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蛇とお金と弁財天、3つをつなぐ謎の神(その1)
「巳の日は金運がいい」の根拠はなんだ?という疑問
ところで。占い本など読むと「巳年生まれはお金に困らない」なんて言葉を目にします。
「巳の日」や「己巳(つちのとみ)の日」は、金運や財運を高め、財布を新調するのによい、という情報も小耳にはさみます。
なぜ「巳年」や「巳の日」が、金運を上げるとされるのでしょう?
その理由として、おおよそ以下の3つが代表としてあげられています。
1)「お金がみ(巳)につく」といったようなダジャレ説
2)脱皮するヘビの様子から強い生命力や変化を表し、ビジネスに必要な変化を読む機微にたけるから
3)財運や芸術、知恵の神である弁財天と「巳」や「巳の日」の縁起が強いから
まず、1)ダジャレ説 に納得ができません。
この方式でいけば「金運が跳ねる(卯年)」「財産がうまくいく(午年)」など、いつでも、なんとでも言えるからです。
切実なる金運を求める者にとって、もっとグッとくるご利益感・効力感が欲しいところです。
蛇のイメージから導き出されるのは、
「金運」よりも「健康運」ではないか?
![](https://assets.st-note.com/img/1737027010-zmAyfTZ8u5qJl0wDOY3jVRFd.png?width=1200)
WHO https://www.who.int/home
2)もなんだかピンときません。
「蛇の脱皮」は古来より世界中で有名ですが、これはどちらかといえば蛇の「不滅性」や「不老不死」を表します。古代ギリシャ神話に登場する「死者さえも蘇らせた」と言われる医術の神アスクレピオスは蛇の巻きついた杖を持っています。これこそが蛇の「不老不死」のイメージから来たモチーフでしょう。アスクレピオスの杖は世界保健機関(WHO)のマークとしても採用されています。
しかし「不老不死」のイメージから「金運」を導き出すにはちょっと無理がないでしょうか? 蛇というモチーフが不老不死に通ずるほどの強い生命力を象徴しているとしても「ビジネスに必要な変化を読む機微」はさすがに言いすぎ。というか、関係ないですよね? 素直に考えれば「健康運」のほうがよくないですか?……モヤモヤが残ります。
弁才天と蛇との関係が
イマイチわからない
![](https://assets.st-note.com/img/1737027027-FoYKgn3IUcHrZBdq1XRVzAl6.png?width=1200)
*蛇ではなく白鳥やクジャクが彼女のシンボルです。
最も有力なのは、3)「弁財天」との関係です。
「神セブン」こと七福神のメンバーとして有名な弁財天は、同じく七福神メンバーである大黒天と同様インドからやってきた神様です。インド名は「サラスヴァティー」。インドを流れる聖なる川のひとつサラスヴァティ―を神格化した神様と言われていますが、川の水が滔々と流れるように音楽、弁舌、知恵など「流れゆくもの」を象徴した神であり、文字の創造もサラスヴァティ―によるとされています。中国では「妙音天」または「弁才天」と呼ばれています。弁才と福徳の神ですが、「蛇」や「金運」との関係はイマイチわかりません。
バトルモードとアーティストモード
2つに分かれた日本の弁才天
![](https://assets.st-note.com/img/1737027046-95DLyR6nF0vklquKxrNdetSc.png?width=1200)
弁才天は、奈良時代(4世紀頃)に成立した『金光明経(こんこうみょうきょう・金光明最勝王経(こんこうみょうさいしょうおうきょう))』によると、8つの腕に、弓、箭(せん/矢)、宝剣、鉾、斧,独鈷(武器の一種)、法輪、羂索(けんさく/悪いものを縛り、衆生を救う縄)の8つの武器を持つバトルモードなお姿で日本に紹介されます(『八臂弁財天』と呼称されたりします)。これは「世にある争いや諍い、悪口や邪教の呪術などを、正しい智慧と弁舌で打ち負かしますっ!」という、大弁才天女さま(⇒『金光明経』で実際にこう記されています)の心意気を表しているわけですが、智慧や弁舌の神というサラスヴァティ―本来の性格は変わりません。奈良時代の日本は仏教隆盛の時代だったため、仏教の教えを守る“護法神”としての性格が追加されたことがわかります。
日本において、弁才天はインドの豊饒神サラスヴァティ―の原型が色濃い琵琶を抱えたアーティストモードの弁才天のほかに、貧困や病に“言葉”で打ち克つバトルモード弁才天の2つに分かれ、両者が並立する形で日本に定着するようになります。この時点においても、まだまだ「蛇」も「金運」も登場しません。
しかし中世(鎌倉時代)に入ると、このバトルモード弁才天さまに変化が訪れます。頭に白蛇と華表(かひょう=鳥居)を乗っけた「宇賀弁財天(うがべんざいてん)」という、さらなるニュールックが登場するのです。
ついに「蛇」の登場です。
(その2へ続きます)
■参考資料
吉田さらさ 他 『天の仏像のすべて(エイムック)』エイ出版社 2013年
仏像リンク:https://butsuzolink.com/benzaiten/
(上記には諸説がありますので、あらかじめご了承くださいませ)