(チラ裏レビュー) これからの「正義」の話をしよう/マイケル・サンデル (本 2010年)

※)これは”チラ裏”レビューです。あまり十分な推敲もしておらず、本来はチラシの裏にでも書いて捨てるレベルの駄文ですが、ここに書いて捨てさせていただいております。この先は期待値をぐっと下げて、寛容な気持ちでお読みください。ではどうぞ。

作品名:これからの「正義」の話をしよう/マイケル・サンデル (本 2010年)
評価:★5(★★★★★)
リンク:https://www.amazon.co.jp/dp/B009T625JU

 【概要 (Amazon公式商品ページより)】 1人を殺せば5人が助かる状況があったとしたら、あなたはその1人を殺すべきか? 哲学は、机上の空論では断じてない。金融危機、経済格差、テロ、戦後補償といった、現代世界を覆う無数の困難の奥には、つねにこうした哲学・倫理の問題が潜んでいる。この問題に向き合うことなしには、よい社会をつくり、そこで生きることはできない。アリストテレス、ロック、カント、ベンサム、ミル、ロールズ、そしてノージックといった古今の哲学者たちは、これらにどう取り組んだのだろう。彼らの考えを吟味することで、見えてくるものがきっとあるはずだ。

アメリカで2009年に、日本では2010年に刊行され、日本だけでも100万部以上のベストセラーとなった書籍だ。読む前から、NHKの「白熱教室」や各種YouTubeなどで本書の内容に触れる機会があり、いつか読もうと単行本もブックオフで購入していた。このたびついに時間を確保して最後まで読んだ。

面白かったが、難しい本だった。特に用語面。それほど聞き慣れない専門用語が出てくる訳ではないのだが、それが却って混乱を招く。たとえば「功利主義」なんていう言葉は普段の生活ではほとんど用いられないので、特別な定義が与えられた言葉だということが明確なのだが、「道徳」「名誉」「責務」「目的論」こういう一般的な言葉こそが厄介だった。後半の方は特に、一応読んではいるものの意味を理解しないまま文章が素通りしていたことが一度や二度ではない笑。本書は様々な事例を挙げながら丁寧に説明を重ねていくスタイルなので要旨はつかめたと思うが、一文一文に対する理解度でいうと50%くらいの感覚なので、いつかまた読み返さなければと思っている。

本書は正義について語るときに3つの価値観を中心に議論する(「(p.13)つまり、幸福の最大化、自由の尊重、美徳の促進である」)。ちなみにマイケル・サンデル先生がイチオシなのは3つ目の考え方だ(p.335)。

現代の先進国で主流の考え方では3つの価値観の序列は「自由の尊重>幸福の最大化>美徳の促進」だ。「自由の尊重」という考え方はあまりにも魅力的で、「グローバル化」という言葉が表すように、地球上のどの国も欧米的民主化をして「自由」をこそ最も尊重するべきだと思ったりもするし、「美徳の促進」なんてかなり軽んじられている。

私自身も「自由」の熱心な信奉者だ。自由を希求する「進撃の巨人」のエレンには共感したし、「菊と刀」で戦前の日本女性がミッションスクールで初めて自分の「自由」を感じたというエピソードにも心から感動した。他の2つの価値観よりも「自由」を重視する気持ちは変わらないが、この本を読んだいま、3つ目の価値観「美徳の促進」のことも常に心の隅に入れておきたいと思ったし、実際、この本を読んでから、「美徳の促進」のことが頭から離れない。視野が広くなった気分だ。

追記。読み終わったばかりだが、2周目を読んでみることにした。一度読み終わった状態で読んでみると、著者の主張がかなりクリアに理解できた。本書では道徳を考える3つの軸として「(1)幸福の最大化(功利主義)」「(2)自由の尊重(リバタリアン)」「(3)美徳の促進」の3つを挙げているが、著者は最初から(1),(2)の考え方の利点を認めつつも、(3)とは別物だという立場をとっている。道徳の問題は、結局は(1),(2)の考え方では説明できないのだと。だから、道徳の思考実験や実際の事例を無理やり(1)や(2)の理論で説明づけを試みては「だが、その理屈はこういう点でおかしくはないだろうか?」とやる笑。でも、なるほど確かに、(1)や(2)の理論での説明にはあまりにも無理があるのは明らかだ。

(1),(2)と(3)のもう一つの重要な違いは「特定の思想や美徳に依拠するか否か」という点だ。日本を含めた自由主義・民主主義の先進国の人々が(1),(2)の考え方に非常な魅力を感じる理由もここにある。多様性を認める社会をつくるには政府は特定の思想を持ってはならない。だから、「もし、特定の思想や美徳に依拠することのない(1)や(2)の”道徳の統一理論”で道徳問題に答えを出すことができたら」と夢を見ずにはいられないのだ。

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