六月のアゲハ
季節を1つ進めたかのような、暑い六月のある午後
自宅の2階にいた私は、開け放った窓から
遠くに広がる風景を、ぼんやり眺めていた。
ふと気が付くと、1組のカップルがダンスしていた。
頭上の恋人たち
いつから、そこにいたのだろうか?
少し離れた所に、
1組のアゲハ蝶のカップルが、
楽しそうに、空中でダンスしていた。
「いちゃいちゃしおって、
こんな暑いのに、お盛んですな。」
ひとり身で、寂しい中年男のひがみである。
私は、ボヤキのように蝶のカップルに
冷やかしを言って、下の階に用事があるので
熱いご両人に背中を向けて、階段を下りる。
1時間くらいして、2階に戻ってきた。
例のカップルが、まだいちゃいちゃしていた。
うらや・・・・ゴホン。
よく、飽きないもんだな。
先よりも、蝶のカップルは、近くに来ていた。
しばらく、彼らを何も考えずに眺めていた。
さきよりも、彼らの容姿がよく見える
蝶にも、美人とか、あるのかしら?
同じような顔に見えるが、どう区別するのだろうか。
そんな下らない事を考えつつ、
こっちも見ているということは、
あっちのカップルでも、
もしや私の事を見ているのかしら?
などと、どうでも良い事を、更に考えてしまう私。
蝶男「おい!麗しのキミ。
見てごらん。冴えない人間の男が
僕らを、うらやましそうに見てるぞ。」
蝶女「いやねえ。のぞきなんて。
悪趣味よ。だから、一人なのね。」
蝶男「でも、なんだか可哀そうだよな。
・・・おい!キミ。
ちょっとあの人間の男の所に降りて
慰めて来てやったら、どうだい?」
蝶女「いやよ~!
私にだって、”選ぶ権利”って
いう物があるわヨ。せめてイイ男でないとイヤ!」
蝶男「ハハハハ!そりゃそうだな。
さっ、こんな所にいないで
二人で大切な時間を、一緒に過ごそう。」
蝶女「そうよ。一緒にもっと色々な所に行きましょうよ。」
かぶると鳥のさえずり、虫の鳴き声が
人間の声になって聞こえるという
かの「ききみみずきん」を被ったら
きっとこんな会話が聞こえてくるんだろうな。
そんな事を考えてるうちに、蝶のカップルは
どこかへ飛んで行ってしまった。
ふと、昔読んだ昆虫図鑑に、書かれていた事を思い出した。
成虫になってからのアゲハ蝶の寿命は、
2週間~1か月。7~10日なんて書いてあるのも
あったような。とにかく、短いのだな。
自らの遺伝子を残す為に
私のように、ぼんやりとしてる暇はないのだ。
何だかそう思うと、2人を冷やかした事
貴重な時間を邪魔した事とで、
なんだか、少し申し訳なく反省する私。
私は思う。
つまるところ恋愛とは、
男と呼ばれたり、オスと呼ばれたりする者は、
格好よくしたり、たくましくみせて
女と呼ばれたり、メスと呼ばれたりする者は、
美しく綺麗になったり、魅惑的な肉体になる。
そうする事で、男、オスは、
自分の遺伝子を残したい。
女、メスは、優秀な遺伝子を欲しい残したい
という互いに生命としての本能を、
満たす手段なのでは、なかろうかと。
夕暮れ
そんな事があった日の夕方
私は、馴染みのコンビニにいた。
狭い店内には、何組かのカップルがいた。
「あった!」
残り2つになってた、大好きな
「ふわサクっ!メロンパン」
を運よく手にした私。時間帯によっては、
無い時もあるから、気分も良い。
一つ手にとり、レジへと進む。
途中、カップルが何か喋りながら
買うか買わないか、迷っているようだ。
いつもなら、
いちゃいちゃして、うらやま・・・・ゲフン!
お店に迷惑だから、早く決めて帰りなさいな。
と思う私ではあるが、
アゲハ蝶との事があったので、
蝶も人も、遺伝子を残す為に懸命なのだなと。
遺伝子存続レースに、参加中の彼らに
エールを送り、レジで精算を済ませ
コンビニを出る。
駐車場には、夕焼けを背にして
一匹のアゲハ蝶が飛んでいた。
周りを見ても、パートナーはいないようだ。
「おい!はやく相手をみつけないと
時間が無いんだから、真剣に探せよ。」
誰もいなかっので、小さな声で
同じ独り身の先輩として、アドバイスした。
コンビニの蝶
「俺より何十年も生きてるくせに
今だに一人のお前に、言われたくないわ!」
ききみみずきんを被っていたら
こんなつっこみを、たぶんされていたんだろうな。
でも・・・
それでもいい!それでもいいんだ。
お前を応援させておくれ。
今日の私は、お前を応援したいんだ。
遺伝子存続レースから脱落した私
ではあるが、
お金も、遺伝子も残せないけど
世に生きた証として
自分で書いた好きな文章を
幾つかでも残せたらいいなあ。
と、夕陽に誓い
固く握った拳を・・・・
「あああ~!(涙)
メロンパンが潰れちゃった!
ああ~このふわふわが、いいのに・・
戻るかしら?」
潰れたメロンパンが心配で
きちんと夕陽に誓えたか
定かでない、とある6月夕暮れの日の
私なのでありました。
あとがき
今回も、最後までお読みいただき
大変ありがとうございました。
まずは、今回の記事に合う画像を探す為
初めて、みんなのフォトギャラリーを
利用させて頂きました。
そこで、今回の記事にぴったりの
Tsuyo様の素晴らしい画像に
出会い、使用させて頂きました。
ありがとうございました。素晴らしい!
そして、初めて書いた前回の記事を
読んで頂けた方、スキまで頂けた方
本当にありがとうございました。
また、読んで頂けるような記事が
書けたらいいなと思います。
2回目の今回は、いかがでしたでしょうか?
今週は、私の地域も暑かったです。
本作は、そんな暑い中で
実際にあった一日の事を書きました。
都会ではないので、2階の窓をあけると
遠くにある山が見えたりとか
ぼっと見ている事が、日頃から多いので
そんな中で、偶然、視界に入った
アゲハ蝶のカップルを見ているうちに
色々と思う事があり、
それを基にして書いてみました。
蝶男、蝶女などと書くと
昭和特撮好きな私としては、
読んでいる方が、
仮面ライダーの怪人みたいな
イメージを抱いてしまうかな?
っとか心配して書いてたのですが
いかがだったでしょうか。
蝶男が、慰めてきてやって~
蝶女が、選ぶ権利うんぬんの辺は
私が、20くらいかなあ。
遥か昔に、先輩と連れてた女の人に
実際に、言われた言葉ですw
少し悪い感じだけど、綺麗な女の人で
言われた私は、
「そうですよね~」って
おどけてその場を逃げてきたけど。
その後も綺麗な女の人に
残酷な言葉を浴びせられた事もあるので
バラにとげがあるように、
綺麗な女の人というのは、
そういう物なのかしらと。
まあ、それでも綺麗な女の人は、
好きなんですけどね。(笑)
もちろん、優しくて綺麗な方も
何人もおられましたが、
残念ながらそういう関係には・・
それはそれとして(汗)
一点だけ。
恋愛論みたいな事を書いていますが
そんなに深い意味も無いし
イデオロギー的なのでもないので
もし、ご不快に思われる方が
おられましたら、
もてない中年男のよまい言と
一蹴して下さい。
では、また次の記事で
お会いしましょう!
暑い日が続いてますので
皆様、お気をつけて。
ありがとうございました。
懐かしいやら、マニアックな内容やらですが、 もし、よろしければですが、サポートして頂けたら 大変、嬉しく感激です! 頂いたサポートは、あなた様にまた、楽しんで頂ける 記事を書くことで、お礼をしたいと思います。 よろしくお願いします。