリーズやNINJA GAIDENといった歴史の長いIPを大切に育て、昇華させることに成功している。無双シリーズは衰退の一途をたどっていたが、真三国無双ORIGINSで見事な再始動を果たした。無双という他社のどのゲームとも被らないジャンルを持っていることは非常に強く、海外での人気も順調に高まってきている。
他にも、フロムソフトウェアの死にゲーを参考に、自社の得意とする爽快アクションと組み合わせることで、仁王とウォーロンという海外で大ヒットするシリーズを生み出すことに成功している。また、ドラゴンクエストビルダーズといったマインクラフトのような建築ゲームも作れてしまう。他社のゲームをフォローして、ここまでポンポンとヒット作を出してしまうのは凄いことだ。そしてライズオブローニンでは完全新規の作品でありながらも出来の良い作品になっていたし、ライザのアトリエでは非常に奥深いRPGバトルを実現できている。
爽快アクション、死にゲー、オープンワールドゲーム、JRPG、サンドボックスゲーム、ホラーゲーム、狩りゲーと作れるゲームの幅が広すぎる。これを恐ろしいペースで作り続け、毎年必ず1本~2本は何かしらを発売する。多くのメーカーが開発期間の長期化とそれによる予算の膨張に苦しめられている中、コーエーテクモのフットワークの軽さとそれを支える技術力は強力な武器となる。間違いなく今後の日本のゲームメーカーを引っ張っていく会社の一つになると考える。

・セガ

セガの強みはIPだ。セガの象徴といえばソニックだ。ソニックの人気は日本でこそ控えめだが、海外ではマリオと並ぶほどの人気だ。この人気自体はかなり昔からあるものなのだが、ここ最近セガはソニックという人気IPを更に強力なものへと押し上げるのに大成功している。それはソニックの映画だ。現段階では合計3つの作品が公開されているが、毎作品爆発的なヒットを飛ばしている。そして第4作品目も公開予定日が早くも決まっており、セガの本気度が伺える。また、ソニックの新たな試みとしてオープンワールドと高速移動を組み合わせた「ソニックフロンティア」が発売され、売り上げ350万本という大成功を収めている。
また、龍が如くという存在も欠かせない。一昔前までは、龍が如くは国内で売れるシリーズ、海外での人気はイマイチ、という認識が一般的だった。しかし、龍が如く0の大ヒットと龍が如く7でのシリーズのリブートの大成功により、今では海外でも通用するIPとなっている。毎年必ず1本は何かしらの龍が如くが発売される、という恐ろしい開発スピードも強みの一つだ。そこに「Project Century」といった新規IPまで作ってしまうのも凄い。
そして、何よりも欠かせないのがセガの完全子会社、アトラスの存在だ。ペルソナ5というとんでもない大ヒット作品を生み出し、昨年にはメタファーという完全に新しいRPGを発売。毎作品の評判が恐ろしく高く、メタファーに関しては「The Game Awards 2024」で「BEST RPG」含む3部門受賞を果たした。FF7Rebirthを差し置いて受賞したときは、「ファイナルファンタジーとドラゴンクエスト」という2大JRPGの座をアトラスが脅かすまでに成長したのかと驚かされた。間違いなく世界で評価されるJRPGの第一人者とアトラスはなっていくだろう。

このように、強力なIPと質の高いゲームシリーズをセガは抱えている。前述したコーエーテクモと比べると、セガは元々から人気IPを抱えているのだが、それを海外展開していくノウハウの部分が強い。「アングリーバード」といった海外IPの買収にも力を入れており、強力なIPを使って映画とゲームを展開していくSONYのような総合エンタメ企業としてのポテンシャルが更に伸びていくと思う。


まとめ

今回はゲーム業界について好き放題話してみた。
今後ゲーム業界は増々多様化していくだろう。最近では、中国や韓国だけでなく、東南アジアや中東の国々もゲーム開発に力を入れており、より競争は激化していくだろう。また、今年はトランプ大統領の政策によりゲーム業界とポリコレの関わり方の部分に大胆にメスが入りそうだ。
何があるか分からないゲーム業界ではあるが、日本のメーカーには己の道を突き進む形で頑張ってほしい。私にできる事は何もないが、一ユーザとしてゲームを全力で楽しみ、それを「楽しい!」と発信していくことで業界全体を応援していきたい。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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