ごちそうさまでした
こどもの抵抗感が築きあげられてしまう前に、パック売りされていない状態の生き物をいただく体験をさせられたらなーと思っている。
いのちのありがたさ云々を伝えたいというよりは、その当たり前のことが抜け落ちているのはまず私自身で、自分の中のやっておいた方がよさそうリストに漠然と入っている。こどもについてはせっかくなら一緒にといった心持ちだ。
すこし前に買ってきたミル貝をはじめてさばいたことがあった。
身をはがそうと貝殻にナイフをさしこむと、やめろとばかりにすごい力で抵抗を受けた。その時は怖いなのかごめんなのかなんとも言えない感情がわきあがって内心すごくひるんだが、その後刺し身にして口にはこぶまで、いつもとはすこし異なる感情が持ってまわった。ありがたい気持ちがあったことはもちろんだが、他にもなんとも名状しがたいものがあって、それはわるいものではなかった。
先日インビテーションを持っていた友人に誘われて、渋谷パルコのプレオープンに行ってきた。
普段センスとは距離をおいて生活をしている私にとって店内はハイセンスでまぶしく、ファッションやカルチャーがおり混ざった店内はただ歩いているだけでも楽しかった。渋谷にはあまり縁のない私だが、学生時代彼女とよく行ったシネクイントがのこっていたことにはうれしい気持ちになった。
ただ、今回の友人との目的は館内の視察ではなく、地下フロアに入っている「米とサーカス」へ行くことだった。
ジビエや昆虫食がメインのお店で、昆虫食に興味のある友人とそれらしいメニューをいくつか注文して待った。注文したメニューの中では、パフェにのって出てきたタガメがすごく印象的だったが、それ以上に驚いたのはお通しで出てきたスズメの丸焼きだった。
小皿にのって現れたそれは、羽こそむしられているがよく目にするあの小鳥そのものだ。クチバシからつまさきまでのこさずいただけるというが、申し訳ないような何とも言えない気持ちが込み上げてくる。慣れていないというだけで忖度している自分もどうかと思うが、込み上げてくるものは仕方がない。
あたまからいった友人が食感を伝えてくるものだから、余計に仕様がなくなって、つまさきの方からいただくことにした。味はレバーのようで、食感もわるくない。ただ、すべてを口に入れてしまうまで、いただきますの姿勢を変えることができなかった。
おいしかったです。
ごちそうさまでした。
合わせたままの手をすり合わせながら、考えるまでもなくわきあがってきた言葉をかみしめた。
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