日本福祉大学の学生さんからのぼくゼロ感想文
愛知県の日本福祉大学のジェンダー論講義の中でぼくゼロを上映していただきました。250名ほどの学生さんが視聴してくださいました。
匿名での公開を承諾してくださった学生さんは160人以上いらっしゃいました。
そして、映画の感想文はどれもびっしりと書かれているものばかりでした。
無作為に抜粋した5人の感想を掲載いたします。全てをご紹介できないのがとても残念です。また他の感想文も紹介できる機会を設けられたらと思っています。
映画感想1
「ぼくが性別ゼロに戻るとき』という映画のタイトルを見て、男性が女性に性転換する話だと思っていたが、実際は私の想像とは全くの別物であった。
主人公の空雅さんは、女性として生を受けたが、幼いころから自分の性に違和感を覚えていた。近年では、身体の性別と心の性別が異なってしまう性同一性障害は世間に広く認知され始めているが、空雅さんが生まれてからしばらくは世間で今ほどは理解が及んでいなかった。そのため、違和感を覚えたとしてもなかなか自覚に至るまでは難しかったのではないかと思う。
空雅さんは中学校に通っている時に性同一性障害の診断を受けていたが、そのままスカートを切り刻んで学ランで登校するのは、さらっと描かれていたがとても勇気のいることだったのではないかと思う。性同一性障害の症状に苦しむ人は私の思っているよりも断然多いだろう。しかし、私が実際に性同一性障害を打ち明けられたことはない。私が偶然出会っていないという可能性ももちろん存在するのだが、ほかの理由としては他人に打ち明けることが難しいからではないだろうか。性同一性障書に限らず、持病はデリケートな問題であるために中々周囲に打ち明けづらいだろう。
それにもかかわらず、周囲に打ち明けて自分らしく生きると決めた空雅さんの決心
は素晴らしいものだ。その前向きさからか、周りの人間関係にも恵まれているように感じた。
たくさんの苦労を乗り越えて、最終的には自分はどちらの性別でもないと気付いた空雅さん。劇中でたびたび登場していた「このみ」という作家が詠んだ詩は、なんと空雅さん本人が作ったものだった。名前をこのみに改め、女性としても男性としても生きていくと決めた詩はかわいらしくもあり、前向きで力強くもある。そんなこのみさんらしいものだった。自分らしさをしっかりと持って、堂々とたった一人の自分として生きていく姿に私は大きな勇気をもらった。
映画感想2
「ぼくが性別「ゼロ」に戻るとき、空と木の実の9年間』を視聴し、男と女という性別で分かれていることが当たり前だと浸透している社会の中で、男と女に対しての思い・葛藤が多様であることを、映画を通して学びました。私は、産まれた頃から物心ついてからも、周りの環境をみると、ランドセルで性別が分けられており、トイレやプールといった多くの場で、区別されていることが日常的に毎日起きている為、それに慣れてしまい、自分の見た環境だけが社会も同じであると、当たり前であるという考えになってしまっていたことに気付きました。
また、同じようにこのような考えを持っている子ども達や大人たちもいるのだと考えました。男と女という性別で分かれている中で起こる疑問・葛藤を、抱いている人達は、私が知らないだけで、多くの人が社会の中で葛藤しながら、生きているのだと気付きました。私自身が、少しの変化や疑問に気付くような状況がない限りは、男と女という性別で分かれていることに疑問を抱くことは難しいということも知りました。
映画で、小林空雅さんが幼い頃から当たり前だと認識されている学校での決まり、社会でのルールに対しての疑問を一つ一つ知りました。自分の周りの子が着けている下着や生理の話・女の子に見られる身体の話を、見ることや聞くことが増えていくことで、心のもやもや、が大きくなり、苦しみへと変わっていく精神状態の過程を、映画を観て知りました。自分でも理解ができず、分からなくて、分からないことにイライラをしてしまう状況が、より苦痛だと感じさせているのだと改めて理解しました。周りからの扱いが酷く、自分自身の気持ちの中で起こる葛藤に対して、理解を得られないことが、より生きづらさを感じてしまうのだと考えました。この状況が起こっていくことで、笑顔が曇っていくこと、体調のバランスが崩れていくこと、全ての状態にまで大きく影響してしまうのだと学びました。
新しい環境へと変わり、小林空雅さんの表情や態度、性格が学校の環境、友達との関係によって大きく変わっていくのを見て、自分の周りの環境は、人生を左右するほど重要なことだと学びました。小林空雅さんの周りの友達・アルバイト先・医療の方・家族など多くの人と関わっている場を見て、全ての人が決して否定をせずに、相手の存在や考え方、思いを受け入れながら、会話をしている事に、一人一人が相手の気持ちに寄り添っていくことがとても大切だと学びました。相手の存在への1番の理解者となる思いを持ちながら、関わっていくことが重要だと気付きました。
生活する中で起こる感情への苦痛の原因について診断を受けたことで、苦しみの原因が分かったことが気持ちを楽にさせ、日常生活を楽しく送ることができているのだと目に見えて分かることが親にとっての喜びであると知りました。親が話し合いたいと考えても、本人にとっては理解をする前に、考えたくない、嫌だという感情が現れていることが、今起こっている現実であるのだと理解しました。
映画を通して、自分自身の心の中に抱いた気持ち、疑問や葛藤は、間違いではないということに気付きました。少しの思いを理解してくれる人は、必ず存在していると考えました。この思いの原因や解決に向けて、多くの質間を毎日自分に問いかけながら、過ごしている人は、まだまだ存在しているのだと気付き、その方達への支援に向けて、私達も行動を起こしていくことが重要であると学びました。私は、この多くの話の中で印象に残っているのは、諦めずに行動していくことの大切さが印象に残っています。そして、「ありのままの自分』でいいんだという考え方も印象に残っています。心の中で起こる疑問や葛藤は、周りの環境が関わることで、環境が原因となってしまい、それが気持ちを抑え抑え込んでしまっているのだと考えました。そして、このようなことはあってはならないことだとも考えました。また、『ありのままの自分でいい』、という言葉に、自分自身を受け入れることの大切さがこの言葉には含まれているのだと考えました。
映画感想3
映画を見てまず、「カミングアウト」をしていない時の主人公の表情が笑っているのに心から笑っているようには見えなかったことや何か苦しんでいるように感じ始め、そこから母親が「もしかしたら、心は女の子じゃないのかもしれない」と気付き始めたシーンで「性同一性障害」の理解が少なく受け入れがたいことであると思うが身近の人で誰よりも味方であり、受け入れてもらいたい人物が自分という存在を受け入れてくれてくれたことが見ている側としてもとても嬉しく思った。
また、主人公が高校入学と共にカミングアウトをし、周りの同級性が「性同一性障害」のことを受け入れ、友達として変わらず接しているシーンを見て、友達は「男と女」というように性別で判断するのではなく、「主人公はこうゆう人だから」という友達としてまた、一人の人間として自分を見てくれたことは、人間として大切になってくる部分であると気付かされた。さらに、「自分の個性をオープンにすることは、道を拓く」と聞き、自分という人間を話すことにより、周りが理解してくれることはうれしさもあるが信頼関係も深まると感じた。
しかし、思春期に入ると体の変化が起こり意思とは違う体の変化にイライラや不満感を感じホルモン注射や胸の摘出手術を受けるなどの方法や変化による本人の気持ちを映画の中で学ぶことが出来た。
また、就職やバイトなどで見た目の判断で採用するかを考えてしまうのは、今でも根強く残ってしまっている社会であるが、性別のことで違和感がある人や悩み苦しんでいる人が多くいることを理解し、性別で判断することなく、一人の人間として認め合えるような社会になるよう変えていくこと。また、性別関わらず多様性を認め合えるような社会になるよう変えていくことが大切であると学ぶことが出来た。
テレビやネットで「ジェンダー』などの記事や話を聞き、性別の違和感の理由に気付けることや性別の自覚。また、芸能人が自身を認めて社会に告白し、生き生きと活動している姿を見るだけでも「勇気」などをもらえるため、社会は芸能人やジェンダーのことなどをしってもらう活動を広めていくこと。また、自身のことを他者に伝えることは、勇気と不安があることを理解することが大切になってくるのではないかと思った。
映画感想4
今自分が生きている世界で、男の子として扱われるのが嫌、女の子として扱われるのが嫌という人が多くいると思う。今自分達が暮らしている世界では、男女別々で分けられることが多くある。女の子は、スカートであったり、ランドセルは赤色だったりと嫌な人にとってはそれが苦痛であるものなのだなと知った。人それぞれ自分なりの考え方があり、自分が当たり前だと思っていることを相手が当たり前と思っているとは限らない。その中で自分をちゃんと理解して接してくれる人は、ほんとにありがたいことなのだなと思った。自分と違う考え方を持っている人を見るとやはり偏見を持って、妬みを持つ人間も現れると思う。その中で映画の主人公の方は、友達もできて馴染むことができているので、周りの人に恵まれたのだと感じた。また、その環境が良かったおかげで今の自分があるのではないかと自分は考えた。周りの人に支えられていかなければ人は生きていくことができない。その中で一番大事なのは、自分の周りにいる人達だと思う。
途中で友達が男でも女でも関係ないと言っていた。自分もなるほどと思った。男だから、女だからと毛嫌いするのではなく、私は私、僕は僕であり、自分自身のことをしっかり見ていているのだなと感じた。やはり手術するのにもお金がかかるし、時間もかかる。しかし、自分がなりたい自分を追求するために、努力することは素晴らしいことだなとわかった。最初に成功をしない人は途中で諦めているのだとスピーチで言っていた。確かにそうであり、途中で挫折するから成功もするわけがないと思った。自分もこれからの人生、壁に当たることが何回もあると思う。諦めることは簡単であり、挑戦をし続けることは難しい。楽な道を選ぶのではなく、自分がなりたい自分を常に追求していき、努力を重ねていきたいと思った。
映画感想5
私は、生まれたときから今まで心も体も「女性」であるため、スカートを履くことへの違和感や、月経が始まることに嫌悪感はありませんでした。もし、心が「男性」として生まれてきていたとしたらどうだったでしょう。「男性なのになぜ胸が膨らんでくるのだろう」「男性なのになぜ女性の制服を着なければいけないのだろう」生活の中に多くの違和感を抱いてしまうと思います。そして、生きづらいと感じていると思います。映画の中の、生きづらさをそのままにして過ごしていくのではなく、なりたい自分になるために行動されてきた小林さんの姿を見て、心を大きく動かされました。
「自分の存在を許してやろうと思えた」小林さんが発したこの一言をすごく鮮明に覚えています。学校という場所は制服やトイレなど男女の区別がはっきりしている場であるため、自分らしく過ごせない学校は小林さんにとってとても窮屈な場所です。自分らしくいられていない自分を、小林さんはこれまで許すことができなかったのだと思います。病院へ行き性同一性障書と診断してもらうことで学校に男子生徒として通えるようになり、やっと自分という存在を許すことができたのです。「許してやろう」という言葉には、「好きにはなれないけれど、許してあげよう」という気持ちが込められているのではないでしょうか。なぜなら、戸籍はまだ「女性』のままであるからです。小林さんにとって、完璧な自分らしさを得るということは、生殖腺を除き戸籍を男性にすることです。それを達成するまでは、小林さんは自分を好きになれないのだと思います。手術をする意味について小林さんは「今がマイナスだから手術を通してゼロに戻っていずれはプラスにいきたい」と言っていました。私はこの言葉を聞くまで、人は全員生まれた時がゼロだと思っていました。しかし、性同一性障書の方からしたら、生まれたときがマイナスからのスタートだったのです。性同一性障害の方は、性同一性障害でない人の何倍もの生きづらい世の中を一生懸命生きているのだと感じました。言霊は存在するといいますが、「自分の個性をオープンにすることが道を拓く」と小林さんが自分を信じて発してきたからこそ、したいと懇願していた手術が実現したのです。
行動に移してきた小林さんと、もう一人本当にすごい方だと思った人物がいます。それは小林さんのお母様です。「私の育て方が悪かったから、こうなってしまった」性同一性障害の自分の子どもに対して、このような思いを持つ親が多いのではないでしょうか。しかし、小林さんのお母様のロからはネガティブな言葉は聞かず、小林さんが手術する際は「心の痛みにずっと耐えてきた、傷の痛みは数日で治る」と話されていた。私はこの葉を聞いて、お母様は自分の子どもが性同一性障害を持っていたことが辛かったのではく、自分の子どもが性同一性障害で苦しんでいる姿を見るのが辛かったのだということに気づきました。親だからこそ理解できることと親だからこそ理解できないことがある中、小林さんのお母様は本当に自分の子どもの幸せだけを願っているのだと思いました。
小林さんは、現在Xジェンダーとして生活されています。「男性」でも「女性」でもありません。ですが、社会の中には多くの場所で男女別が存在しています。例えば、トイレとお風呂です。Xジェンダーの人はどちらに入ったらよいのでしょうか。服にも、メンズとレディースがあります。メンズは男の人しか着てはいけないのでしょうか。「男と女の間はグラデーション」この言葉が社会に通用するように、「男性」「Xジェンダー」「女性」の3つの性別を存在させ、Xジェンダーが珍しくない社会になることを願います。
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この映画を通して一人一人が感じた、社会へのこと、ご自身の生き方、周りの人への想いなど、それぞれの言葉で誠実に綴ってくださっています。
Musubi Productionsスタッフは、皆様からのご感想を励みに、これからもぼくゼロを広めて参ります。
日本福祉大学の皆さま、ありがとうございました。
Musubi Productionsでは、ぼくゼロを自主上映会主催者さまを募集しております。詳しくは公式サイトをご覧くださいませ。
(Musubi Productions 広報)
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