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「ときめく心~中学生の相聞歌」    桔梗亜紀

子供が保育所に通っていたとき、発表会のビデオを見直しては
「他にこんなにかわいい生き物いる?」と思った。
生涯保育所の子供たちをかわいいと思うだろうと思った。
長男が小学校に入学して、下の子が保育所にまだ残っていたとき
保育所の運動会がかったるくてしょうがなかった。
「早く並べ。だらだらすんな」と思っている自分に驚いた。
基本子供という生き物が苦手だ。自分に子供ができてやっと
子供の扱い方を知ったし、自分の子供以外では同級生という限定付きで
「子供」を許容できるようになった。
子供が全員小学校に行ったら「小学校の運動会さいこーー」と思った。
かわいいだけじゃなくなって、足も速くなってヨサコイとかもかっこよく踊っちゃっていいじゃん!と思った。
長男が中学生になったら、小学校の運動会がだらだらしているように見えてしまった。だって中学生は集合が全部駆け足だし、整列も早いし
足ももっと速い。リレーのアンカーなんてときめいちゃう。

自分の子供が中学生になるまでは「中学生ってなんか嫌い」と思っていた。制服もださいし、髪型も決まってないし、顔もにきびだらけで。って自分が醜かった時代と重なって、子供すぎず大人でもなく
すごく中途半端な生き物で、かつ愛想も悪くてかわいげなくて・・みたいに
思っていた。

長男の中学入学式で吹奏楽部の子供たちが入場曲を演奏し
校歌も歌ってくれた。それがめちゃくちゃ上手くて(その当時の
先生が優秀で、吹奏楽部は本当に上手な時期だったらしい)感動した。
そして3年生ぐらいの男子がでっかくて声も低くて
おっさんみたいなのにキャッキャしていて
女子は髪もきれいで肌も白くてすらっとしているのに
笑顔は子供で「なんてかわいいの♥」とキュンとしてしまった。

それ以来、中学生が大好きだ。
長男は小学校からの反抗期が続き、中学時代も最悪だったし
受験の時なんて思い出したくもないほど最悪中の最悪だった。
でも、担任の先生が良い先生だったこと、お友達との相性が良かったこと
テニスに明け暮れたお陰でなんとか乗り切った。
長男は中学の時が一番楽しかったと言っていた。
次男は学校が終わったら1.5時間かけてサッカーに行くという生活を
3年間続けた。大事な学校祭や球技大会などのイベントとサッカーの試合が
ぶつかれば迷わずサッカーを選んでいた。
学校の友達とも仲良かったように見えたが彼の生活の重心は
サッカーにあった。かつ、コロナでほぼ行事が制限されていたので
印象は薄いのかもしれない。次男の中学時代はコロナとサッカーのみ。
末っ子の長女は中学校が大好き。
男子とサッカー漫画の話で盛り上がり、女子とはあまりつるまず
いつも遅刻寸前で学校に駆け込む。
夏はチャリで激走し、冬はツルツルの坂道を爆走し、ツルツルで
止まらないから電柱に抱きつきながら登校しているそうだ。
なにより先生が大好きで、お笑いネタを共有できる先生を探しては
見つけて話して喜んでいる。獣医になりたいという夢は
中学校の先生になりたい、に変わりつつあるようだ。
学校がそんなに楽しいなんて羨ましい。

子供らもそうだけど、子供の友達をみていても思う。
もう小学生のような子供じゃなくて、高校生のような大人でもなくて
でも体は大きくなって心がちょっと追いつかない。
自分のルックスが気になって、親がうざいけどまだ親なしでは
生きていけない。かっこつけたいけれどかっこつかない。だってかっこよくないから。
そんなもどかしさが手に取るようにわかるのが
まだ子供の証拠で「中学生ってほんとにめんこいな」と思う。

そんな彼らが恋をして、それを短歌として読む。
それを国語の先生が解説をする、という連載が北海道新聞にしばらく載っていた。掲載時、毎回面白くて中学生がめんこくて
彼らが作った短歌が素敵で「ほんとにこの連載好きよ~~」と思っていた。
最近ふとこの連載のことが気になり問い合わせたら本になっているというので購入した。

この先生の意図で、歌を発表するときは匿名かつ男女もわからないように
発表したらしい。もしかしたら自分のことかも、あの子のことかもと思いながらそれに対して返歌を作るという試みをしていたみたい。
歌も素晴らしいのだが、私が微笑ましくてニヤニヤしたのはここ。

式子内親王「玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば忍ぶることの よわりもぞする」という歌があり(恋心を隠しているのが辛すぎて死んじゃう)
もしこれを女子中学生が聞いたなら「死んじゃうくらいなら告白しちゃいな」って言うでしょう。

という箇所。
本当にそう。相手が式士内親王だろうと誰だろうと「告白しちゃいなよ」って女子中学生って言いそう✨
この短歌を詠んでいる中学生は片思いだったり両思いだったり恋に恋していたり様々なんだけれど、みんなちゃんと友達の恋を応援したり励ましたり慰めたりするのが素敵なのです。

ほんとに大好きな連載だったので読めて嬉しい。


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